【2013年 第5回 年上妻の悩み その1 ~不妊治療をいつまで続けよう?~】
歳の差カップルのライフプランニング
川崎 由華⇒プロフィール
まだまだ新婚のニオイがする、妻が年上の年の差婚夫婦にお話を伺うと、「子どもが欲しいけどまだできなくて…」という不妊治療の悩みや、「育児と仕事の両立が難しい…」とこれまでのキャリアウーマンから一変して専業主婦になろうかという迷いを口にされます。女性にとって、この悩みや迷いを抱えている方は多いでしょう。
第5回、第6回の2回に分けて、妻が年上の年の差夫婦に向けて、FPとしてお金の面からアドバイスをお伝えしたいと思います。
~ケース1~
ご主人が28歳、奥様が38歳という結婚して2年、共働きのAさん夫婦は、今後のライフプランを考えたいと思っています。
結婚が遅かった奥様は、自分の身体に不安もあり、念のために産婦人科に行ってみたところ、妊娠できにくい体質と分かりました。夫婦で話し合い、不妊治療をすることにしました。
子どもが欲しい反面、不妊治療にはますますお金がかかりそうで、不妊治療を続けるべきかどうか悩んでいます。
不妊は、必ずしも女性の年齢が高いだけが理由でもなく、妻が年上の年の差夫婦だけの悩みだけでもないでしょう。しかし、医学的にも年齢と妊娠には密接な関係があると言われており、晩婚化が進んでいることと、不妊治療を受ける患者数が増えていることは、無関係でないのも事実です。
最近は、芸能人も包み隠さず話すようになりつつあり、以前に比べ情報やネットワークも身近になった不妊治療ですが、費用に関しては、治療の段階を踏めば踏むほど、一般的な家庭には負担が大きい現状に変わりはありません。
この背景には、体外受精や顕微授精などの治療は、まだ有効性が高いと言い難いため保険適用が認められず、このような保険適用外の診療を受けた場合はそれに伴って受けた保険診療も健康保険制度が使えず、全額自己負担扱いになる医療制度にあります。
そこで、経済的な負担を軽減するために、特定不妊治療費助成事業として体外受精や顕微授精の治療を行う方に対し、1年度あたり1回最大15万円(年2回まで、通算5年)の助成金が、自治体から支給されるようになっています。
しかし、夫婦合算で730万円という所得制限があり、誰もが受けることができるものではありません。
この助成に対し、39歳という年齢制限を設ける見直しも検討されています。
不妊治療とお金には、このような現状があり、Aさん夫婦のように不妊治療を進めていく段階でふと不安になる方もいれば、不妊治療費で家計が圧迫してしまい、ご実家のご両親に負担いただいているという方、貯蓄がなくなり不妊治療用のローンの借り入れを検討しているという方のご相談を受けたこともあります。
不妊治療をしている夫婦がライフプランを立てるにあたり、不妊治療は終わりが読めないことが、最大のネックになるのかもしれません。
Aさん夫婦の場合、10歳年下のご主人の給料では不妊治療費はまかなえていません。奥さんが働いているからこそ、これまでの不妊治療費は支払えてきたし、今後高額な治療になれば預貯金を崩していくことになります。
逆に言えば、不妊治療のために奥さんが仕事を辞めてしまった後で子どもができた場合、若いご主人の今の給料では奥様と子どもを支えることが厳しい状況だということです。妊娠することで不妊治療の終わりを迎えられたとしても、これから子どもにかかってくるお金は不妊治療以上です。
もし一旦退職し、子育てが少し落ち着いた頃に再就職と思った時に、奥様は40歳を超え、すんなりこれまでのキャリアを活かした職場を見つけられるとは限らないという懸念もあります。
そこで、自宅での勤務を容認してもらうなど、不妊治療に通いやすい環境の職場に一時期だけでも替えてもらい、仕事は辞めずに済むようにすること、そして万が一の場合にそなえ、預貯金のうち半年分の生活費相当額には手をつけないで不妊治療をしていくことが、Aさん夫婦への提案です。
お金の問題で終わりを決めておくという考えをもつことも必要でしょう。
その際には、今後の長い人生において、何に対して重きを置くかを、ご夫婦で話し合うことがなにより大切です。例えば、マイホームは絶対欲しいとか、二人の趣味の旅行だけは止めたくないとか、夫婦で願う夢があり、夫婦円満の秘訣があるはずです。
不妊治療でそのためのお金までを失ってしまうことのないようにプランを立てることが、お金の面から言えるアドバイスの一つです。
この記事へのコメントはありません。