【 2010年 第 6 回】アメリカの退職プラン:個人・法人向けの節税・退職プラン ~ アメリカ事情
竹内 守(タケウチ マモル)
社会保障年金
日本においても、老後資金の準備手段としての公的年金、いわゆる国民年金・厚生年金の資金源は、それぞれが掛金を積立て、それを財源として将来の年金給付を賄うという事前積立方式で運営されていますね。つまり、現在、働いている人が引退する人やすでに引退した人の為に積み立てをしているということです。
高齢化社会により、年金受給者が増え、加入者が現状維持、或いは少子化により減ることが予想され、今後の年金財源が問題になっております。米国でも全く同様で、社会保障年金(ソーシャルセキュリティー年金)というものがあり、基本的には62歳から受給が可能になります。ベビーブーマーの始まりの年といわれている1946年生まれの人たちが、62歳になるのがちょうど2008年で、今後退職者の数が増大していきます。
それに対し、日本の「日本年金機構」にあたる“ソーシャルセキュリティーアドミニストレーション(SSA)”では、早くからその財源に対し、「2037年に、現在のままで行けば財源が不足し現状の70%の供給しか出来なくなるだろう。」と警告を発していました。この予想している年もこの度の景気後退で、さらに早まるだろうといわれています。
それに対して、SSAは、米国社会保障年金は、あなたの引退資金の全てを賄うものではなく、あくまでも補足的なものです、と説明しています。必要な資金を埋めるためには自分でその他退職プラン等を利用してその日に備えてください、ということです。そのために政府が認めたプランには、所得税控除、キャピタルゲインの繰り延べなどの特典を与え、それを奨励しています。下記に、個人でできる退職プランと、法人が従業員に対して提供できる退職プランの代表的なものを挙げておきます。
個人用節税退職プラン
トラディショナルIRA:就労所得のある70.5歳までの人が、年間5千ドル(50歳以上は、6千ドル)までの拠出が可能で、所得額から拠出額を控除できます。59.5歳以前に引き出しますと10%のペナルティーが課せられますが、引き出すまでは、増えた額に対しての課税が繰り延べされ、引き出した額がその年の所得として課税対象となります。
ROTH IRA:年齢に関係なく全ての就労所得のある人が、年間5千ドル(50歳以上は、6千ドル)までの拠出が可能。拠出額は控除できませんが、59.5歳以降に引き出す場合、増えた額・引き出した額ともに課税が免除されます。
法人用節税退職プラン
401K:一人以上の従業員がいる企業が設定可。企業の従業員は、自分の退職後のために積立額を決め、毎月の給与から天引きで積立を行います。会社は従業員の拠出額に応じて拠出を行い、従業員の積立金口座に振込みます。今年の最高拠出額1万6千5百ドル(50歳以上の従業員には2万2千ドル)までの拠出が可能で、所得額から拠出額を控除できます。引き出すまで、増えた額に対しての課税が繰り延べされ、引き出した額がその年の所得として課税対象となります。
SEP IRA:個人事業主の方で、年令に関係なく就労所得のある人。従業員がいる場合は、一定の条件を設定して有資格者を決めることができます。ただし、設定できるもっとも厳しい条件としては、21歳以上であること、過去5年間で3年以上そこで働いていることなどです。最高拠出額は、従業員には年収の25%まで、或いは$4.9万ドルまでのどちらか少ないほうとなります。自営業者本人には、自分のビジネスの売上から経費を差し引いた後の収入額の25%まで、あるいは$4.9万ドルまでのどちらか少ないほうとなります。恩典としては、従業員は、毎年得られる利回りに対し所得税を引退時まで据え置きにでき、自営業者は、入金額をその年のビジネス収入額から控除できます。
上記で挙げた社会保障年金と個人・法人用退職年金プランのような、いわゆるクオリファイド・プラン(適格退職補償金制度プラン)と、クオリファイド・プランにみられるような税の恩典を受けられるものではないが、個人貯蓄または、個人で保険会社等に直接加入が可能な個人年金プランも考慮に加え、引退後の安心した退職生活を送れるようにSSAは推奨しています。
保険会社の年金プラン
ここで、最近、多くの人が活用している保険会社が提供している年金プランをご説明します。
加入年齢は90歳までの申し込みが可能で、年金受取を開始した年齢に応じ年4%~7%までの生涯受給が保証され、死亡時には、年金受給開始後であってもご入金額の満額が支払われます。また、年金原資の見直しは、年々行われそれぞれの記念日の最高値で年金原資を確定し、株式市場がいくら下落しようとも年6~7%は最低保証されまるプランもあります。
入金された後、一切引き出しをしなかった場合には、10年後に2倍、さらに10年後に2倍と20年で年金原資4倍が最低保証され、その後引き出しを開始した場合は20年後の年齢で4倍になった原資をもとに、最低5%からの生涯受給保証額が得られます。加入条件は、医療検査がありませんので、健康を害して生命保険に加入できない人が、将来の退職プランや相続プラン対策として、活用されています。
次回は米国不動産事情Ⅲをお送りします。
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