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コラム

- 風は西から…日本の産業を創った長州の偉人たち

2016年 第10回 柏木幸助と水銀体温計
上津原 章  ⇒プロフィール

こんにちは。山口県のファイナンシャルプランナー、上津原と申します。今回は、日本初の留点体温計を製造した柏木幸助氏を取り上げたいと思います。体温計は、今でこそ体温を数字でお知らせする電子体温計が一般的ですが、一昔前は細いガラス管の中に水銀が入っていた体温計が使われていました。体温が上がると水銀柱が伸びて、その長さを目盛りで測ることで体温がわかる仕組みです。水銀柱の長さは体温計を体から離しても変わらないため、一目で体温を知ることができます。その反面、体温計を振るなどして水銀柱を遠心力で元の長さへ戻す必要があります。今日にも通用する技術が130年余り前からあったのですね。

<生い立ちから最初の起業まで>

柏木幸助氏は、1856年、周防国三田尻(現在の山口県防府市)にあった薬種商の家に生まれました。16歳から家業を継ぐべく化学を中心に学び、やがて、家業の傍らマッチの製造工場を造りながら地元の華浦(はなうら)医学校へ進みます。当時はマッチといえば外国からの輸入品で、高価でしかも発火しやすいものでした。彼はヤスリのようなものでこすって火をつける安全マッチを考案し、1877年の内国勧業博覧会で高い評価を受け全国へ向けて販売します。

 

ところが数年後、マッチの製造中に材料の調合を誤り、火事によって工場を失ってしまいます。彼自身も全治3ヶ月の大やけどをしました。事業再開の意思はあったのですが、地元に迷惑がかかるということで父親から猛反対を受けて、再開を断念します。

 

<2度目の起業で国産体温計を造る>

薬種商の取引先から、験温器(今でいう体温計。以下、体温計)というものがあることを耳にします。体温計も海外から輸入しており、高価なものでした。しかも、体温を確認するために体から取り出すとすぐに水銀柱が下がってしまうのが難点でした。

 

彼は、偶然出会ったガラス職人から水銀を入れる毛細ガラス管の製造技術を入手します。とはいうものの、研究途中でガラス職人が急死したこともあり思うようなものが作れず、多額の出費で本業の経営も傾きかけてしまいます。それでも、1883年(27歳の時)に体温計を、さらに2年後の1885年には今日あるような日本初の留点体温計、柏木体温計を完成させます。

 

当初は、医療機関が輸入品を好んだりしたため、柏木体温計はなかなか売れませんでした。それでも、輸入品より半分の価格であったこともあり、やがて全国で販売されるようになります。第一次世界大戦中の1914年には、国内だけではなくヨーロッパやアジア諸国へ輸出されるようになります。

 

柏木体温計は、販売元を三共株式会社(現在の第一三共株式会社)へ替えながら、1959年(昭和34年)まで製造されました。

 

<あくまでも地元の発展のために>

柏木幸助氏は、マッチ製造の際も体温計製造の際も、身分を失った士族を従業員として受け入れていました。他にも、新聞社の創設、胃腸薬でもあるジアスターゼの発見・販売、三田尻港の開発、醤油を短期間で製造する方法の発明等といったことも行っていました。発明家であり事業家であった彼は、ずっと地元の発展を考えていたのですね。

1933年に67歳でこの世を去りました。

 

<結び~何のために学ぶのか~>

柏木幸助氏は、家業を継ぐべく化学・物理を中心に学んでいました。安全マッチや柏木体温計は、学んだことが活かされた結果ともいえます。

何のために学ぶのかといえば、世の中の役に立つためではないでしょうか。最近は、ライフプランも含めことさら自己実現が叫ばれるようになりました。とはいえ、世の中の役に立ってこその自己実現です。私たちも、何となく学ぶのではなく、常に目的意識を持って学ぶことを心がけたいですね。

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