給付のいろいろ 【2016年 第2回】

【2016年 第2回 給付のいろいろ】確定拠出年金 きほんのき

宮一 幸子(ミヤイチ サチコ)⇒ プロフィール

 

確定拠出年金は運用したお金を原則60歳以降になったら「老齢給付金」として受け取るものですが、万一障害状態になったら「障害給付金」として受け取ることができ、死亡したら「死亡一時金」として遺族に給付されます。

 

 

 

 

請求しないといつまでも受け取れない

「確定拠出年金は60歳になったら自動的にもらえるの?」と思う人もいますが、請求の手続きをしないといつまで経ってももらえません。
たとえば老齢給付金は、原則60歳から遅くとも70歳までの間に請求の手続きをして受け取り始めます。
請求のタイミングは任意なのでライフプランにあわせて「60歳からもらおう」とか「64歳まで働くから65歳からもらおう」と自分で決めることができます。

 

必ずしも60歳から受け取れない

老齢給付金を60歳から受け取るには「(通算)加入期間が10年以上あること」という条件があります。
(通算)加入期間が8年以上の人は61歳から、6年以上の人は62歳から・・・というように(通算)加入期間によって受給できる年齢が違います。
最低でも1ヵ月以上加入していれば65歳からはもらえます。

「50歳以上で加入すると60歳からはもらえない」ということになりますが、加入期間は「通算」で計算するので50歳以上で加入しても60歳からもらえる場合もあります。
たとえば会社が企業年金制度から確定拠出年金制度に変更し、企業年金の過去の積立分を確定拠出年金に移換する場合です。
この場合、以前の企業年金制度の加入期間を合算して10年以上であれば60歳から受け取れることになります。

また確定拠出年金のなかでも企業型の人は会社の規約でたとえば「62歳まで加入」と定めていれば会社を辞めない限り、受け取りは規約で定める加入者年齢を過ぎた「63歳」からです。

 

全部受け取り終わるまで運用は続く

受取方法は基本的に「年金形式」ですが「一時金受取り」も選択できます。
規約によって「年金形式と一時金受取りの併用」が選択できるプランもあります。
年金形式は何年で受け取るか、何回で受け取るかなどを決めて手続きします。

年金形式とは基本的には残高を確定拠出年金口座で運用しながら一部ずつ取り崩して受け取っていくということです。
運用状況によっては思っていた受取額と異なってしまうこともあります。
たとえば投資性の商品で運用しながら分割して受け取っていた場合、10年で受け取ろうと思っていたのに運用状況が悪化して5年で残高がなくなってしまうということもあるのです。
そのため受け取り始めるときには運用商品を預金や保険などの元本確保型商品に変更したうえで手続きすることも大切です。

 

受け取り方法によって手数料負担が違う

確定拠出年金口座に残高があると、金融機関に対する口座管理料がかかります。
また受取り時は確定拠出年金口座から自分で指定した口座に振り込んでもらうので振込手数料が発生します。
これらは自己負担となりますので、受け取り終了までの期間が長いほど、受け取り回数が多いほど手数料負担が大きくなってしまいますので注意してください。

 

老齢給付金は受取方法によって税金が違う

年金として受け取る場合は、公的年金と同じく「雑所得」となりますが、公的年金等控除が適用されます。
一時金として受け取る場合は、退職金と同じく「退職所得」とみなされて、退職所得控除が適用され、税制上の優遇措置がとられています。

 

障害給付金は年齢にかかわらず受け取れる

加入後に障害状態になった場合には、60歳まで待たなくても障害認定日(初診日から1年6か月経過した日)から手続きして受け取り始めることができます。
障害給付金は受け取っても非課税扱いとなります。

 

死亡一時金は「みなし相続財産」

もしも死亡した場合、遺族は請求手続きをして残高相当分を「死亡一時金」として受け取ることができます。
特に指定がなければ法律にもとづいた人が受取人になりますが、あらかじめ受取人を指定しておくこともできます。
この死亡一時金は「みなし相続財産」となり、法定相続人1人あたり500万円まで非課税となります。

ただ、死亡後5年間請求手続きがされないと、死亡一時金を受け取る遺族がいないものとみなされ、亡くなった人の相続財産となります。

 

●例外的に脱退一時金もある

確定拠出年金は、原則として60歳まで受け取ることはできませんが、資産が過少であったり、確定拠出年金制度の加入要件を満たさなくなったり、一定要件に該当すると例外的に脱退一時金を受け取って確定拠出年金制度から脱退できます。

 

確定拠出年金は、受給権が手厚く保護されていて、「会社が倒産したからもらえない」ということはありません。
自分のライフプランにあった方法で受け取れます。ただ手数料や税金のかかり方などに注意しましょう。

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