【2013年 第2回 成年後見人の権限と義務】成年後見人への道
三次 理加 ⇒プロフィール
成年後見(保佐・補助)人の職務には、どのようなものがあるのでしょうか?
何をしなければならないのか、何ができるのか、またはできないのか、本稿では、成年後見人(保佐・補助)人の権限と義務等について紹介します。
成年後見(保佐・補助)人の権限と義務
成年後見(保佐・補助)人の主な職務は、本人(=被後見人)の意思を尊重し、且つ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行い、財産を適正に管理していくことにあります。また、それらの内容がわかるように記録し、定期的に家庭裁判所に報告する必要があります。
成年後見(保佐・補助)人の権限と義務は、それぞれ大きく2つにまとめることができます。
① 財産管理に関する権限
日常的に執り行う事務として、被後見人の収入、支出の管理があります。現金や預貯金の管理のほか、不動産の管理、遺産分割手続き、本人の財産について賃借契約を結ぶこと等も含まれます。また、官公庁への各種申請手続き(例:生活保護の受給手続き)や、裁判手続きについて本人を代理して行うことも可能です。(図表1~3参照)
さらに、これらの事務を行うにあたっては、収支を金銭出納帳に記録し、支出については領収証等を保管する必要があります。
ただし、権限には制限もありますので注意が必要です。たとえば被後見人の居住用不動産を処分する際は、家庭裁判所の許可が必要です。また、たとえば、後見人等と被後見人の間での金銭の貸し借りや、被後見人と後見人等を含む相続人間での遺産分割協議など、被後見人と後見人等との利益相反行為にも注意しましょう。
② 身上監護に関する権限
身上監護とは、被後見人の心身の状態に応じて、被後見人が快適な生活を維持できるように法律行為を行うことを意味します。具体的には、要介護認定等の申請手続き、介護サービス計画(ケアプラン)の検討及び介護契約の締結、住居の確保、施設の入退所契約の締結等が挙げられます。また、たとえば介護サービス事業者等、契約の相手方の履行状況を監視し、場合によっては契約を解除することも必要です。
ただし、たとえば被後見人のオムツを交換するなど、実際に被後見人の介護行為を行うことは後見人等の仕事ではありません。(図表1~3参照)
さらに、診療契約の締結や医療費の支払い等もあります。ただし、個別の医療行為に対する同意はできないので注意が必要です。(図表4)
③ 身上配慮義務
成年後見(保佐・補助)人には、被後見人の意思を尊重するとともに、被後見人の身上に配慮する義務があります。これは、被後見人の心身の状態に応じて、被後見人が快適に生活できるように配慮する義務、を意味します。
④ 善良な管理者としての注意義務
他人の財産管理等の事務を行う者に求められる重い注意義務のことで、一般的に「善管注意義務」と呼ばれる義務です。成年後見制度は、あくまでも被後見人を保護するための制度です。他人の財産を管理する立場にある後見人等は、被後見人の財産が減少することがないよう注意する必要があります。そのため、被後見人の流動資産は、できるだけ預貯金や定期預金等で管理することが求められます。
ただし、被後見人が後見開始前より保有していた株式等の金融商品等については、原則として、引き続き保有してよいものとされます。それらの売却にあたっては、相場状況や被後見人のその株式への愛着の度合い等の事情を総合的に判断して行う必要があります。
被後見人の財産から支出、非居住用不動産を処分するにあたっては、以下3つの観点から検討するようにしましょう。
① 被後見人の意思(被後見人に判断能力があったら支払ったか否か)
② 支出の必要性(被後見人にとって必要な支出であるか否か)
③ 支出の相当性(社会常識的に相当であると思われる支出であるか否か)
成年後見(保佐・補助)人にできない行為
成年後見(保佐・補助)人は、婚姻、離婚、養子縁組・離縁、認知等の代理権はありません。また、遺言や雇用契約の締結等についても代理権は及びません。これらの行為は、被後見人の意思決定によるべきものとされているからです。(図表4参照)
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