【2012年 第10回 ハイリスクな商品投資】若者&奥様のための「商品投資入門」
三次 理加(ミツギ リカ)⇒プロフィール
「とうもろこしが大変ですっっ!!!」
突然、職場や自宅にこんな電話がかかってきた経験はありませんか?
でも最近は、そのような電話もなくなってきたのではないでしょうか?
金や原油、とうもろこしなどを取引対象とする「商品先物取引」に代表される「商品デリバティブ取引」は3種類あります。国内商品取引所で取引される「商品先物取引」、海外商品取引所で取引される「海外商品先物取引」、「商品・商品先物CFD取引(=店頭商品デリバティブ取引)」の3種類です。
以前は、それぞれ規制する法律が異なっていましたが、2011年1月「商品先物取引法」施行により一本化されました。取扱業者は主務省から「商品先物取引業者」の許可が必要となり、原則として不招請勧誘(=勧誘を要請していない人への勧誘行為)が禁止となりました(注1)
注1:国内商品取引所における損失限定取引(当初預託した資金を上回る損失の発生するおそれがない取引)のほか、既に商品先物取引業者と商品取引契約(不招請勧誘禁止の対象となるものに限る)または金融商品取引法における店頭金融先物取引(店頭FX取引等)に係る金融商品取引契約を締結している顧客に対して、当該業者が別の商品取引契約の締結の勧誘を行うことは認められている。
商品先物取引ってどんな取引?
商品先物取引とは、ある特定の商品を ②一定数量 ③あらかじめ定められた価格で ④将来の一定期日に、受け渡す契約の取引」です。ただし、買った場合には転売、売った場合には買戻しを行い、買値と売値の差額(差金)を授受することによって決済することもできます。
つまり、商品先物取引とは、「買う」契約をした場合は将来の期限までに代金を、「売る」契約をした場合は将来の期限までにモノを用意すればいい、という取引です。そのため、現時点では、モノも総代金も必要ありません。手元に「モノ」がなくても、「売り」から取引を始めることもできます。
ただし、それでは取引の履行が保証されないため、売り手、買い手ともに、その契約履行保証金として「証拠金」と呼ばれる少額の資金を預託する必要があります。証拠金は、商品により異なりますが、総代金の3~10%程度です。
また、原則として、商品先物取引には決済期限が定められています。
なお、 国内であれ、海外であれ、商品先物取引は「商品取引所」で行われる取引のことをいいます。そのため、取引所により取引概要が規格化されています。
商品・商品先物CFD取引ってどんな取引?
CFDとは、Contract for Differenceの略です。現物の受け渡しをすることなく、売値と買値の差額(差金)を決済する、差金決済取引のことをいいます。たとえば、外国為替証拠金取引(FX取引)は、ドル/円、ユーロ/円などの為替を対象としたCFD取引といえます。商品・商品先物CFD取引は、金や原油、金先物や原油先物を対象としたCFD取引です。CFD取引は、商品先物取引同様、少額の資金(証拠金または保証金)を担保に、その数倍の取引を行うことができ、売りからも買いからも取引を始めることができる、という特徴があります。
商品デリバティブ取引の共通点
商品先物取引や商品・商品先物CFD取引などの商品デリバティブ取引の共通点は、以下の通りです。
①少ない資金で大きな取引を行うことができる。
図表1は、金現物取引と金先物取引の損益を比較したものです。金現物と金先物の価格は連動しているため、同じ値動きであれば、ほぼ同じ損益が発生します。
そのため、商品デリバティブ取引は、現物取引と比べ「少ない資金で大きな利益を狙える」という特長があります。半面、相場状況によっては「当初資金を上回る損失が発生すること恐れ」があります。また、一定の含み損失が発生した場合には、追加資金を入金するか、または取引を決済するか、のどちらかを選択しなければならないこともあるため注意が必要です。そのため、ほとんどの「商品デリバティブ取引」には、重要なルールが設けられています。取引をする際は、事前にこれらルールをしっかり理解するようにしましょう。
②「買い」からだけではなく、「売り」からも取引を始めることができる。
「商品デリバティブ取引」は、将来、価格が上昇すると予想した場合には「買い」から、下落すると予想した場合には「売り」から取引を行うことができます。そのため、価格の上昇局面だけではなく、下落局面でも利益を追求できるという特長があります。
図1 現物取引と商品デリバティブ取引との損益比較
それぞれの取引形態における違い(図表2)
大きな違いとしては、国内商品先物取引については、差金決済だけではなく受渡し決済ができる、金利が発生しない、という2点が挙げられます。国内商品先物取引を利用すれば、たとえば、金やプラチナ地金を一般小売価格より安い価格で買うことも可能です。また、業者であれば、ガソリンや原油等の仕入れ先として商品先物市場を利用することもできます。
海外商品先物取引の場合、取引はドル建てで行われるため、口座内の円資産をドルに転換する際の手数料が必要となります。また、業者によっては、含み損失や確定損失に伴う支払いの際にドル調達にかかる借入金利が発生することがあります。
現物商品CFDの場合、金利調整額が発生する銘柄があります。また、商品によっては、限月(先物市場における決済期限の属する月)交代による価格調整額が発生するものがあります。
図2 商品デリバティブ取引
なお、前述したように、国内と海外の商品先物取引は、取引所取引のため商品取引所が介在します。一方、CFD取引は業者とお客様との相対取引のため、業者の信用リスク等がある点に注意しましょう。
いずれの取引であっても、口座開設には一定の審査があり、誰でも取引できるものではありません。取引をする際は、資料・書類を熟読し、理解したうえで臨むようにしましょう。
次回は、トラブル発生時の相談先について紹介します。お楽しみに。
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