原油先物投信【2009年 第 8 回】

【 2009年 第 8 回 】原油先物投信 資産運用

有田 宏(アリタ ヒロシ)⇒プロフィール

原油先物3商品の特徴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


本コラム第6回にて「原油先物ETFの活用法」との標題で書きました。その後投資信託を含めて商品が揃ってきました。

今回は①野村アセット・マネジメントの“野村原油先物投信”②ITCインベストメント・パートナーズの“WTI原油先物ファンド”③ETFであるシンプレックス・アセット・マネジメントの“WTI原油価格連動型上場投信”、この3つの商品について特徴を述べてみましょう。

① 野村原油先物投信
特徴の第1としてWTI原油先物と豪ドル・ブラジルレアル・南アフリカランドを合わせて運用するものです。WTI原油先物はアメリカドル建て。
一方この3通貨は高金利通貨です。3通貨とアメリカドルの金利差を受け取ることが出来ます。しかしそのためには3通貨の相場変動リスクを抱えなければなりません。これらの通貨はアメリカドルより変動が大きくなりがちですので注意が必要です。

さらに、オーストラリア、ブラジル、南アフリカはともに資源国でもあり、為替相場の動きは原油価格の変動と同一方向に動きがちです。リスク分散ではなく、リスクの集積になり、ファンドの収益が原油の価格変動より大きくなることが考えられます。

特徴の第2は、毎月分配のコースも選択できるということです。年金生活者を営業ターゲットとしているのか。確かに年金生活者にとり原油価格の大幅な上昇は、生活を圧迫するので、原油先物で事前に対応することに有益性は高いでしょう。

② WTI原油先物ファンド
特徴の第1はロングポジション(買い)の他にショートポジション(売り)があるということ。ショートポジションを使えば原油価格が下がれば利益を得ることが出来ます。自然エネルギーの開発プロジェクトなど、現価格下落により損失が想定される場合など使い道が考えられます。

特徴の第2としてドル建ての原油価格に対して為替ヘッジをかけていること。原油価格の上昇ではなく、円安(ドル高)のため原油の輸入価格が上昇した場合は、利益は発生しません。さらに日本円とアメリカドルの金利差によりヘッジのコストが変動すれば、収益に影響します。

③ WTI原油先物連動型上場投信
特徴として為替ヘッジをかけていない、WTI原油先物の生の姿に近い。原油先物はアメリカドル建てですので、日本円に換算したときのドルと円の為替相場も収益に影響します。原油の日本への輸入価格の動きに近いものとなることが期待されます。

ETF特有の注意点

次にETFですのでETF特有の注意点が必要です。

注意点として、今後の市場での取引頻度があります。日常的に取引されないようであれば、相手方が少ないということで不利な価格での売買を余儀なくされることもあります。もっとも逆に相手方にとっては有利な価格での売買もありうるということですが。取引所での毎日の売買動向を確認しておくことが必要です。

次に、この商品はロングポジションのみですが、信用取引を活用すればショートポジションを組むことも可能でしょう。ただし信用取引の開始のためには証券会社の事前審査が必要です。

以上の3つの商品、一口に原油先物投信といっても商品内容はかなり違います。信託報酬などの手数料とともに、通貨のヘッジの有無、ロング・ショートのポジションなど。


投資目的を原油価格上昇に対する防衛、あるいは運用商品の多角化によるリスク分散の一環とすることが理想的です。
このような商品に対する投資は、株式投資とのリスク分散効果は高いと考えられますが、昨年来の金融危機に対してはそのような常識も当てはまるものではありません。

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