【 2009年 第 1 回 】ライフプランを考える ~女性の生き方・働き方と社会保険~社会保険
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒プロフィール
パートで経理事務
末の子どもが小学校3年生になったのを機会に、冬子さんは再び働くようになりました。会社の経理事務で、1日5時間のパートです。
もともと出産までは経理の仕事をしていた冬子さん。自分の経験を生かせる仕事がみつかったのです。会社は忙しく、また冬子さんの働きぶりも評価されて、「すぐに正社員というわけにはいかないが、もう少し長い時間で契約したい」という話がありました。
冬子さんは願ってもないことだと思いましたが、パートで働く先輩に言われました。
「これ以上働くとダンナの扶養からはずれて、健康保険も年金も自分で払うことになるのよ。それでも損しないだけの給料はもらえるの?」
そう言われた冬子さんは調べてみました。給料が11~12万円だとすると、健康保険料や厚生年金保険料も13000円ほど。その他、所得税や住民税も増えます。サラリーマンの妻として、扶養家族になっていれば、健康保険料も国民年金保険料も自己負担はゼロです。
130万円の壁
「なるほど負担は増えるわね。今より手取りが減るかもしれない」と感じた冬子さんは「130万円の壁」という話を思い出しました。「収入が130万円未満であれば扶養のままでいいのかな? 収入を調整すればいいのかな?」と思って、冬子さんはまた調べてみました。
確かに収入が130万円未満であれば、健康保険の扶養家族にも国民年金の第3号被保険者にもなれます。
しかし、1日の労働時間や1ヵ月の労働日数が正社員のおおむね4分の3となれば、パートタイマーであっても、自ら社会保険に加入しなければならないのです。ですから、正社員と同様に週に5日働いている冬子さんの場合、1日の労働時間が6時間以上となれば、収入にかかわらず、社会保険に加入しなければなりません。
「メリットもあるわ。年金は増えるのよね」と冬子さん。厚生年金に加入すると、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金という上乗せ年金がもらえます。つまり、自分で2階建ての年金という家を建てることなのです。
自分が輝いて生きる選択
その夜、家族と話しました。「今後、パートタイマーも厚生年金加入しなければならないという話もあるし、この機会に働くのもいいよ」と夫が言います。月収98000円以上の人、勤続期間1年以上の人、従業員300人超の企業という条件付きですが、厚生年金への加入をパートタイマーにも拡大するという案もあります。
「うちのおふくろは年金が少ないとなげいているよ。年金は多い方がいいよ」と言うのは夫です。
子どもたちも言います。「仕事を始めてから、お母さんは元気になったね」「僕たちも叱られなくなったよ」
冬子さんは思いました。「目の前の損得はあるかもしれない、でも、私自身がもっと輝いて生きていけるような選択をしよう」と。
「お母さんがしっかり働けるようにみんなで家の仕事を分担しよう」という夫の後押しに、冬子さんはほろっとなりました。
どのような選択をするのか、自分の生き方・考え方しだい。冬子さんのような選択もあるのです。
選択するにあたっては、社会保険や税金のしくみも確認しておきましょう。
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