2012年の経済の動き 【2013年 第1回】

【2013年 第1回 2012年の経済の動き 】投資に必要な経済の知識

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

ユーロに始まり、ユーロに終わったこの1年。ユーロ危機は収束したのか?そしてこれからの世界経済が抱える問題は?

2012年

2012年も終わろうとしています。今年の経済はユーロを中心に回っていたように感じます。と言ってもユーロが世界をリードしてきたわけではなく、足を引っ張ってきたということです。

事の発端はリーマン危機による各国財政の悪化とギリシャの財政のごまかしの発覚。国の規模に比べて金融のウェイトが大きかったアイルランド、もともと国の債務が大きかったイタリア、経済成長が遅れていたポルトガル、そして不動産投資の大きかったスペイン、これらの国の頭文字をとりPIIGSという有り難くない言われ方もしました。

グラフは今年の12月7日までの日本とアメリカの株価。日本は日経225、アメリカはニューヨークダウ工業株30種平均。(執筆者作成)

 

趨勢としては、日本は3月下旬にピークを迎え、それから急激に下落して、ボックス圏を繰り返しながらも11月中旬以降よりいくらか上向きになりつつあるという事でしょう。11月の上昇は円高の一服と衆議院解散および金融緩和期待によるところが大きいと思います。

 

一方、アメリカのピークは5月上旬。その後6月上旬を境に徐々に回復し、11月上旬を境に再び下落し低迷を続けているというところです。11月以降の低迷は、アメリカの大統領と議会選挙の結果により、いわゆる“財政の崖”の可能性が出てきたことへの危惧の現れでしょう。

 

今年の3月から5月にかけての株価の下落はギリシャ問題に端を発しています。ただアメリカに先駆けて日本が先にピークアウトしたのは亢進する円高が原因でしょうけども、5月6日のギリシャ議会選挙で反緊縮派の躍進により組閣が困難な情勢となりました。これはかなり大きなインパクトです。その後、6月17日の再選挙に穏健な反緊縮派を取り入れてどうにか組閣が成立しました。

 

このようなギリシャの混乱からの懸念がスペインにも波及。スペインの経済規模はギリシャとの比ではなく、EUは果たしてスペインを救済できるか、という危機感が市場に溢れていました。

 

転機となったのは9月6日、ECBが3年以下の南欧国債の無制限購入の決定

これにより、最悪の場合はユーロ解体、という懸念が後退していきました。しかし、これによってギリシャやスペインの財政が一気に好転したわけではなく、まだまだ懸念は残されています。すでに市場はスペインの支援要請を織り込んでいます。ただスペインは支援と引き換えの緊縮策、そして一部の独立志向の強い地方を抱えた状況では支援はためらいがちになっているようですが、市場はそれを許してくれるかどうか。市場との時間との競争になります。

 

一方、ギリシャは緊縮策もこれからが本番です。いまの弱い政権基盤のもとで、国民に痛みを伴う政策をどれだけ実行できるか、ギリシャはまだまだ予断を許す状況ではありません。

 

ここにきて、急遽イタリアの危惧が浮上しました。モンティ首相が辞意を表明し、そのとおり内閣交代ともなれば、PIIGSの優等生と言われている今の緊縮策を新政権が継続していくのかどうか。特にイタリアはスペインに比べて政府債務が大きいので、わずかな財政赤字の拡大も重大な影響が出る可能性が有ります。

 

このようなユーロの危機が、ヨーロッパ経済の悪化、そして欧州系銀行の撤退を通じて、新興国経済に重くのしかかりました。新興国は、決してそればかりではありませんが、対欧州への輸出減が成長率の低下の一要因として考えられます。このような悪条件の中でも中国はリーマン・ショック時の様な大胆な財政政策を控えています。他の新興国も、アメリカのQE3のことも有り、アメリカのお金が自国に流れ込むインフレの懸念もあるのだろうか、大胆な政策は難しいものがあります。

 

日本は新政権の政策は全く不透明ですが、日本の財政は世界が抱えている大きな時限爆弾のようなものです。拡張的な財政と消費税増税の延期、それと低成長が重なれば、いくら国内で国債が消化されているとはいっても、国内金融機関もいつまでも国債を持ち続けるわけにはいかなくなる可能性が有ります。次の世界経済危機を迎えないためにも、日本政府には賢明な政策を望みたいところです。

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