【 2010年 第 10 回 】水漏れ マンションの暮らしを快適に
福本 喜保(フクモト ヨシヤス)
水漏れの問題解決は難しい
ついうっかり水漏れしてしまった場合のように、居住者間の使用上の不注意によって生じたものであれば当事者間で解決することになります。しかし、コミュニケーションが上手くいかず上下間の感情がこじれると、なかなか解決できず裁判沙汰になることもあります。なお、水漏れが給排水管の欠陥、または老朽化によって起きた場合は、その設備の性質や欠陥箇所などにより判断が異なり、解決方法も異なってきます。
居住者の使用上の不注意による水漏れの場合
不注意による水漏れが起きるケースで多いパターンは、洗濯機の排水ホースが外れているのに気づかず防水パンから水があふれて下階に流れる場合、並びに洗面所のシンクに水を溜めるため給水の蛇口を開けぱっなして水が床面にあふれて下の部屋に垂れてしまう場合が主なケースです。
この場合は居住者間の話し合いでの解決方法となります。不注意によるものなので全面的に加害者が責任を負わなければなりません。被害の程度により対処の状況が変わってきます。被害者に対し、誠意ある対応をしますと綺麗な水での事故であれば被害が少なく掃除をするだけで済むこともあります。しかし、対応の仕方では感情的になり、不法行為に基づく損害賠償を請求されることになります。そのときは、個人賠償保険を付保しておくと保険で処理することができます。
給排水管から水漏れの場合
給排水管の欠陥、または老朽化によって起きた場合、上の階の居住者の専有部分とみるか共用部分であるかと判断することになります。
例えば、給排水管の枝管に穴が開いたため水漏れしたのであれば、その枝管のある住戸の区分所有者の責任になります。本管にその原因がある場合には、管理組合が責任を負うことが原則となります。給水管や排水管の場合、本管は共用部分、枝管は専有部分と解するのが一般的です。
しかし、実際には設備の欠陥が専有、共用のどちらかに該当するかを明らかにすることが、難しいケースがあります。水漏れ等の原因箇所は分かるけれども、管理規約上専有部分なのか共用部分なのか、あるいは原因箇所が分からない場合は共用部分であると推定することになります。(区分所有法上)
区分所有法の規定は瑕疵が共用部分にあると推定する規定ですから、特定の区分所有者の専有部分に瑕疵があることが反証されると、その特定の専有部分の区分所有者または占有者が責任を負うことになります。
しかし、もし設備の欠陥が明らかに売買契約上に基づく瑕疵と認められる場合は、マンションの売主の責任になります。
問題解決がスムーズにいかない場合
水漏れの原因を探るための他の住戸等への立ち入りを拒否するケースがあります。そうなると原因の追及が難しくなり、解決が長期化することになってしまいます。そのため区分所有法は、マンションの構造等を考慮し、相手方の住居等への立ち入り請求権を認めています。
区分所有者は、その専有部分または共用部分を保存し、または改良するため必要な範囲において、他の区分所有者の専有部分または自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができます。この場合、他の区分所有者が損害を受けた時は、賠償金を支払わなければなりません。しかし、相手方が専有部分の使用に関して応じない場合は、承諾に代わる判決を求め、判決が確定してからでないと使用できません。
マンションのように共同生活する場においては、お互いが協力し合うことが大切ですから、必要なときには立ち入りを認めることが問題を解決する早道といえます。
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