【2010年 第 4 回】 自社が評価されているかどうかを知るためのポイント 銀行との上手な付き合い方
樗木 裕伸(オオテキ ヒロノブ)
今月は、第4回目として「自社が評価されているかどうかを知るためのポイント」として融資条件の要素である「貸出期間」を紹介します。
貸出期間について
「貸出期間」の重要性については、意外に知られていないのではないかと思います。貸出期間をどのくらいにすべきかは、資金使途によって自ずと決まってくるというのが融資のセオリーです。しかしながら、そうなっていない借入金が存在する場合があります。そのような場合は、銀行のスタンスが変化しているという危険な兆候といえます。
つまり融資には、「セオリー」通りの貸出期間の融資(正常な融資)と「セオリー」を外れた貸出期間の融資(異常な融資)があります。
今回は、融資の「セオリー」について説明しましょう。
セオリーについて
融資の基本は、「資金使途」を明確にすることで、「返済原資」を確保することです。資金使途とは、何にお金を使うかということですが、銀行は、使ったお金が元手プラス利益のお金を生み出すかどうかを審査しているわけです。つまり返済原資は、利益の部分もしくは元手の部分の売却資金によって確保されることになります。
また、返済方法も上記の返済原資がどのように確保されるかで決まってきます。
例えば、建設業の会社がビルを建てる場合を考えてみましょう。
資材の仕入代金や職人さんへの賃金の支払いは、建設代金の受取に先立って支払われますので、つなぎ資金として借入を起こすことになります。けれども返済に充てる資金は、施主から建設代金を受け取るまで入ってきません。
したがって建設代金が入ってきたときに、一括返済することになります。返済期日も建設代金の入金予定日であり、貸出期間は融資実行日から返済期日までということになります。
次に、印刷会社が印刷機を購入する場合を考えてみましょう。
印刷機を購入するために設備資金として借入を起こします。印刷機を購入することで、仕事を請け負うことができ、利益を得ることができるようになります。けれどもすぐに印刷機の代金を支払える程の利益があがるわけではありません。
仕事を繰り返し受注することで利益が積み上がっていくわけです。この利益が積み上がっていくのにかかる期間が貸出期間となります。通常は、その印刷機の使用可能年数である耐用年数が期間となります。
なお、少しずつ利益が確保されていくわけですから、毎月もしくは3ヵ月毎に分割返済することになるわけです。
主な資金使途と貸出期間・返済方法
主な資金使途と貸出期間・返済方法をまとめると以下のようになります。
資金使途 返済期間 返済方法
運転資金※1 通常1年(原則継続) 期日一括返済(原則継続)
つなぎ融資 入金予定日まで 期日一括返済
決算賞与資金※2 半年 毎月返済
設備資金 設備の耐用年数 毎月・3ヵ月毎返済
※1・・・運転資金とは、販売用の商品の仕入代金や経費支払など事業を継続させるために必要な資金の総称です。特に、仕入債務(買掛金や支払手形勘定)などの先行する支払額と売上回収金(販売して入金された金額)との差額(資金不足額)は、事業を続けている限り必要となる運転資金として経常運転資金と呼ばれます。「経常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務」で求められます。この資金不足額は、商売が大きくなればなるほど大きくなるので、売上増加を理由とする資金使途の借入を「増加運転資金」と呼び、銀行は積極的に対応することになります。
※2・・・決算資金とは、法人税などの納税のための資金です。会計上利益が出ても必ずしも現金として残っているわけではありません。そこで借入を起こして支払うことになります。納税は、基本的に中間納税と決算期末納税と通常年2回ですので、返済期限は6ヶ月、毎月返済となります。賞与資金も同様の考え方となります。
今回は、貸出期間のセオリーについてご紹介しました。
貸出期間は、資金使途と返済原資によって決まることが理解いただけたでしょうか。融資の基本なのでしっかりおさえておいてください。
きっと融資の申込みの時に役立つと思います。
次回は、このセオリーから外れる例外的な取扱についてお送りしたいと思います。
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