【2012年 第9回 プレママ(妊婦)さんの相続】女性のための幸せ相続を考える
マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス
もしもプレママ期間中にご主人に万が一のことが起きてしまったら?
おなかの赤ちゃんのための相続の知識、確認しておきましょう。
■ おなかの赤ちゃん、相続では特別扱い
プレママのKさんは妊娠5か月。ご夫婦にはまだ子供がいなくて、初めての子が生まれる日を指折り数えて楽しみにしています。考えたくないことですが、もしも妊娠中に不慮の事故などで突然ご主人が亡くなってしまったとしたら・・?まだ生まれていないおなかの子について、相続はどうなるのでしょうか。
人は生まれてはじめて「人」となり、人としての権利を持つことが出来るというのが民法の原則です。これを厳密にあてはめるとおなかの赤ちゃん(胎児)はこの世にまだ生まれておらず相続権がない、となるはずです。
しかし、相続においては例外の規定があります。相続開始当時に胎児であるということで相続人としての権利を認めないことにしてしまうと、無事に生まれた赤ちゃんの権利が不当に害されることになってしまうからです。
たとえばお父さんが亡くなる前日に生まれた赤ちゃんは相続権を持つのに、お父さんが亡くなった翌日に生まれた赤ちゃんには相続権がないということになると、この世に出るタイミングがわずかに早いか遅いかで大きな差がついてしまうことになり問題です。
そこで相続については、法律上「胎児は既に生まれたものとみなす」と規定し、「死体で生まれたときはこれを適用しない」としています。
つまり、赤ちゃんがおなかの中にいる時にお父さんが亡くなった場合、赤ちゃんは相続人となります。でも、不幸にして赤ちゃんが死産だったら、相続では初めからいなかったものとして扱われ、相続人とはなりません。無事に生まれればお父さんの遺産がもらえるわけです。
赤ちゃんが無事に生まれてくるかどうかで相続順位と相続分は変わります。
無事に生まれた場合 :妻2分の1、赤ちゃん(第一順位)2分の1
死産だった場合 :妻3分の2、夫の両親(第二順位)3分の1
相続関係がどうなるかは、赤ちゃんが生きて無事に生まれてくるかどうかにかかっているのですね。遺産分割の話し合いの相手や手続も違ってきますので、おなかにいる赤ちゃんを除外して妻と、夫の両親だけで早まって遺産分割について決めてしまったとしても、赤ちゃんが生きて生まれればその取り決めは無効になります。
■ 赤ちゃんも遺産分割協議をする!?
赤ちゃんが無事に生まれるまでは、誰が相続人となって相続分はどれだけになるかもわかりませんから、通常は赤ちゃんの誕生を待って遺産分割の話し合いを行います。
生まれたばかりの赤ちゃんは当然のことながら未成年で、物事を判断する能力もありませんので代理人を立てることが求められます。
親権者であるお母さんは赤ちゃんと同じ相続人という立場にあり、お母さんと赤ちゃんの利益が対立することから(利益相反)、お母さんが赤ちゃんを代理して遺産分割の割合を決めてしまうことはできません。家庭裁判所で所定の手続きをして赤ちゃんのために特別代理人を選任してもらうことが必要です。
■ おなかの赤ちゃんに遺言書を残せる?
お父さんが亡くなった場合、おなかの赤ちゃんにも遺産を分けるという遺言書をあらかじめ書いておくことはできるのでしょうか?
答えはYesです。まだ赤ちゃんの名前が決まっていなくても大丈夫です。その場合、「遺言者の妻○○の胎児に△△を相続させる。」などのように、妻の名前を書いて特定しておきます。
遺言書があれば、特別代理人の選任も遺産分割の話し合いも不要ですので、相続手続の負担を減らすことができます。また、まだ見ぬわが子への想いを伝えるツールとしても活用できます。お父さんの愛情いっぱいのメッセージを付言事項として盛り込んだ遺言書は、子どもにとって一生の宝物になるでしょう。
これから赤ちゃんが生まれてくるのに、夫の万が一のことなんて・・と具合的に考えることをためらわれるプレママさんもいらっしゃるかもしれませんが、一方で、生命保険については妊娠・出産を機に見直ししようと考える人も多いのでは?保険と同様に、相続について必要な知識を持って準備しておくことも、リスクに備える一つの方法です。生まれてくる赤ちゃんのために、一つでも多くの安心を準備しておきたいですね。
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