【2010年 第7回 国際会計基準という黒船】 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
早ければ2015年にも上場企業に対して強制適用の可能性のある国際会計基準。
とりあえず関係するのは、すでに上場、あるいは今後の上場を考えており、かつ連結財務諸表を作成している企業のみです。
しかし経済のグローバル化が加速度的に進展している現在、それ以外の企業も全くの無関心でいるわけにはいきません。
グローバル化の波に乗るためには国際会計基準のある程度の理解は必須です。
そしてグローバル化の波に乗り遅れることは即事業の衰退につながります。
以下に金融庁が2010年4月に公表した“国際会計基準に関する誤解”というQ&A集からロードマップ表を作成してみました。
今のところのロードマップに載っている国際会計基準適用は上場企業の連結財務諸表のみです。
単独財務諸表は国際会計基準の強制適用の予定はありません。
しかし親会社が上場している場合、親会社の連結財務諸表は国際会計基準、子会社の単独財務諸表は日本会計基準、となれば事務的に煩雑となるでしょう。必然的に子会社も親会社と同様の国際会計基準という方向になっていくでしょう。
さらに子会社が無く単独財務諸表のみを作成している企業であれば、国際会計基準の強制適用は免れる方向となりそうです。
そのような企業であっても、今後のM&Aや海外展開で子会社が出来てしまうことも考えられます。
むしろ事業拡大の過程でそのような事態を避けるわけにはいきません。
その場合、一定の猶予期間を設けてくるかどうかは別として、されほど長くない将来に国際会計基準は強制適用となるでしょう。
確かに国際会計基準の強制適用はまだ確定されたわけではなく、今後とも日本基準のまま継続する可能性も僅かばかりですが残されています。
その場合であっても、その時の日本基準とは?おそらく表面上は日本基準の衣をまとっているが中身は国際基準と殆ど差異のないものになっているでしょう。
実質的には国際会計基準の強制適用と何ら変わりのないものになっている可能性が高いでしょう。
次に上場企業でもなく、上場企業の子会社でない場合。
とりあえずは国際会計基準強制適用のロードマップとは無縁ですが、かといって無関心ではいられません。
小規模の企業ではあっても、事業拡大のためには外需型の企業はもちろんですが内需型の企業であっても仕入等で海外との取引は欠かせません。
その過程で自社の財務状況の説明を求められることもあるでしょう。
そして資金調達も国内の金融機関とばかりは限りません。
海外からの資金調達も十分に考えられます。
その場合、日本でしか通用しない会計基準を使用していたのであれば、海外との競争の過程で最初から不利なハンディを背負う形となります。
あわてる必要はありませんが、国際会計基準を巡る動きは大きな関心を持っておく必要はあるでしょう。
商品、情報、お金が国境を越えて世界中を動き回る今。事業の“ものさし”である会計基準がバラバラでは国際取引に大きな支障があります。
もはや日本基準、国際基準どちらが適切か問答している時代ではありません。
日本が国際的競争に立ち向かうためには一刻も早く“ものさし”を世界に合わせる必要があります。
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