【2010年 第4回 】60~70代女性のマネープラン 女性の投資
鈴木 暁子⇒ プロフィール
退職金支給時は貯蓄のピーク
教育資金や住宅ローンの負担で厳しかった家計管理にもようやく目途が立ち、ご主人の退職金も支給され、貯蓄額はグンを増えることでしょう。この退職金支給時が、おそらく人生で貯蓄のピークといえます。
通帳残高のケタが違うと、「このまま放っておいてはいけない。何か運用しないと」という気持ちになる方がほとんどです(実際にこう言ってご相談に来られる人も少なくありません)。確かに普通預金に1千万円単位のお金を置いておくのは、いくら何でももったいない。でもちょっと待って!
今後お金を使う可能性を考えて
収入が年金だけになると、当然毎年の収支状況は赤字となり、今後は貯蓄を取り崩して生活していくことになります。つまりその分は絶対に減らしてはいけないお金。では他にどのようなことにお金を使う可能性がありますか?
現在の住居に住み続けるとしても、建て替えや修理、リフォームが必要ですし、住み替えを検討する人もいるでしょう。その分のお金も比較的早く支出するお金。また、もし病気や介護状態になった時、その費用も準備しておかなければなりません。こうして考えていくと、「分けてとっておくお金」が意外と多いことに改めて気づかされませんか?
このように、必要となるお金を別枠で確保した上で残った余裕資金が、運用に回しても良い分ということはおわかりいただけましたか?退職金をもらった途端に「運用したい」などと言おうものなら、金融機関の恰好の餌食となってしまいます。ちょっとした小金持ちになってもしっかりとセカンドライフを見据える冷静さを忘れずに。
減らさない運用を
では、運用に回しても良い分についてはどのように考えればよいでしょう?
最初にも述べたように、この世代の主な収入は年金。給与所得のあるうちは、多少運用がうまくいかなくても資金や時間を投入することができますが、この世代はそれができません。したがって、リスクを負う運用はもはや避けるべきです。
そのような意味からも「増やす運用」ではなく「減らさない運用」を心がけましょう。当然目標の運用利回りはそれほど高く設定する必要はありません。3%程度でも、貯蓄を取り崩すペースはずいぶん遅くなるものです。
相続も考慮に入れて
また、これは運用自体の話ではありませんが、この世代はそろそろ相続も考慮に入れた資産の持ち方を検討しましょう。たとえば現金で持っているよりは生命保険にしておけば、「生命保険金控除」として500万円×相続人数分の金額まで控除することができるので、その分税金を払う必要がありません。
子どものいない夫婦の場合は、兄弟姉妹も相続人となりますが遺留分はないので、配偶者のみに相続させたいのであれば、ご主人と相談して遺言によりその旨意思表示をしてもらうことも必要でしょう。
安全度が高めの運用をすることで、収益は多く望めませんが、逆にいろいろな制度を使って、できるだけ資産の正味を残せるような持ち方にシフトするのはとても重要なことで、この世代ならではのポイントです。
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