金投資の基礎知識【2010年 第12回】

【2010年 第12回】金投資の基礎知識 金投資

三次 理加 ⇒プロフィール

「金投資の基礎知識」最終回となる今回は、金投資に関する税金について紹介します。

同じ金への投資であっても、金現物取引、金ETF、金先物取引と、投資手法によって税制が異なります。なお、以下に紹介するのは、いずれも個人への課税についてです。

 

○金現物取引の投資

金現物取引における売買損益は、譲渡所得として総合課税の対象となります(事業または営利を目的とした純金積立の継続的な売買を除く)

譲渡所得は、保有期間により計算方法が異なります。保有期間が5年以内の場合には、短期譲渡所得となります。所得額は「売買益-必要経費-特別控除額」で計算します。一方、保有期間が5年超の場合は、長期譲渡所得となります。所得額は、短期と同様に計算した金額を2分の1することによって算出します。

特別控除額は、短期・長期合計で最高50万円です。控除の順序は、先に短期、残りを長期から差し引きます。

短期譲渡所得(保有期間5年以内):収入金額-必要経費-特別控除額
長期譲渡所得(保有期間5年超) :(収入金額-必要経費-特別控除額)÷2

○金ETFへの投資

金ETFの売買損益並びに分配金に対する課税は、上場株式と同様です(外国投資法人債券を除く)。原則として、譲渡益は「譲渡所得」として「申告分離課税」により課税されます。税率は20%※注(所得税15%および地方税5%)です。

また、原則として、分配金は「配当所得」として20%※注(所得税15%および地方税5%)の税率により源泉徴収されます。ただし、確定申告を行うことにより、総合課税(配当控除の適用なし)や申告分離課税を選択することができます。

なお、譲渡損失となった場合には、他の上場株式等の譲渡益および上場株式等の配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る)との損益通算が可能です。さらに、3年間、繰越控除の対象とすることができます。いずれも確定申告することが要件となります。
注:平成23年分までは、10%((所得税7%、住民税3%)の軽減税率が適用される。

○金先物取引への投資

国内における商品先物取引の売買損益は、個人の場合「雑所得」として「申告分離課税」により課税されます。

税額の計算方法は、まず、1月から12月までに差金決済した売買損益を計算します。次に、算出された金額から、委託手数料と委託手数料に係る消費税等、取引に要した必要経費を差し引きます。最後に税率を掛けて支払うべき税額を算出します。税率は20%(所得税15%および地方税5%)です。

これらの計算を行う際は、他の金融商品先物取引等との損益通算が可能です。金融商品先物取引等とは、たとえば、大阪証券取引所の日経225ミニ先物取引や大証FX取引、東京金融取引所の「くりっく365」などです。

また、これらの計算を行った結果、損失となった場合には、その損失額を翌年から3年間にわたって繰り越し、その繰り越しした年の先物取引の利益から差し引くことができます。ただし、損失の繰り越し手続きをする間は、毎年確定申告書を提出することが要件となります。

なお、国内における金先物取引であっても、金を「現受け」または「現渡し」することにより決済した場合は、損益通算の対象外となります。金を「現受け」または「現渡し」により決済した場合、その売買損益に対する課税は、金現物取引と同様となります。

ただし、保有期間を計算する際の購入・売却日は、建玉日(新規並びに決済の注文が成立した日)ではなく「納会日」(※第8回コラム参照)となります。つまり、「現受け」の場合は購入日=納会日、「現渡し」の場合は売却日=納会日となります。

以上、1年間にわたり「金投資の基礎知識」を紹介いたしましたが、如何でしたでしょうか?本コラムが皆様のより良き投資の一助になれば幸甚です。

次月からは新コラムがスタートします。どうぞご期待ください♪

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