【 2010年 第 1 回】後悔しない住宅ローンの選び方①―住宅取得者のローン情報源 家計コラム
福田 英二(フクダ エイジ)
住宅金融支援機構が発表する調査や関連データの一つに「民間住宅ローン利用者の実態調査」がある。年3回実施、直近調査は平成21年度第2回調査(H21年12月24日)である。平成21年7月から同年12月までの居住用新規民間住宅ローン利用者1202人を調査対象にしている。
利用した住宅ローンを知るきっかけの媒体
調査では、利用した住宅ローンを知るきっかけとして影響が大きかった媒体(以下、認知媒体)を尋ねている(複数回答可として調査)。
認知媒体のトップは、住宅・販売事業者の43.5%。次いでインターネット22.6%、金融機関15.2%、クチコミ13.2%、モデルルーム・住宅展示場が12.1%と続く。以下、住宅情報誌、折込チラシ、勤務先、新聞記事があり、フィナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザーなどの専門家が5.3%で10番目である(媒体数は19項目列挙)。
インターネット、住宅情報誌、折込チラシ、新聞記事といった住宅ローン利用者が主体的に情報収集を図ろうとする場合のネットや紙媒体が見られる一方で、販売事業者、金融機関、クチコミ、勤務先、フィナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザーといった目的遂行上身近に存在する人(機関)媒体に頼る姿が窺える。
利用した住宅ローン決定に影響が大きかった媒体
利用した住宅ローン決定に際して影響が大きかった媒体(以下、決定媒体)についても尋ねている。そのトップは、住宅・販売事業者の40.4%であり、認知媒体でのトップと同様大いに頼りにしている(別の見方をすると、求める住まいをモノとしては見ているが、カネの問題としては考えていない)。次は金融機関の14.0%、インターネット13.8%と続く。以下は、クチコミ、モデルルーム・住宅展示場、勤務先と続き、フィナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザーなどの専門家が7番目である。
認知媒体・決定媒体とも影響が最大は住宅・販売業者だったというのは、この調査結果で毎回みられること。つまり住宅購入者は、物件を決める先でローンの相談も行っているという実態が見て取れる。したがって、住宅ローンは住宅・販売事業者が勧める住宅ローンを選択する確率が高くなるという姿である。
私は、この統計を落ち率(筆者の仮称)という見方で捉えている(算式=1ー分子:認知媒体/分母:決定媒体。統計は、複数回答可としているので、同一項目回答者が必ずしも同一とは言い切れないが、調査趣旨から推測して、両媒体の回答者は重複している可能性が高いと推定。この前提で、落ち率を見るとおもしろい。
落ち率が低い(すなわち、認知媒体と決定媒体の回答占率の差が小さい)のは、トップが住宅・販売事業者の7.1%で金融機関が7.9%で続く。3位はフィナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー当の専門家15.1%、4位勤務先27.2%である。
これらはいずれも人(機関)媒体である。住宅・販売事業者と金融機関は圧倒的に落ち率が低いのは、住宅購入を最も合目的に達成できるかを購入者が考えた表れ。ただこのことは住宅購入という人生最大の消費行動を、安易に(と言ったら言い過ぎだろうか)他人依存型行動で意思決定しているようでもあり懸念されるところでもある。
フィナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家が入った意義は大きい
この点落ち率3位にフィナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家が入った意義は、大きいと見たい。住宅購入者は、モノとしての住宅には大いに関心を示すが、購入の裏付けとなる住宅ローン問題には大して関心を示さない。しかし、専門家に相談した人はかなり専門家のアドバイスを受け入れてローン利用に至っていることを示している。
我々としては、この専門家媒体への依存度が高まるような努力を重ねていく必要がある。そのためには専門家一人ひとりが目先の利益だけを追求するのではなく、相談者の立場に立って親身に真摯にフェアなアドバイスを心がけ専門家からの情報は頼りになるとの評価がいただけるような文化形成を醸成していく心がけが肝要ではないか。常日頃そう思っている。
後悔しない住宅ローンの選び方の第2回は、「ローン選択の決め手・キーワードは低金利」を予定している。
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