【2016年 第5回 万一に備えて知っておきたい 遺族年金】資産形成と万一に場合に備えて 知っておきたい公的な制度
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
公的年金制度には、加入者が万一の場合、遺族の生活をカバーする遺族年金制度があります。
給付される遺族年金の種類は、自営業やフリーターなど(第1号被保険者)、会社員や公務員など(第2号被保険者)、働き方により異なります。
遺族年金は、民間の生命保険に加入する時に必要な保険金額を決めるためのベースになります。
しっかりと、遺族年金の内容について押さえておきましょう。
はじめに
公的年金制度に加入している方が万一の場合、残された遺族の生活を金銭的にカバーするのが遺族年金になります。
国民年金に加入している第1号被保険者の主な遺族保障は遺族基礎年金になり、厚生年金に加入している第2号被保険者の主な遺族保障は第1号被保険者と同じ遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つになります。
以下、それぞれの支給要件についてみていきます。
遺族基礎年金について
遺族基礎年金は、国民年金加入者、厚生年金加入とも給付を受けることができる遺族年金です。
支給要件は、「子のある妻又は夫」又は「子」に支給されます。
「子」に該当する年齢は、18歳到達年度の末日までの子ども、一般的には高校卒業までの子どもが対象になります。
(1,2級の障害のある場合は20歳未満)
以前の支給要件は、「子のある妻」でしたが平成26年4月以降「子のある夫」も受給できるようになりました。
ただし、生計維持関係にある「子のある妻又は夫」又は「子」が受給できる制度なので、遺族の方の年収が850万円未満という制限があります。
年間の支給額(平成28年10月現在)は、基本額が780,100円、加算額が子ども2人まで1人につき224,500円、3人目以降が74,800円となっています。
例えば、妻と子ども3人の場合
780,100円+224,500円×2人+74,800円=1,303,900円
が年間支給額になります。
子どもが成18歳到達年度の末日を過ぎますと、その分だけ年間支給額が減少し、末子が18歳到達年度の末日を超えた時点で、遺族基礎年金の支給は終了します。
遺族厚生年金について
遺族厚生年金は、会社員や公務員などの第2号被保険者の厚生年金加入者が万一の場合に支給されます。
遺族厚生年金を支給される遺族の範囲は、
1)配偶者、または子
2)父母
3)孫
4)祖父母
となります。
また、遺族基礎年金の受給要件を満たしている遺族の方には、遺族厚生年金をプラスして支給されます。
ただし、それぞれ以下の支給要件があります。
1)30歳未満の子のない妻は5年間の有給給付。
2)夫、父母、祖父母が受取る場合、加入者が死亡時55歳以上かつ支給開始は60歳から。
但し、夫が遺族基礎年金を受給中の場合は、遺族厚生年金も合わせて受給可能。
年金額は、給与収入および被保険者加入期間により異なります。
また、被保険者加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月とみなして年金額を計算します。
計算式(平成28年4月分から)は、
(平均標準報酬額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数 +
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×3/4
です。
例えば、平成15年4月に入社した厚生年金加入者の方が平成25年4月に亡くなった場合は、加入期間120月となり、、被保険者加入期間が300月に満ないことになりますが、加入期間300月として遺族厚生年金を計算します。
平均報酬月額が30万円とした場合の年間の支給額は、
(300,000円×5.481/1000×300月)×3/4=493,290円
となります。
その他の給付について 自営業者の場合
自営業者など(第1号被保険者)の夫が亡くなった場合、遺族基礎年金の支給要件に該当しない妻に対しては、支給要件を満たせば「寡婦年金」または「死亡一時金」を受取ることができます。
ただし、「寡婦年金」と「死亡一時金」を両方受取ることはできません。
寡婦年金の支給要件は、死亡した夫の年金保険料納付期間が25年以上(今後10年以上に短縮される予定)あることです。
妻の支給要件は、夫により生計維持され、10年以上の婚姻関係があり、65歳未満であることの3点を満たす必要があります。
支給額は、夫が受け取れるはずでした老齢基礎年金額の4分の3の金額を60歳から65歳になるまでの期間、妻に支給されます。
死亡一時金は、年金保険料納付期間が36ヶ月以上ある人が死亡した時に、生計を同じくしていた遺族が受け取れる一時金です。
死亡一時金の金額は、保険料を納めた期間に応じて120,000円~320,000円の範囲で支給されます。
また、寡婦年金、死亡一時金とも、死亡した人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していた場合は、受取ることができません。
その他の給付について 会社員などの場合
厚生年金加入(第2号被保険者)の夫が亡くなり、遺族基礎年金を受取れない妻については、
中高齢寡婦加算という給付があります。
中高齢寡婦加算が支給される妻の要件は、
1.夫が亡くなった時の妻の年齢が40歳以上65歳未満で生計を同じくしている子がいない。
2.40歳に到達した時点では、生計を同じくしている子がいたが、子が18歳到達年度の末日に
達した等のより遺族基礎年金を受給できなくなった妻。
になります。
受給期間は、40歳から65歳未満となり金額は、一律585,100円/年です。
それ以外に、昭和31年4月1日以前生まれの妻に対しては、65歳以降「経過的寡婦加算」が支給されます。
支給金額は、65歳以降に受け取れる老齢基礎年金との合計が中高齢寡婦加算の額と同じになるように設定されており、生年月日により支給額が異なります。
被保険者に関する遺族年金の支給要件
最後に被保険者(死亡された方)の支給要件についてみていきます。
遺族基礎年金は、被保険者が死亡した時、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あること(保険料免除期間含む)。
ただし、平成38年4月1日前の場合は死亡日が65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料納付期間に保険料の滞納がなければ支給を受けられるという特例があります。
遺族厚生年金は、被保険者が死亡した時、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した時となり、保険料納付期間については遺族基礎年金と同様の保険料納付済期間の条件や特例措置があります。
公的な遺族年金は、民間の保険に比べかなり手厚い保障を得ることができます。
ただし、被保険者の支給要件を満たしませんと支給されません。
保険料未納だけは、絶対避けるようにしましょう。
以上、遺族基礎年金、遺族厚生年金を中心に、公的な遺族保障についてみてきました。
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