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FPの視点から見た熟年離婚
大沼 恵美子  ⇒プロフィール

ライフプラン作成に当たっては、健康・生きがい・経済のバランスが重要と言われますが、セカンドライフでは その重要性がより高まります。 リタイアし、毎日が日曜日。経済面、精神面、人間関係を含め家庭生活は大きく変化します。 60歳以降の25年前後に及ぶ長い老後を迎えるにあたって、あえて熟年(定年)離婚を選択する人もそれほ ど多くはありませんがいます。熟年(定年)離婚が経済面や健康面に及ぼす影響について考えてみました。

平成16年の年金改正で導入された「離婚時の厚生年金の分割制度」は、熟年(定年)離婚を考えている妻達の背中を押す制度だ、と注目を浴びました。
この制度は、サラリーマンの夫を支え続けた専業主婦が離婚した場合、受給する年金額が夫にくらべ非常に少なく生活に困窮するケースが少なくないことから、その対策として導入されたものです。


分割制度には、平成19年4月1日に実施された「離婚時の厚生年金の分割制度」(以下「合意分割制度」という)と平成20年4月1日に実施された「離婚時の第3 号被保険者期間についての厚生年金の分割制度」(以下「3号分割制度」という)があります。


平成16年当時「離婚するなら分割制度が実施される平成19年以降」と言われましたが、それを裏付けるように、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数は平成17~18年に減少し平成19年は増加に転じました(表1参照) 。

 

<合意分割制度>
平成19年4月以降の離婚を対象とし、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬総額を分割する制度です。按分割合は当事者間の合意で、合意が得られない場合は当事者の一方が家庭裁判所に申し立てを行い裁判手続きによって決めます。


按分割合が決まったらその内容を記載した書類あるいは公正証書を添付して住所地の社会保険事務所で「年金分割の請求」を行います。この手続きを行わないと保険料納付記録は変更されません。


請求期限は、原則、離婚した翌日から2年です。


50歳以上の人又は障害年金の受給権者に限って、離婚する前に ①按分割合の上限( 50%) ②按分割合の下限(分割を行わない) ③本人希望の按分割合の3パターンについて年金分割後の年金見込み額を教えてもらうことができます。


社会保険事務所に提出する情報提供請求書の所定の欄にその旨を記載しましょう。

 

<3 号分割制度>
平成20年5月1日以降の離婚について適用される制度です。


平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3 号被保険者期間に対する標準報酬総額の合計が自動的(強制的)に夫婦折半されるというものです。


「合意分割制度」とは異なりどちらか一方が社会保険庁に請求すればよく、合意の必要はありません。請求期限は「合意分割制度」と同じく原則離婚した翌日から2年です。


この制度のポイントは「平成20年4月1日以降の婚姻期間の第3号被保険者期間について・・・・」です。夫が既にリタイアし厚生年金制度に加入していないご夫婦やリタイアが目前のサラリーマン夫婦にとっては利用価値がないあるいは低い制度です。

 

■ 「離婚時の厚生年金の分割制度」の注意点
離婚時の厚生年金の分割制度は標準報酬総額を分割するもので、年金そのものを分割するわけではありません。従って分割される人が年金受給資格を持っていなければ、せっかく分割した厚生年金の保険料納付記録は無駄になってしまいます。


この制度を利用するにあたって注意すべき点は次のとおりです。

1.年金受給資格を満たしていること=国民年金、厚生年金、共済年金等に通算25年以上加入

※離婚時に分割される厚生年金の被保険者期間は年金受給資格期間の算定には含まれません


2.分割された年金の受給は、自分の年金を受給するようになってから

3.分割対象は厚生年金だけ。国民年金は対象外
4.分割対象期間は婚姻期間だけ。夫(妻)が独身時代に加入していた厚生年金加入期間は対象外
5.分割対象期間に共働きの期間がある場合、その期間はお互いの標準報酬総額を分割する
6.振替加算を受給している人で、年金分割後に厚生年金加入期間が20年以上になる人は振替加算の給付はストップされる
※振替加算と加入期間については次の項を参照のこと


7.加給年金や遺族厚生年金、経過的寡婦加算の給付はない


悦子さん(熟年離婚について考えるより)の場合、加給年金+振替加算+遺族厚生年金(分割された年金は含まない)+経過的寡婦加算=約810万円です(宏さんの余命を21年、悦子さんの余命を29年とした全期間合計)。


厚生年金は、サラリーマンの(であった)夫を支える妻に対して手厚い給付で報いる制度といってもいいでしょう。ですから熟年離婚し妻の座を降りると、加給年金や遺族厚生年金、経過的寡婦加算などの特典は消滅し、結果として個人が受け取る年金総額が少なくなります。


なお、経過的寡婦加算は生年月日によって給付額が減少し、昭和31年4月2日以降生まれの人には給付されません。

 

