【2012年 第12回 商品投資に係る税金について】若者&奥様のための「商品投資入門」
三次 理加(ミツギ リカ)⇒プロフィール
投資で利益が出ても、損失となっても忘れてはいけないのが税金の存在です。ひとくちに「商品投資」といっても、その税制は様々です。最終回となる今回は「商品投資に係る税金について」です。
冒頭で触れたように、商品投資に係る税制は様々ですが、大きく「現物商品関連」「金融商品化した商品等」「国内の商品取引所における差金決済、店頭商品デリバティブ取引」「その他」の4つで異なるといってよいでしょう。
現物商品関連
現物商品関連とは、純金積立(注1)、貴金属現物取引、および国内商品先物市場において受渡決済したものです。ちなみに、受渡決済とは「買ったものは転売する」「売ったものは買い戻す」という差金決済によらず、「買った場合、総代金を支払い、現物を受け取る」「売った場合、モノを渡して代金を受け取る」という決済方法のことです。
これらの取引における利益は、「譲渡所得」として「総合課税」の対象となります。譲渡所得の計算は、その保有期間によって以下の通り異なります。また、国内商品先物市場において受渡決済をした場合、保有期間を計算する際、購入・売却日は建玉日(注2)ではなく、納会日(注3)となります。
譲渡所得の計算
特別控除額は、短期・長期合計で50万円です。控除の順序は、先に短期、残りを長期から差し引きます。また、上記商品投資以外に譲渡所得(総合課税)の対象となる所得が生じていた場合には、それらの収入を合算したうえで算出します。
なお、平成24年1月1日以後、金地金等(金地金、白金地金、金貨、白金貨)の売却金額が200万円を超える取引については、業者に対し、税務署への支払い調書提出が義務付けられました。これまでとは異なりますので気をつけましょう。
注1:事業または営利を目的とした純金積立の継続的な売買の場合を除く
注2:建玉日=売りまたは買いの注文が成立した日
注3:納会日=最終決済日
金融商品化した商品等
金融商品化した商品等とは、証券取引所に上場されている商品ETF、ETNや商品投資信託等が挙げられます。
商品ETF、ETNには、原則として(注4)上場株式と同様の税制が適用されます。つまり、原則、「譲渡所得」として「申告分離課税」の対象となります。税率は、10%(所得税7%、住民税3%)です。計算式は以下の通りです。
税率の計算式
商品投資信託の換金、償還における収益は、原則として、上場株式の扱いに準じます。
なお、上記計算の結果、損失となった場合には、確定申告することにより譲渡損失として翌年以後3年間にわたり、繰越控除を適用することができます。
注4: 外国投資法人債券は、個人の場合、譲渡益は譲渡益課税の対象(総合課税)
国内の商品取引所における差金決済、店頭商品デリバティブ取引
個人が、国内の商品取引所における商品先物取引や、店頭商品デリバティブ取引(商品CFD、商品先物CFD取引等)の差金決済を行い、年間を通算して利益となった場合には、「雑所得」として「申告分離課税」の対象となります。税率は、20%(所得税15%、住民税5%)です。
計算式は以下の通りです。
税率の計算式
また、計算の際は、先物取引内での損益通算が可能です。先物取引とは、国内の取引所における商品先物取引、店頭商品CFD、店頭商品先物CFDのほか、国内の証券取引所における有価証券先物取引や、有価証券指数等先物取引(大阪証券取引所「日経225mini」など)、有価証券オプション取引 、国内の証券取引所又は金融取引所における金利先物取引、外国為替証拠金取引(FX取引)、カバードワラント等です。株式の現物・信用取引、商品ファンド、外国の商品取引所における先物取引などによる所得との損益通算はできないので注意しましょう。
なお、上記計算の結果、損失となった場合には、確定申告することにより譲渡損失として翌年以後3
年間にわたり、繰越控除を適用することができます。
その他
その他に分類されるのは、商品ファンドや海外の商品取引所における商品先物取引です。これらの収益は、「雑所得」として「総合課税」の対象となります。
商品ファンドの場合、組成方式が「信託」方式の場合には、一律20%の源泉分離課税となります。しかし、預貯金の利子等と異なり、それで課税終了とはなりません。人によっては確定申告が必要となりますので、注意してください。
なお、平成25年1月1日から平成49年12月31日まで(25年間) の期間における個人の所得税額(注5)については、「復興特別所得税」が課せられることになりました。税額は「 所得税額に2.1%を乗じて得られた額」となります。
注5: 住民税等の地方税は対象外。
以上、商品投資に係る税金についてご紹介しました。
詳細については、最寄りの税務署及び税理士に相談、確認してください。
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