【 2010年 第 11 回 】賃貸住宅 退去時のお金のトラブル ~消費者力をアップしよう
福島 久美子(フクシマ クミコ)⇒プロフィール
賃貸住宅で起こりやすいトラブルの1つに、退去時の敷金返還の問題があります。
「敷金が1円も戻ってこなかった」とか、「敷金では足りないからと、追加の修繕費まで請求された」、あるいは極端なケースでは、「敷金なんていうのは普通は戻ってこないものだ!」などと大家さん(不動産会社)から凄まれたり・・。
そもそも敷金って何?
家を借りるとき、請求されるままによくわからずに敷金を払ってしまう方も少なくないと思いますが、敷金とは何なのかをしっかり理解した上で払わないと退去時にトラブルになってしまいます。
敷金とは、契約時に入居者が大家さんに支払うお金のことで、入居者が家賃を滞納したり、わざとあるいはうっかり不注意で部屋を汚したり壊してしまい大家さんが損害を被った場合に備え、その費用に充てられるよう敷金と言う名目で預かっておくものです。
予期せぬ損害(=借主の債務)から大家さんを守る担保の性質を持つものと言えますが、大家さん側ではあくまで預かっておくだけのお金なので、不測の損害がない場合には入居者に全額返さなくてはならないのが原則です。
敷金とは、大家さんのものではなく入居者のものであり、入居者に落ち度がなければ当然に返還されるべきものなのです。
それなら、入居者のほうから、「今月の家賃は敷金から充てといて!」と大家さんに請求することもできるの?と考える人がいるかもしれませんが、それはできないことになっています。
退去時の原状回復をめぐるトラブル
「畳が変色して取り替えないといけない」とか「冷蔵庫の裏の壁が黒ずんだ」などと言って敷金から修繕費を差し引くと言われても、必ずしも借主が払う必要はありません。
借りたお部屋は退去時には「原状回復」して返す義務があるとされていますが、「原状回復」とは完全に入居前の状態に戻さなければならないという意味ではないからです。
契約書に記載されている内容を確認してみる必要はありますが、普通に使っていて自然に生じた損耗までも入居者が元通りにする義務はなく、それらは通常は大家さんが負担すべきとするのが一般的な考え方です。そしてその費用は家賃に含まれていると解されています。
「原状回復」として借主の負担義務があると考えられているのは、たとえば台所のひどい油汚れを放っておいたとか、飼っているペットが柱にキズをつけてしまったなど、入居者の管理が悪いために発生・拡大したものや通常の使用によるとはいえないものに対してだけです。
どこまでが借主負担で、どこからが貸主負担になるかの基準については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」も参考にしてみて下さい。
原状回復については大家さん側の認識があいまいな場合もあり、それゆえにトラブルとなることも多いので、正しい知識をもち正当な権利として敷金返還を求めましょう。言われるまま、納得できないまま引き下がることはありません。
余談ですが、敷金がちゃんと戻ってくるか心配だからと言って、敷金を返してもらうまでこの部屋は明渡さない!というのは認められませんのでご注意下さい。敷金返還を請求する権利は、借りた部屋を明け渡した後に初めて発生するものだからです。
トラブルに巻き込まれないため
トラブルに巻き込まれないためには、賃貸借契約を結ぶ前に原状回復について契約書の記載内容を確認し、入居前に物件をよく見てキズや汚れなど気になるところは写真や書面で残しておいたり、退去時の物件引渡し時には立ち会って確認するとよいでしょう。借りたお部屋はきれいに使って返すこと、入居中は大家さんとの関係を良好にしておくことも大切だと思います。
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