■振替加算
「熟年離婚するなら65歳以降に」という話を聞いたことがありますか? (特別支給の定額部分の)老齢厚生年金を受給する人に一定の条件を満たした65歳未満の配偶者がいる場合、加給年金が上乗せ給付されます。


加給年金は、配偶者が65歳になり配偶者自身が老齢基礎年金を受給するようになると給付は停止、その代わり配偶者の老齢基礎年金に振替加算が上乗せ給付されます。


振替加算は生年月日によって給付額が減少し、昭和41年4月2日以降まれの人には0円の給付、すなわち給付されません。振替加算はいったん給付されると離婚しても停止されることはありません。


ですから「離婚するなら65歳以降・・・・」となるわけです。

 

離婚でも消滅しないはずの振替加算が、年金分割によって停止とは?


振替加算は「厚生年金加入期間が20年未満の配偶者に」と決まっています。厚生年金加入期間は、「配偶者自身の厚生年金加入期間+年金分割された厚生年金加入期間」で算定されるので、熟年離婚の人の多くは厚生年金加入期間が20年を超えてしまい、振替加算は給付されないと思われます。

 

■妻のいない男性は死亡リスクが1.79倍
宏さん(熟年離婚について考えるより)は単に「自然と親しみたい、田舎暮らしをしたい」という希望から別居・離婚を考えました。


長い年月をともに生きてきた妻との別れは、それほどに軽いものなのでしょうか。


ここに興味深い調査結果があります。

データーが少し古いのですが、「離婚後何年生きられるか」では、60歳離婚男性の平均余命は14.97歳、それに対し60歳妻がいる男性は18.2歳と3年以上も長く(厚生省人口問題研究所)、妻がいない男性は妻がいる男性より死亡リスクが1.79倍高まり、夫がいる女性は夫がいない女性より死亡リスクが2.02倍高くなる(愛媛県総合保健協会)とか。男性はシングルになると早死にし、女性は男性とは逆にシングルのほうが長生きするわけです。


以上のことからもセカンドライフは経済的な安定はもちろんですが、夫婦関係がとても重要であることがわかります。


リタイアすると夫婦で向かい合う時間が長くなります。夫が家事に全く参加しなければ、妻は自由な時間を失い、家事の負担が増します。その結果、うつ病や主人在宅ストレス症候群などを発症したり熟年離婚に踏みきったりするのでしょう。


妻は夫の母親でも家政婦でもありません。夫・妻それぞれが自立し、尊重し、理解し、価値観の違いを認め合い、適度な距離を保ちつつ互いに支えあう関係を作っていくことがセカンドライフの第一歩であり、充実したセカンドライフをおくるキーポイントのようです。

 

■終わりに
60歳以降の25年間は、0歳児が25歳に成長していく過程を逆行する日々です。60歳代ではあまり感じない身体機能の低下も75歳以降には実感するようになり、病気や怪我で入院、通院、要支援、要介護になる人が増えてきます。


次々と起きる問題に対し、離婚して助け合う相棒を失った人の中には、1人で対応し悩む人もいるでしょう。


健康や経済の諸問題は、健康保険制度や介護保険制度、リーバースモーゲージ、移住・住み替え支援機構、成年後見制度などを利用することで解決に繋がることが少なくありません。


問題の全体像をつかみ、公的支援制度等の活用を含む経済的裏打ちのある解決案を提案し、実行支援をする「かかりつけファイナンシャル・プランナー」をもつことで、充実したセカンドライフを安心して送ることができるのではないでしょうか。


セカンドライフがスタートする前に、ファイナンシャル・プランナーを交えて夫婦でじっくりとセカンドライフについて話し合うことで離婚を回避することができるかもしれませんネ。

 

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2018.07.15
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2018.07.01
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特に、ここ2018年上半期に関しては、大変多くのみなさんに見て頂いておりまして、月平均80万PV超になっております。
これもSEO対策などweb上での誘導施策を行わず、「顧客利益優先」原則に基づき、倫理面について問題ないと認定できる実務家FPが情報提供をさせていただだいている賜物だと感じております。
大変感謝しております。
今後も、ご指導ご鞭撻をよろしくお願い致します。
マイアドバイザー運営者 株式会社優益FPオフィス 佐藤益弘
2018.06.01
【ご報告】 5月30日、マイアドバイザーは、閲覧総数(ユニークユーザー数)600万人を達成することができました。 4月から新体制の下、再スタートさせて頂いていますが、今後もSEO対策などweb上の誘導施策を行わず、地道に「顧客利益優先」原則に基づき、実務家FPの活動をしています。 また、実務家FPとして業務上の倫理違反が無きよう活動して参ります。 今後も、ご指導ご鞭撻をよろしくお願い致します。 マイアドバイザー運営者 株式会社優益FPオフィス 佐藤益弘

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