【 2010年 第 2 回 】賢い消費者になるために② - 知っておきたい契約のキホン ~消費者力をアップしよう
福島 久美子(フクシマ クミコ)⇒プロフィール
契約は口約束でも成り立つ
「契約」というと、契約書があってお互いが署名してハンコを押して・・という非日常的なものというイメージがありますが、実は毎日の生活の中にはさまざまな約束ごと=契約行為があふれています。
たとえばコンビニでお茶を買うとき。
これを下さいとお茶をレジに出せば、それが契約の「申込」になり、店員がかしこまりましたと言えば申込を「承諾」したことになります。
「申込」と「承諾」というお互いの意思表示が合致すれば、これで契約の成立です。
契約が成立すると、買い手はお金を払わなくてはなりませんし、店はお茶を引き渡さなくてはいけません。
電車に乗るために切符を買うのも、洋服を買うのも、カフェでお茶を注文するのもみんな契約行為。それと意識することなく毎日いくつもの小さな契約行為を繰り返しているわけですが、いちいち契約書を作っていたら大変ですから契約は原則、口約束で成り立ちます。
契約を成立させるのに、契約書を交わしてハンコを押すという行為が必ず必要というわけではありません。契約書は、約束ごとをよりはっきりさせ後々のトラブルを防ぐ必要が高い場合や、契約書が必要と決められている場合などに交わされます。
契約すると、責任が発生する
あなたがお茶の代金を払わなかった場合、店員があなたから財布を奪いとって強引に代金をとるという実力行使はできませんが、店が裁判所に訴えて強制的な支払いを要求することができます。
たとえお茶1本の売り買いであっても、契約すれば、必ず法的な責任をとらなければいけないわけです。
契約は原則として取り消せません。一旦成立した契約が安易に取り消されてしまっては、取り消される相手の立場が不安定になってしまうからです。ひいては、社会の秩序も保たれなくなってしまいます。
では、一旦契約したものが絶対かというと、そうでない場合もあります。
法的効力のない契約もある
ちょっとしたクイズです。次の中で、無効となる契約はどれでしょうか?
1. タイムマシンで昔に連れて行ってくれたら100万円あげる
2. 友人にタダでDVDを貸す
3. 盗みをしないという約束を守れば、100万円あげる
正解は、1.と3.です。
1.は、実現すること自体が不可能なので無効
2.は、タダでも、物を貸し借りする契約は有効
3.は、盗みをしないという、契約の有無と関係なく、当たり前に守らなければいけないことにほうびを与えるということは正義の観念に反し、無効
無効な契約は、そもそも効力がないので約束違反を責められることはありません。
取り消せる契約もある
一旦は成立してしまった契約でも、例外的に取り消せることがあります。
その例として、
・ 未成年者(20歳未満で未婚)が親の同意なしに契約した場合*
・ だまされたり(詐欺)・脅されたり(強迫)して契約した場合
*未成年者の場合、こづかいの範囲内で買い物をしたり、身分証明書を偽造したりして大人と思わせるような言動を積極的にとり契約した場合などは取り消すことができません。
その他、詳しくは別の回でお話しますがクーリング・オフという特別な取消制度もあります。
口約束でも契約は成立し、一旦成立した契約は原則取り消せません。
・ 守れないことは約束しない
・ 約束したことはきちんと守る
この基本ルールを心に留め、「口頭であっても約束は慎重にする」を心がけるだけで契約にまつわるトラブルはグッと減らせるはずです。
次回は、悪質商法についてのお話です。
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