【2012年 第11回 母・姑としての相続】女性のための幸せ相続を考える
マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス
夫亡き後、遺された妻の生活に必要なもの、それは「住まい」と「お金」です。夫の財産を妻と子ども達とで分ける場合、配分方法には工夫が必要です。相続人ではない息子の嫁との関係(嫁姑関係)も、無視できないものがあります。
■夫亡き後。妻の生活を守るには?
2人の息子は独立して結婚し、夫婦2人の生活を送っているあるご夫婦。
夫は年老いた妻がひとりになった後のことを考え、自分が死んだら全財産を妻に相続させたいという希望を持っています。
誰に何をどれだけ相続させるかの配分を考えることは大切です。配分の仕方によっては、妻と子どもたちとの間で思わぬトラブルになってしまうことがあるからです。ケース別に見てみましょう:
- 自宅も預貯金も妻がすべて相続する場合
遺留分の問題はあるものの、夫が遺言書を残しておけば妻に全財産を渡すことは可能です。ただし、妻は「住まい」も「お金」も確保できる半面、一定の期間内は息子達から最低限の相続分を請求(遺留分減殺請求)される可能性があることや、息子達や息子の嫁達との今後の関係にヒビが入るかもしれないというリスクも潜んでいます。
●長男夫婦に妻の面倒を見てもらいたいので、
夫名義の自宅も預貯金もすべて長男夫婦が相続する場合
長男夫婦に世話をしてもらうことが前提とは言え、妻の相続分が全く無いのでは、妻は大変肩身の狭い思いをすることになります。
自宅の名義が長男のものになりますので、妻が住み続けていても万が一、長男が住まいを売却してしまえばその日から妻は住むところが無くなってしまいます。長男夫婦と同居する場合でも、「住まわせてもらっている」立場として、嫁への気遣いもあるでしょう。もし嫁姑関係が良好でない場合、妻には出ていく場所さえありません。次男の家に行くことができれば良いのですが、相続分がもらえなかった次男(とその嫁)が快く受け入れてくれるかどうかはわかりません。
そして万が一、息子が妻より先に亡くなってしまった場合には、相続人は息子の嫁と息子の子供たちです。妻は何も相続することができません。
- 妻が「自宅」を、息子が「預貯金」を相続する場合
妻に住まいは確保されますが、相続財産としての現金は一切入ってきません。いくら自宅があっても、日々の生活費や医療費、趣味の費用や孫たちへのお小遣いまで、現金がないと困る場面はたくさんあります。足りないからと言って嫁の手前、息子からたびたび現金をもらうわけにもいかないというご家庭もあるでしょう。
この配分をする場合には、夫の生命保険金や遺族年金、妻自身の年金や預貯金で、妻の老後の生活資金として十分な現金が確保できるかどうかを見極めることが必要です。
- 息子が「自宅」を、妻が「預貯金」を相続する場合
「お金」はあっても「住まい」がないという配分の場合、資産家でありあまるほどの多額の預貯金でもあれば良いのですが、そうでなければ前述のように全財産を息子に相続させるケースと同様、住まいについて何ら権利を持たない妻の立場は弱くなります。
このような事態を避けるには、自宅の一部でも妻が相続し、妻の持分を確保することです。そうすれば息子が勝手に住まいを売却することはできません。
■遺産配分は、住まいとお金のバランスが大事
「自宅だけ」、「お金だけ」、ましてや全財産を子供たちだけで分けてしまう方法は、ひとり遺される妻にとってはリスクが大きいと思われます。財産状況にもよりますが、家族関係やそれぞれの事情とも合わせて住まいとお金のバランスをよく考え、配分を決めることが大切です。
その際、「全財産の2分の1を妻に、残りの2分の1を子供たちに相続させる」などのように、割合だけで配分を決めることは争いの種になりがちです。特に不動産などのように分けにくい財産については誰に何を、というように相続財産を特定する形にしておくと良いでしょう。
配分方法が決まったら、夫には遺言書を書いておいてもらいましょう。相続が起きた後で、妻と息子達とで話し合えば何とかなるだろうとの楽観は禁物です。息子の嫁など、相続人以外の人が口を挟むなどして話し合いが難航するケースは多いものです。相続をきっかけに嫁姑争いが過熱して、息子達とも絶縁状態・・そのような事態を避けるためにも、事前に夫にしっかりと準備しておいてもらうことが重要です。
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