横井規子 の『金融教育』現場リポート 〈小学生のお小遣い〉 第12回 親のサポートで大きく育つ「金銭管理力」

12回目のテーマ <小学生のお小遣い> 親のサポートで大きく育つ「金銭管理力」

 

『親子のためのお金教育の専門家』、元銀行員・ファイナンシャルプランナーの横井規子です。

「このままじゃ、将来、お金で失敗しちゃう!」

我が子のお金のしつけをやり直した経験から、金融教育が重要と実感。それをきっかけに親や子のためのお金の授業をスタートし、これまで300校、17,000人が受講しています。

学校授業での経験や金融教育について、1年間お伝えしていきます。

横井規子プロフィール

子どもの金銭管理力を育てるには、お金を使うこと、我慢すること、見比べて買うこと、意思決定をすることといった経験をさせていくことが大切です。そして、時には親のサポートも必要です。我が家の事例を踏まえて、その方法をお伝えします。

金銭管理力を育てる「お小遣い」

私達、親世代が子どもの頃と比べてみると、今の子ども達を取り巻くお金の環境は大きく変わってきています。キャッシュレス決済が主流となり、詐欺や儲け話に簡単に騙されるニュースが後を絶ちません。

 

子どもがお金を上手にコントロールし、騙されない力をつけ、安全で健康な生活を送るためには、お金の教育をすることが必要不可欠であり、その身近な材料となるのがお小遣いです。

 

以前のコラムで、お小遣い制の3つのポイントについてご紹介いたしました。

第5回<小学生のお小遣い>これをやっておくと上手くいく!お小遣い制3つのポイント

 

親子でルールを決めるなど、お小遣い制導入前の心構えを中心にお伝えしました。子ども達には、お金を通して様々な体験を積ませていただきたいと思っています。

 

お小遣いで必要な物や欲しい物を買うなど、まずは買い物体験を積ませてみる。そうすると、お金を使うことに慣れてきて、「もっと金額の高い物を買ってみたい!」、「お小遣いの額を増やして欲しい!」と言ってくることもあるでしょう。そんな時にご提案したいことがあります。

 

それは、待つ時間を与えることです。

待つ時間を与えて考えさせる

子どもが、お小遣いではなかなか買えない高価な物を欲しがることもあるかもしれませんね。そのような時は、待つ時間を与えてみると良いでしょう。

 

私の娘が小学生の時の話です。

 

お小遣いの額が月500円の時に、2000円前後の財布を欲しがったことがありました。毎月のお小遣いで、学校で必要な文房具も購入していたので、簡単に手に入るような商品ではありません。「親が買ってあげた方が良いかも」という思いが一瞬おきましたが、子どもの学びになるだろうと考え、時間をかけて考えさせる機会を与えてみました。

 

まずは、本当に欲しいのか、似た物が家にはないのか、リサイクルショップに行って探してみるのかなど、子ども自身に考えさせました。その上で、「やっぱり新しいのが欲しい!」と言いましたが、買い与えません。毎月のお小遣いから少しずつ貯めて買うことをさせてみました。なぜなら、

 

\お金を貯めれば欲しい物が買える!/

 

ということを教えるチャンスと考えたからです。

 

待ってやっと手に入れた物は大事にするでしょうし、買えた!という大きな喜びを得ることができるでしょう。達成感を味わう体験は、人生を豊かにします。

 

一方、待っている間に、「やっぱり欲しい物ではなかった」と気づいた時は、「冷静な判断ができたね」などと言って、ほめてあげます。じっくり冷静に判断する力がつくことで、将来、詐欺に遭う可能性が少なくなることでしょう。

 

このようなことから、待つ時間を与えることは大切だと考えています。

待ち時間の間に、親子で情報を集める!

待つ時間を与えるのなら、せっかくなので、親子で情報を集めてみることをお勧めします。

下記は、娘が作成した「買い物比較表」です。

 

 

財布と言っても、様々な物があります。大きさも質感も、値段も違うので、比較して検討しやすいように表にしてみました。

 

ある商品はデザイン性に優れているが値段が高い、ある商品は値段が安いが手に取ってみることができないなどまとめることで、検討しやすくなります。

 

比較をする際に、実際に店舗に行って大きさを確認してみたり、手に取って触ってみる、店員に性能を聞くのも良いでしょう。チラシを見て比べてみる、インターネットで口コミを確認するなど、情報入手の方法を教えおくのもお勧めです。様々な商品の中でどれを選択するのか、考える力が育っていきます。

 

お小遣いの増額を要求されたら。交渉力を磨かせるチャンス!

日本人が苦手と言われている「交渉力」。子どもがお小遣いの増額をお願いしてきた時が、交渉力を磨かせるチャンスです。

交渉力と聞くと、あまり良い印象を持たれないかもしれませんが、自分の意見や希望をきちんと言える力のことだと思えば、子どもに身につけさせたいと思うのではないでしょうか。

再度、娘の事例をご紹介します。

「お小遣いを増やして」と言ってきたのは、小学5年生になる頃です。500円の額を1000円にしてほしいという要求でした。元々、進級したら1000円にしようとは思っていましたが、「お父さんにも相談するから、すぐには返事ができない」と答え、なぜ、増額が必要なのかを後日説明するように求めました。納得のいく『プレゼン』をしたら、お小遣いの額を増やす約束です。娘はどうしても増額して欲しいので、1週間ほど懸命に考えていました。

そうして、その日がきました。

「学校で必要な文房具を買いながら、500円のマンガも自分の力で買いたい」、「マンガ買うことを選択するので、これまでお小遣いで買っていたシールをあきらめる」と発表しました。

『合格』です!

その理由は、何かを買うために、不必要な物は何かを考え、それをあきらめる判断をしたからです。

もちろん、これだけで交渉力がつくわけではありませんが、自分の意見を言う大切さを子どもに伝えられたのではないかと思っています。

スーパーに一緒に行こう!親から伝えられること

小学校高学年になると、塾や習い事で忙しく、親子で出かけることが少なくなるかもしれません。しかし、できるだけ買い物をする機会を作ってみましょう。そこで教えられることは沢山あるはずです。

例えば、物の値段の違いです。

スーパーに、ほうれん草が2種類あったとします。一つは外国産で、もう一つは国産。産地による値段の違いに気づかせ、商品選びの基準や親の価値観を伝えることができます。

店頭に出ているオレンジが輸入品なら、為替の影響を受けて値段が変わることを伝えます。円高や円安について教えることはなかなか難しいかもしれませんが、お金の価値が変わり続けることや、輸入に頼る日本の現状を伝えられます。グローバルな視点を育てていくことができることでしょう。

 

また、食品購入目安の一つ、消費期限や賞味期限についても親子で話し合ってみると良いですね。新鮮な方が美味しい物もありますが、今日食べる物なら、今日の期限で良い物もあります。安く購入でき、無駄な廃棄物を増やさずにすみます。

 

今の小学生は、学校でSDGsについて学ぶ機会があるようですし、中学生になると、フェアトレードについて学ぶという話も聞きました。地球環境の保護や、発展途上国での貧困や労働などの諸問題に触れながら、消費していくことの大切さを親子で考えられると良いですね。

 

このように、親がサポートしながら教えることによって、子どもが広く物事を見ることができるようになります。上手にお金を扱う力もつき、親子のコミュニケーションを深めることもできます。機会を作ってみましょう。

 

さて、横井規子の『金融教育』現場リポートの連載は以上となります。様々なテーマを考えお伝えしたつもりですが、お子さんの金融教育や、皆様のお仕事、活動に少しでもお役に立てたら幸いです。1年間ありがとうございました。

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