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コラム

- 日米欧・金融政策の最新事情と展望

2016年 第7回 日銀検証!インフレ率2%が達成できないワケ
小松 英二 

日銀は2016年9月の金融政策決定会合でこれまでの金融緩和政策の効果について「総括的な検証」を行い、それを踏まえて「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と称する新たな枠組みを導入しました。今回は日銀検証で展開された、インフレ率2%が達成できない理由(ワケ)を取り上げます。

2013年4月に日銀は、物価安定の目標を消費者物価上昇率(インフレ率)で2%と定め、2年以内に達成することを念頭に「量的・質的金融緩和」を導入しました。しかしながら一時的な上昇期はありましたが3年半が経過してもインフレ率はマイナスにとどまります。2016年2月にはマイナス金利政策を導入しましたが、インフレ率は思ったように上がらず、目標達成の見通しは立ちません。実現できていない理由について日銀は、総括的な検証のなかで「予想物価上昇率」(企業や家計の物価の先行きに対する予想)が想定通りには上昇しなかったこと指摘し、その背景を説明しています。

 

インフレ率2%が達成できない理由

❶ 2013年4月からの1年は順調に消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比も1.5%まで上昇している。人々のデフレマインドの転換が始まり、「予想物価上昇率」は上昇した。しかしながら2014年夏以降、2016年の年初にかけて、原油価格が7割以上も下落(「逆オイルショック」と呼ばれる)したことから、「予想物価上昇率」の低下とともに実績値である消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比も低下し、直近で▲0.5%(2016年9月)となった。

 

❷ 大規模な金融緩和にもかかわらず、インフレ率2%が実現できない外的要因が3つある。第1に原油価格が2014 年夏以降大幅かつ数度にわたって下落したこと(いわゆる「逆オイルショック」)、第2に2014 年4月の消費税率の引き上げ後の個人消費を中心とする需要の弱さ、第3に2015 年夏以降の新興国経済の減速や、たび重なるチャイナショックなどの不安定な動きが逆風となったことである。

 

❸ 日本の抱える固有事情も起因している。長くデフレが続いた日本では、欧米に比べて過去の物価動向の実績に引きずられやすく、人々の物価の先行きに対する予想(見方)を弱含ませる。こうした特殊事情も日本の「予想物価上昇率」を低下させていると思われる。

 

過去の物価動向の実績に引きずられやすい日本人

日銀はインフレ率2%が実現できないのは、逆オイルショックなど金融政策の外にある要因であることを強調しています。これら外的要因は、従来から専門家も取り上げており、真新しさはありません。注目されるのは、日本経済が持つ「過去の物価動向の実績に引きずられやすい」といった特性を指摘している点です。長年のデフレのもとで目標となるインフレ率が実現できなかったことや、春闘などの賃金交渉において「前年度の物価上昇率」が勘案(強く影響を受ける)されるなど、思い当たる節があるのではないでしょうか。過去に引きずられやすい日本人の気質が、3つの逆風(外的要因)が吹いたことで弱気となり、インフレ率2%が実現できなかったとする分析は説得力があります。俗に言う「デフレマインドが染みついている」ことを理論立てているといえます。

 

ただ、「総括的な検証」では、外部要因や過去に引きずられ易いといった日本の固有事情をインフレ率2%が実現できない理由に挙げるにとどまります。裏返せば「量的・質的金融緩和」を根本的に見直す必要はなく、マイナーチェンジをして走り続けると言っているに等しいように思われます。

 

検証すべき事項はまだあるのではないでしょうか。例えば、日本が抱える人口減少問題。将来の消費などの需要減少につながる人口減少問題とマイナス金利は果たして親和性があるのか、といった問題です。日銀がマイナス金利の効果が出ているとする住宅投資の例で考えてみましょう。確かにマイナス金利政策で住宅ローン金利が下がれば、早目に家を建てようとする人が増え、現時点の景気を浮揚させます。しかしながら、今家を建てると将来建つ家はその分減ります。金融緩和による需要喚起は、将来の需要を先取りすることであり、新たに需要を創り出しているわけではありません。このように視点を変えた多角的な検証は十分とはいえず、政府を交えて取り組む必要があるように思われます。

 

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