自営業者の資産形成 国民年金基金 【2016年 第2回】

【2016年 第2回 自営業者の資産形成 国民年金基金】資産形成と万一に場合に備えて 知っておきたい公的な制度

 恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール

 

国民年金基金は、受け取れる年金額が確定している任意加入の公的な年金制度です。
支払った掛け金の全額が社会保険料控除の対象となり所得税や住民税の税負担を軽減できる点が大きなメリットです。

 

 

 

はじめに

国民年金基金は、自営業者等国民年金の第1号被保険者が加入することができる公的な年金制度になります。
自営業者等にとっての国民年金基金は、サラリーマンの年金の2階部分である厚生年金に相当します。

以下、国民年金基金の仕組みやメリット、注意点についてみていきます。

 

国民年金基金の仕組み

国民年金基金は、国民年金(老齢基礎年金)のような相互扶助方式(現在の保険料から年金を支払う方式)ではなく、自分の掛け金を積み立てる「積み立て型年金」になります。

ですから、加入時の口数とタイプの組み合わせにより、将来受け取れる年金額と掛け金が決定します。掛け金は68,000円(月額)が上限となり、以下のタイプから選択していきます。

 

選択する口数のタイプは、1口目と2口目以降で異なります。

1口目は、終身年金の2つのタイプから選択します。

・A型(65歳支給開始/15年間保証付)

・B型(65歳支給開始/保証期間なし)

 

2口目以降は、上記の終身年金のA型、B型以外に、以下の確定年金の5タイプからも選択できます。

・Ⅰ型 65~80歳支給(15年間保証付)

・Ⅱ型 65~75歳支給(10年間保証付)

・Ⅲ型 60~75歳支給(15年間保証付)

・Ⅳ型 60~70歳支給(10年間保証付)

・Ⅴ型 60~65歳支給( 5年間保証付)

*加入時年齢が50歳1月以上の方は、Ⅳ型、Ⅴ型を選択できません。

 

1口目のA型、B型は、一度選択してしまうと途中変更ができません。慎重な選択が必要です。
A型、B型の掛け金を比較しますと、年齢により差はありますが、概ね月額1,000円前後の違いです。
この金額差からみると、保証期間付のA型を選択する方が万一の場合の備えとして、よろしいかと考えます。

 

2口目以降は確定年金の選択もできます。
ただし、確定年金の年金額は、1口目を含めた終身年金の年金額を超えてはいけないというルールがあります。
また、2口目以降は、途中で口数を増やしたり減らしたりすることができます。

 

受取る年金額は、加入時の年齢により設定されます。

1口目は35歳、45歳、50歳、60歳、2口目以降は35歳、50歳、60歳を境に加入時の年齢に応じて年金額が変わります。

 

国民年金基金加入のメリット

国民年金基金加入のメリットは税制面にあります。

支払った掛け金については全額、社会保険料控除の対象になり、所得税や住民税が軽減できる点がメリットです。
また、年金受け取り時には、公的年金控除が適用されますので、民間の個人年金保険に比べ所得税や住民税を軽減できるメリットがあります。

 

国民年金基金の注意点

国民年金基金の予定利率は、加入時に設定されたものが年金受取時まで変更されません。

予定利率は、2014年に1.75%から1.50%へ変更されました。
予定利率が下がりますと、同額の年金を受取るために必要な掛け金が増額になります。

 

現在(2016年3月23日)の国債の利回りが20年債0.347%、30年債0.459%から比べると、予定利率が下がったとはいえ、かなり高い水準です。

ただし、老齢年金のように物価等により年金額がスライドすることがないため、日銀が目指している2%の物価上昇が達成された場合には、物価の上昇率に予定利率が負けてしまうことになります。

 

また、一度加入しますと、途中での脱退や中途解約することができないことも、注意点の1つとして押さえておきましょう。

 

まとめ

国民年金基金は、掛け金や受取る年金に対する税制上の優遇措置は魅力的ですが、インフレに弱いという点を、しっかりと押さえて加入や掛け金など検討しましょう。

 

また、前回取り上げました、確定拠出型年金との併用も可能(両方合わせて月額限度額68,000円)です。
国民年金基金で確定した年金額の確保し、確定拠出年金を活用してインフレに備えるのも一案です。

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