『ふるさと納税』の本当の目的が教えてくれる「お金」との付き合い方 【2016年 第1回】

【2016年 第1回 『ふるさと納税』の本当の目的が教えてくれる「お金」との付き合い方】がんばる転勤族の妻たちが「お金」をもっと好きになるお話

松原 季恵(マツバラ キエ)

 

あけましておめでとうございます。
このコラムでは今年も転勤族の妻を中心とした働く世代に有益な情報をお伝えしていきます。
第1回の本稿では、昨年末にご紹介した『ふるさと納税』について書きます。
メディア等ではあまり語られていない『ふるさと納税』の本当の目的をお伝えし、お金に対する考え方を一緒に考えていきます。

 

転子さんのもとに、昨年中に申し込んだ『ふるさと納税』の豪華な牛肉セットが届いたようです。

転子さんは喜んでいるようですが、本当にこの考え方は正しいのでしょうか?

先に、『ふるさと納税』の仕組みから簡単に確認します。

 

『ふるさと納税』は納税ではなく、寄付

『ふるさと納税』を一言で説明すると、都道府県や市区町村への寄付です。
確定申告(注)をすることで、所得税の還付と住民税の減額ができるので(一定の上限あり)、実質の支出が約2,000円で、その支出を上回る金額の寄付ができる仕組みになっています。

(注)寄付先が5団体以下の場合は確定申告不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」があります。

 

最大の特徴は自治体によって返礼品(特産品)が送られてくることでしょう。自己負担が実質約2,000円で豪華な特産品がもらえる場合もあり、「お得」としてメディアで多く取り上げられています。

 

国の注目度も高く、平成27年1月から控除の上限額が拡充されたり、平成27年4月から確定申告が不要になる制度を設けたりしています。
また現在も『企業版ふるさと納税』といって企業が自治体に寄付した場合の税負担を軽減する仕組みも検討中です。

 

過熱気味にも思える『ふるさと納税』ですが、ここで、そもそもの目的を見てみましょう。

 

『ふるさと納税』の三つの本当の目的

多くの人は地方のふるさとで生まれ、育ち、やがて進学や就職で都会に移り住み、都会で税金を納めます。
その結果、人口の集中する都会では税収を得ることができますが、地方では税収がなくなります。
そこで、「自分を育んでくれた『ふるさと』に自分の意思で納税する制度を作ってもいいのでは」という問題提起から『ふるさと納税』の制度は始まりました。

 

『ふるさと納税』には大きく三つの目的が定められました。

 

一つめは納税者が税の大切さを自覚することです。

地方自治体は住民から集めた税金で行政サービス等を行っていますが、その資金使途は不明確。
そのため納税者も、税金に対して義務感等の否定的なイメージを持ちやすいです。
そこで納税目的が見えやすい『ふるさと納税』を自らの意思ですることで、納税者の税に対する意識を変えることができます。

 

二つめが故郷や地域の大切さを自覚することです。

『ふるさと納税』を通して、生まれ故郷だけでなく、お世話になった、あるいは今後貢献していきたい地域を応援する、真摯な気持ちを形にできます。
そのため故郷や地域の大切さを改めて自覚できます。

 

三つ目が自治意識の進化です。

『ふるさと納税』は自治体の魅力をアピールできる場です。
その為、自治体にとっては改めて自治のあり方を考え直す良い機会になります。

 

以上の目的から考えると、転子さんは地域を思う気持ちや、納税の意識が少し足りなかったようですね。

 

目的からズレてきた、今

このように、『ふるさと納税』の本当の目的は、「ふるさとを大切に思う気持ち」を通して、納税者や自治体が税金やそのサービスについて見直し、相互に高めあうことです。

 

しかし実際には、「お得」な話題ばかりが注目されています。
テレビでは「たった2,000円で豪華特産品」がアピールされ、ネットでは『ふるさと納税』でいかに損しないかが様々なサイトで書かれています。

 

『ふるさと納税』は小口化が進んでいますが、「お得」感重視の考え方も一つの要因になっています。
例えば1万円以上で特産品がもらえる場合には、同じ特産品に払うなら安い方が良いという損得勘定で、最低金額の1万円で寄付するような考え方です。

また、個人の住民税の減額により、ふるさと納税をした方が住んでいる自治体ではその分の税収が減り、なかには赤字になった自治体もあります。

 

大切なのは物心共に豊かになること

『ふるさと納税』は、本来の「ふるさとを大切に思う気持ち」という目的を忘れ、一部、問題も出てきています。
それは「お金」というものが損得で測れてしまう定量的な一面を持ち合わせているため、「気持ち」という定性的な目的を支配してしまった結果だと思います。

 

このように『ふるさと納税』は、「お金」に “物”が豊かになる定量的な一面と、“心”が豊かになる定性的な一面があることを教えてくれます。

 

転居が多く人間関係や土地への思いが希薄になりがちな転勤族の妻には、特に“心”の豊かさを重視したお金との付き合い方を考えて頂きたいと思います。

例えば地域のイベントに参加する等、積極的に外に出てみてはいかがでしょうか。
交際費等の支出はあるかもしれませんが、その経験は必ず“心”を豊かにしてくれます。
そしていずれ出会った人との助け合いから “物”も豊かにしてくれるでしょう。

 

またマネープランを作成する場合おいて、転居が伴うと予測が立てにくいです。
収支(物の豊かさ)の計画はもちろんですが、家族で「何を大切にしていきたいか(心の豊かさ)」を最初に明確にすることで、住む場所が変わっても軸の定まったマネープランを立てられるのではないでしょうか。

 

「お金」の考え方に大切なことは、物心共に豊かになることでしょう。

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