【 2010年 第1回 】 2010年の景気・相場の見通し ~経済状況
野田 聖二(ノダ セイジ)
一昨年のリーマンショックを機に世界に広がった金融危機と世界不況を経て、昨年は景気が奈落の底から這い上がるようにゆっくりと回復に向かいました。
ただ、景気対策の効果が一巡する今年前半にかけて景気は二番底に陥るのではないかとの見方が専門家や経営者の中には多く、また、このコラムの原稿を書いている時点(09年11月末)で急速な円高が進んでおり、景気の先行きに対する警戒感が一段と高まっています。
このような中で、今年の景気や相場がどうなるのか、きっと多くの方が関心を持たれていることと思います。今回は、私自身の今年の景気や相場の見方についてお話をし、今年の資産運用を考えるご参考にしていただければと思います。
今後の景気の大局
まず、景気の大局観ですが、日本の景気は昨年春から回復局面に転じましたが、今回は短期間の回復にとどまる可能性が高いと予想しています。景気循環の視点から現在の景気の局面をみると、周期が最も短い短期循環が上向いたものの、周期が中長期の循環はまだ下降を続けており、それだけ景気の上昇力は限定的なものにならざるを得ないと考えられるためです。
実際に、米国のISM製造業新規受注や日本の景気ウォッチャー調査など、日米の代表的な景気の先行指標は昨年8月から9月にかけてピークアウトした模様で、今回の景気回復が短命に終わる兆しがすでに出てきています。戦後で最も短い回復期間はIT景気の時の22ヵ月でしたが、今回は、さらにそれよりも短い景気回復に終わる可能性があるとみています。
今後のマーケットの動向によっても変わってきますが、現時点では、日本の景気は今年前半にピーク(景気の山)を迎え、後半から再び後退局面に入る可能性が高いのではないかと予想しています。リーマンショック後の2008年後半のような急激な景気の悪化があるのかどうかは何とも言えませんが、ただその可能性は想定しておくべきだと思います。
景気の悪化の可能性も
現在の米国はちょうど90年代の日本と同じで、まだ長い調整が続く中で景気が一時的に持ち直している局面にあり、金融危機が再燃して再度景気が大きく落ち込む可能性が捨てきれないためです。今年後半からの景気の悪化を織り込み、今年の株式市場は軟調に推移するものとみています。また、為替は円高が一段と進むことが予想されます。
唯一損益プラスを確保した国内債券
このように、今年の景気について私は大方の見方よりも厳しく見ており、今年の資産運用に関しても慎重なスタンスをとっています。私が参考にしているのが2008年の運用状況です。2008年は株安、円高、商品価格下落を背景に、ほとんどの金融商品の運用損益が年間を通して大幅なマイナスとなり、損益がプラスを確保したのは唯一国内債券だけでした。
値下がりが激しかった新興国株式
中でも値下がりが最も激しかったのが新興国株式で運用する金融商品でした。前年の2007年は新興国株式が全商品の中で運用利回りがトップでしたが、世界不況を機に翌年にはその反動が一気に現れ、パフォーマンスは最悪となりました。昨年もまた世界のリスク資産が値を戻す中で新興国の株価上昇が特に際立っていたわけですが、景気の情勢が一転してマーケットが逆方向に振れた場合には、2008年の時のように前年の上昇率が高かったものほど、その反動が大きく現れるリスクがあることに十分留意する必要があります。
今年どのような資産運用の計画を立てるのかは景気の見通し次第ですが、今年は昨年よりも景気下振れの可能性が高い分、ファイナンシャル・プランナーにとって資産運用のアドバイスが難しい年になりそうです。
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