【2012年 第1回 自営業をはじめる人へ 】- 経営者のための社会保険・労務管理
菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール
意外に孤独な経営者? 個人事業主であっても、代表取締役であっても、経営者とは実は孤独な立場なのでしょう。会社で起こった問題、自分の問題、立場上誰にでも話せるものではないので、問題をかかえて悩むこともあるのではないでしょうか。今回から経営者のためのコラムを始めます。経営者の本音にせまりたいと思っています。
個人事業を開始する場合のポイントはあります。
事業が軌道に乗るまではいろいろな対策が必要です。事業計画と実践が大切なことはいうまでもありませんが、出ていくお金をコントロールしたり、返済不要の助成金を利用したり、収入・支出、いずれも工夫と知恵が必要です。
出ていくお金について考えてみましょう。
個人事業主の場合、医療保険・国民年金などの保険料負担を考えていかねればなりません。
医療保険については、会社を退職して個人事業を始める人で、国民健康保険が高額になるようであれば、これまでの社会保険を任意継続することによって、医療保険料を節約することができます。
任意継続は2年間ですが、1年経過後には再度保険料を比較してみて、国民健康保険が割安になっているようであれば、乗り換えることも検討しましょう。
国民年金については、保険料納付が基本ですが、はじめは免除で乗り切る方法があります。もちろん、所得基準などの要件がありますので、申請しても認められない場合もあります。
1か月15,020円(平成23年度)と、確かに国民年金保険料の負担は大きいですが、免除を利用するにしても、1年間にするなどと、自分で「ここまで」という時期を決めておいたほうがよいかと思います。それは老後のためです。
自営業者はサラリーマンに比べると、将来受け取る年金額が少なくなってしまいます。老齢厚生年金という上乗せ年金がないからです。国民年金の免除を利用すると、さらに受け取る年金額が少なくなります。国民年金保険料は必要な支出として考えた方がよいと思います。
事業を開始したら、小規模企業共済への加入をおおすめします。これは個人事業主だけではなく、小規模であれば法人の代表者も加入できます。小規模企業共済とは、事業主のための退職金制度です。分割して受け取れば上乗せ年金として活用することもできます。
小規模企業共済は少額の掛金(1,000円)から開始できるので、少額でもはじめておくのがコツです。事業が軌道に乗ってから加入を検討するという方もありますが、事業規模が基準を超えるとその後は加入できません。加入年数が15年以上となると、老齢給付として受け取れるというメリットもあります。
事業規模が小さいうちに、無理のない掛金で加入しておき、経営が順調にいけば、掛金を最大の7万円まで増額するとよいでしょう。1年間で84万円が所得控除となり、所得税の節約もできます。
青色申告の届け出
税金対策として青色申告の届け出はしておきましょう。帳簿の付け方がよくわからない人は、無料の相談・指導をしてくれる税務署もありますので、まず、相談してみましょう。会計ソフトは利用しましょう。安価で購入できるものもあります。
支出をコントロールする方法をお話しましたが、事業を開始するときは、助成金の活用も検討してみる価値があります。助成金とは、返済不要の国からの支援金と考えてください。創業に関する助成金、人を雇用することに関する助成金などがあります。いずれも、要件はきびしく、期日までに書類を提出しないといけませんので、創業の場合は、あらかじめ、労働局の助成金センターなどで確認しましょう。
個人事業主は、まさかのときの保障も手薄になっているので、注意してください。
仕事中にケガをしても労災保険はありません。(特別加入はできます)
国民健康保険の場合、病気やケガで仕事ができなくなっても、休業保障はありません。また、障害年金、遺族年金を考えても、サラリーマン時代より保障は少なくなります。
まさかのときが来るのか、来ないのか、それは誰にもわかりません。しかしそのときになって困らないように、加入している保険を見直し、保険料に無理のない範囲で、必要な保障を準備しておくことが大切です。
特に「ひとり自営業」では仕事を代わってくれる人がないのですから。
自営業にはサラリーマン時代とは異なる困難さがありますが、それでも、自分で仕事をしていくということは、夢を切り開いていくことですね。大きな夢を実現するお手伝いができるように、このシリーズコラムで、必要な情報をお届けしていきたいと思っています。
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