バイロン・ウィーンの‘びっくり十大予想’【2010年 第2回】

【 2010年 第2回 】 バイロン・ウィーンの‘びっくり十大予想’ ~経済状況

野田 聖二(ノダ セイジ)

 

ほぼ見事に的中させる「十大びっくり予想」

今年も米国の著名ストラテジスト、バイロン・ウィーン氏から恒例の「十大びっくり予想」が発表されました。一般には起こりそうにないと考えられているけれども、氏自身は50%以上の確率で起きると考えている予想で、過去的中率が高いことから、毎年年初に市場関係者の話題にのぼります。

昨年(2009年)は、S&P500が1200に上昇、金先物相場が1トロイオンス1200ドルに上昇、原油先物が1バレル80ドルに上昇、米10年国債利回りが4%に上昇、といった予想を出し、ほぼ見事に的中させました。2009年の景気やマーケットのトレンドを見事に読み切っているあたり、さすがだと感心させられます。

2010年の予想は

今年は果たしてどのような‘びっくり予想’が出てくるのか楽しみにしていましたが、以下のような予想が発表されました。

  1. 米実質成長率は大方が予想する5%を超え、失業率は9%未満に。
  2. FRBはゼロ金利政策から離脱。政策金利は年末までに2%へ。
  3. 米国債の発行過多と海外中銀の買い意欲の後退により、長期金利は5.5%を上回る。
  4. 株式相場は乱高下する展開。S&P500は1300まで上昇した後、1000まで下落し、09年末(1115)程度の水準で取引を終える。
  5. ドルは上昇。円相場は1ドル=100円を超え、ユーロ相場は1ユーロ=1.3ドルを下回る。
  6. 円安を追い風に日本株は先進国で最大の上昇。日経平均株価は1万2000円超えへ。
  7. 米大統領は環境保護でのリーダーシップを狙い、原子力発電を後押しする法案を承認する。
  8. 米景気回復を受けてオバマ政権の人気が持ち直す。11月の議会選挙で民主党の議席減は予想より小さくなる。
  9. 金融規制法は金融業界寄りの内容に。
  10. イランのアハマディネジャド大統領が失脚。

日本株に対するびっくり予想も

ざっと眺めてみると、米景気に対してかなり強気で見ているとの印象です。「政策金利を年末までに2%まで上げる」との予想はかなり大胆で‘びっくり’ですし、「日本株が先進国で最大の上昇」は日本人にとってはありがたいご宣託ですが、日本株に対する悲観的な見方が支配している中でこれまた‘びっくり予想’です。

バイロン・ウィーン氏の‘びっくり予想’は、大方の専門家の予想が当たらないことを巧みに突いたものです。専門家の予想がなぜ当たらないかと言うと、景気やマーケットの足元のトレンドをそのまま先延ばしして将来を予測するためです。しかし、現実の景気やマーケットの動きは専門家が予想するような直線の動きにはならず、不連続な変化が生じるのが常です。

今年のエコノミストの見通しも足元の緩やかな景気回復のトレンドを延長したものが多くなっていますが、過去と同様の過ちを多くのエコノミストが犯しているとすれば、今年も緩やかな回復のトレンドが実際には上方か下方に不連続に変化する可能性が高いと言えます。

2008年の景気は大方の見通しに対して下方に不連続な変化が起き、2009年の景気は大方の見通しに対して上方に不連続な変化が起きました。2010年は再び下方に不連続な変化が起きるのではないかと私はみていますが、バイロン・ウィーン氏は逆に上方への変化を予想しているようです。
果たして今年の景気は上方なのか、下方なのか、それとも意外に(?)変化しないのでしょうか。

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