年上妻の悩み その2 ~出産を機に退職すべき?~【2013年 第6回】

【2013年 第6回年上妻の悩み その2 ~出産を機に退職すべき?~】
歳の差カップルのライフプランニング

川崎 由華⇒プロフィール

まだまだ新婚のニオイがする、妻が年上の年の差婚夫婦にお話を伺うと、「子どもが欲しいけどまだできなくて…」という不妊治療の悩みや、「育児と仕事の両立が難しい…」とこれまでのキャリアウーマンから一変して専業主婦になろうかという迷いを口にされます。女性にとって、この悩みや迷いを抱えている方は多いでしょう。
第5回、第6回の2回に分けて、妻が年上の年の差夫婦に向けて、FPとしてお金の面からアドバイスをお伝えしたいと思います。

 

 

 

 

 

~ケース2~

 

Bさん夫婦は、ご主人が25歳、奥様が33歳の同じ会社に勤める新婚夫婦です。

奥様は妊娠中。

ご主人よりも給料が高い奥様ですが、仕事と育児の両立ができるか不安もあり、出産前に思い切って10年以上働いてきた会社を辞めようか悩んでいます。

 

Bさんの場合、子どもに一番教育費がかかる17歳から22歳の頃は夫が42歳から47歳と、一番仕事にも脂がのって収入面に期待できる時期であり、その後に老後資金を貯蓄していく余裕も持てるかもしれません。

しかし、終身雇用や年齢給による収入アップが保障されているわけではない時代ですから、夫の収入だけを頼りにして将来設計することは、不安要素も含んでいるといえるでしょう。

 

仕事と続けるかどうかの選択に迷うならば、参考の一つとして、出産、産休、育休に伴う社会保険制度を知り、健康保険や雇用保険から支給されるお金を把握してみましょう。

これらの詳細については、菅野美和子さんのコラム「働くママを応援」「働くママをもっと応援!」で解説してくださっていますので、ここで是非参考にご一読ください。

 

キャリアウーマンとして働いてきた女性が退職するときに「もったいない」とよく言われるのは、能力のある人材としての「もったいない」という意味が大半でしょう。しかし私は、これまで保険料を納めてきた社会保険制度を利用しないことに「もったいない」とも感じます。

 

現在働きながら給与から天引きされている健康保険や雇用保険の保険料は、このような制度を支え、活かされています。

Bさんがもし退職しないならば、社会保険制度により産休および育休中は子どもとの時間を過ごしながら「出産手当金」と「育児休業給付金」は受け取ることができ、その期間の社会保険料は免除になるのです。

 

出産、育児に関する社会保険制度は、所得制限も、支給にあたり厳しい条件もなく、他の制度に比べ恵まれていると思います。これは、国として、少子化対策だけでなく、女性が働き続けられる社会をつくろうという姿勢の一つでもあるでしょう。

 

出産、育児の社会保険制度を知った次に、退職する場合と、育休を取って就業継続する場合の両パターンにおいての、未来のお金シミュレーションをしてみるといいでしょう。

収入面でどのくらいの差が生じてくるのか、漠然とではなく数字として把握してみることが大事です。

 

こちらは、33歳で出産し、育児休業を取得して就業継続した場合と、出産を機に退職して子どもが6歳になった時にパートにて再就職した場合の賃金カーブを示したグラフです(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータを基に内閣府が作成した平成17年度版「国民生活白書」を参考に、執筆者が再計算し、グラフ作成しました)。育児休業は一年間取得とし、パート時の賃金は「賃金構造基本統計調査」の20~40代の女性パートタイム労働者平均賃金より120万円で固定しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらの2パターンを比較してみると、収入の差は歴然です。Bさんの働き方の違いにより、年収の差が開くうえ、60歳時の退職金も含めると、生涯賃金の差は約1億9,000万円にもなります。さらにここに、老後にもらえる厚生年金額の差が加わります。

 

またグラフを見ると、子どもが6歳(小学生)になってから仕事に就ける人生期間が長いこと、仕事を続けながら第二子を産むチャンスが持てることにも、改めて気づかされるでしょう。子育てに時間を費やす時期は、人生のうちのわずかです。

 

FPとしてお金の面からBさんにアドバイスをするならば、ご主人やご両親の理解と協力のもと、育児休業を取得して夫婦共働きを続けることで、一生涯の収入を安定させるとともに、社会保険制度をフル活用していくことを提案します。

 

しかし、産休・育休を取って就業継続するか、出産前に退職するかという、女性にとって大きな選択は、もちろんお金の問題だけでは決断できることではないでしょう。サポートしてくれる家族、子供を預かってくれる保育園、職場環境、そして何より自身の母性の問題もあると思います。

今現在の一点だけで判断せず、長期的な視点でライフプランを考え、家族での話し合いをされてくださいね。

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