“投資信託” の落とし穴【2010年 第3回】

【2010年 第3回  “投資信託” の落とし穴】 金融危機から顧客を守れた理由

岩田 亮 プロフィール

 とにかく資産運用のアドバイスというと投資信託だらけになってしまう今日この頃。
例えば金融雑誌の記事なんかを見ても、「どの金融商品(投資信託)が良いか」という視点のものばかりが目につきます。

こういうものを見た人はフィーリングで金融商品を購入しますが、結局買った後は放りっぱなしで売り時の管理をしないために、多くの場合で良い結果を生んでいないように思います。

この「投資信託の販売推奨」に偏った金融サービスの在り方に関して、筆者は問題意識を禁じえません。

 

筆者が講演会などを行いますと、投資信託の有効性について相当時間をかけていくつもの持論を展開することになりますが、ここでは紙面が限られているので、そのうちのひとつだけ紹介してみたいと思います。

 

投資信託はそもそも長期投資のツールです。これを短期で売ったり買ったりする人はまずいないでしょうし、仮にいたとしても「相当効率の悪いことをやっている」と言えるでしょう。もちろん売買コストが膨大になるためです。(ETFなら短期トレードが可能)

しかし、「長期投資のツールでありながら、長期投資がしにくいのが投資信託だ」という事実を、皆さんはご存知でしょうか?

 

投資信託の国内での登録本数は3600本にのぼります。
そのうち、10年以上存続してきた投資信託の本数は、(独自に調べたところ)372本しかございませんでした。なんと1割強。

10年前の段階でも、登録本数はさほど変わりません。ということは、9割弱の投資信託は消えてなくなった…そういうことです。

 

もちろん、単位型の投資信託であれば、当初から数年で解散することになっているわけですが、追加型の投資信託が主流になっているのは周知のところですし、金融機関の窓口で大量に販売されているもの多くが運用期限を限定していない商品だと思われます。

 

それらが、方々から解約を受けて預かり資産額が少なくなってしまったり、基準価額が一定額を下回ったりした場合に、繰り上げ償還:解散というエクスキューズを行うわけですが、契約者にとっては寝耳に水のような話になってきます。

おまけにそんなケースでは金額的にも大きく減らされて帰ってくることが多いと考えると、投資信託に関して顧客満足度が低いのは、そんなところに理由があるのではないかと想像できます。

 

 10年以上存続したものが372本と書きましたが、(一定以上の資産を預かっていないと安心できないということから)純資産100億円以上のものに絞り込むと、なんと69本しか残りません。

投資信託の長期保有では、なかなか勝ち目がないということになります。 

こういう数字はなかなか表に出ることもないのでしょうが、中立なFPの立場で語れる人であれば、ぜひ顧客に伝えなければならない重要な情報であるはずです。

 中立公正とうたいながらも、真に顧客の立場にたつのは難しいもの…。
しかしここから先は、誠実さと、FPとしての使命感と、プロ根性が問われる時代だと考えます。
特に投資のアドバイスにおいては、金融危機以後は特に顧客の目が厳しくなっていることを忘れてはいけません。
身を引き締めてまいりましょう。

 

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