【 2009年 第 8 回 】古典を読む(競争の戦略) 長期的視点
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
経営書「競争の戦略」
「競争の戦略」は、企業が属している業界において長期的にみてベストな競争位置を確保するために検討しなければならないことを詳細に説明した経営書になります。
内容は、
Ⅰ 競争戦略のための分析技法
Ⅱ 業界環境のタイプ別競争戦略
Ⅲ 戦略デシジョンのタイプ
と大きく3つのパートに分かれています。
通しで一回全ページを読み、次に「Ⅰ 競争戦略のための分析技法」を再読し、Iの中の「第一章 業界分析法」を再再読して、「競争の戦略」について、ぼんやりとしたイメージを持ったところで1ヶ月が過ぎ、コラムの締め切り時期になってしまいました。
新興国のボリューム・ゾーン向け商品の開発・販売
7月は日本企業の4-6月期に決算時期にあたり、4-6月期の業績や今後の経営戦略についての発表が新聞やテレビなどで報道されていました。その中で、ある企業から新興国のボリューム・ゾーン向けに商品を開発・販売していくと言った発表がありました。
ボリューム・ゾーンとは、09年版ものづくり白書によると、中間層は世帯の年間可処分所得が5000ドル以上、3万5000ドル未満と定義されています。
BRIC‘s(ブラジル、ロシア、インド、中国)で急激に増加中、02年からの5年間で約2.5倍の6億3000万人と日本の人口の5倍のボリュームになっています。
この層に、販売するには先進国向けの高品質高付加価値で高額な商品ではなく、機能を絞って価格を抑えた商品の開発が必要なようです。
機能を絞って価格を抑えた商品?
「ネットPC」のことが頭に浮かびました。当初、「ネットPC」は新興国向けに開発された商品だと聞いたことがあります。今は、日本を含めた先進国のノートPCの販売台数でかなりのシェアを占めています。
「高機能高付加価値商品」と「ボリューム・ゾーン向けの商品」の住み分けの行方
今後、ボリューム・ゾーン向けに開発される商品も、「ネットPC」のように先進国のスマートな消費者に支持され、購入される商品が出てくる可能性は大きいと思います。
その時、「高機能高付加価値商品」と「ボリューム・ゾーン向けの商品」の住み分けがどうなるのか、興味があります。
また、ボリューム・ゾーン向け商品は、販売価格を抑えるために製造コストを抑える必要があり、アセンブリー(最終組み立て)は人件費の安いところで、集中して行う必要が出てくるでしょう。国内の組み立てラインの雇用が心配です。
主要な買い手が欧米から新興国のボリューム・ゾーンに急激に変化していく中で、日本企業が、今後どのような戦略で、「長期的にみてベストな競争位置を確保」していくのか、今後のニュースを丹念に追っていきたいと思います。
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