【 2010年 第 9 回】後悔しない住宅ローンの選び方⑨―変動金利型が大幅増加の意味すること 家計コラム
福田 英二(フクダ エイジ)
変動金利型はこうして勧められている
21年度の住宅ローン金利タイプ別新規貸出で最も多かったのは、変動金利型の48.7%、固定期間選択型10年固定の34.1%がこれに次いでいる。全期間固定型は僅かに1.6%であった。
これを調査実施機関である住宅金融支援機構のウェブサイト上に掲載の18年度の調査を時系列で見ると、変動金利型は逐次増加。21年度では全体の5割弱の水準にまで引き上がってきている。10年固定の期間選択型は、20年度の40.0%をピークに今回調査では一転34.1%と低下している(金融機関側の勧めたい金利が変化したことを窺わせた)。
全期間固定金利型は、水準的には一桁台とそもそも少ないが、18年度には8.4%だったものが逐次減少してきており、21年度では1.6%まで落ち込んでいる。
これを残高ベースで見ると、変動金利型は、18年度29.0%であったものが漸増、21年度には41.2%にまでに増加した。10年固定の期間選択型は、直近では低下したものの増加トレンドが続いている。全期間固定型は、21年度では4.5%と18年度の6.4%水準を回復するに至っていない。
機構は、調査結果発表の中で変動金利型について「大幅に増加」と指摘している。なぜこれほどまでに増加したのだろうか?これを解き明かす調査を同機構は「民間住宅ローンン利用者の実態調査」で発表している(当コラムの第一回目で取り上げている)。
同調査の中に利用した住宅ローンを知るきっかけとして影響が大きかった媒体と、利用した住宅ローン決定に際して影響が大きかった媒体を聞いている項目がある。そのいずれものトップの定席は、「住宅・販売業者(営業マン、店頭、営業所など)」であり、2番目に「金融機関(店頭、相談コーナーなど)」である。
そのココロは、顧客に一番勧めやすい(売り易い)キーワードが最も明瞭に使えるからである。即ち、「金利が一番低いので、支払利息が少なく、したがって返済負担が楽ですよ」という常套セリフである。
先日、これをそのまま裏付ける現場に正しく遭遇した。営業マンと向き合った中古マンション購入予定者のAさんに、「1%を切る適用金利の低さ、全期間にわたる引き下げ幅の大きさ」を強調した営業マン。(金利が上がっても)1.25倍で止まるのでそんなに増えない。と(不十分な内容を)説明して盛んにAさんに勧めるのでした。
「ああ、変動金利型が多いのは、こうした現場の積み重ねの結果なのか」そう思ったものでした。前出の実態調査では商品特性や金利リスクへの理解度も聞いています。変動金利型を十分理解して借り入れた人は2割程度、ほぼ理解が半分弱もいるのですが、よく理解していないや全く理解しないで変動金利型を選択した人が4割程度と多いのが大変気掛りではあります。
因みに、この営業マン、新規供給面でも、中古市場面でも我が国を代表する業者の看板を背負った方が、です。
増える不安、増えない安心
足元は、超低金利時代。将来的には、もうこれ以上下がりようがない。国策的に(強制的にも)下げられる余地が殆どない)時代背景にあると見られます。逆に言えば、今後は、上昇は起こり得ても低下は考え難い時代と言えるのではないかと。
下表は、変動金利型と全期間固定型のモデル比較。変動金利型の最大の問題点は、増える不安を抱えているということであり、それがどの程度増えるのか全く不明だということです(増えないで横ばい状況はあり得なくないとは思いますが、これも全く不明なことです)。
全期間固定型の最大の訴求点は、増えない安心が明らかなことです。あなたならどちらをアドバイスしますか?
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