個人型確定拠出年金(iDeCo)は理解して使おう-前半:制度内容編 【2016年 第11回】

【2016年 第11回 個人型確定拠出年金(iDeCo)は理解して使おう-前半:制度内容編】がんばる転勤族の妻たちが「お金」をもっと好きになるお話

松原 季恵(マツバラ キエ)⇒プロフィール

 

来年1月から個人型確定拠出年金(以下、iDeCo:イデコ)は制度改正により、利用対象者が拡げられることで注目されています。
これまで一部の人しか利用できなかった制度が、新たに専業主婦や公務員、企業年金のある会社員(一部除く)も加入できるようになります。
iDeCoは老後資金を積み立てる有効な手段ですが、注意点もあります。
当月のコラムでは前編として制度の内容を、来月は後編として複数のケースで具体的な運用、受け取りの流れをつかんでいきましょう。

 

iDeCoとは?

老後に安定した生活を送るために、国の運営する公的年金制度があります。
公的年金は日本に住むすべての人が加入し、現役時代に保険料を払い、老後に年金を受け取る仕組みです。
しかし、公的年金だけでは老後の生活資金としては不十分で、より豊かな高齢期を送るために公的年金の上乗せ制度として私的年金があります。
私的年金には企業が社員のために導入する企業年金と、個人の自助努力で積み立てる年金があり、iDeCoはこの自助努力の年金の一つです。
自助努力とはいえ、国の制度のもと運用される年金なので税金等の優遇があります。
つまり、iDeCoは公的年金では不足する老後資金を、優遇措置を受けながら自助努力で積み立てる仕組みの私的年金です。

  

どうやって利用するのか

国の制度というと難しい手続きをするように思いますが、実際は民間の金融機関に申し込みをします。
金融機関とは銀行や証券会社、保険会社などで、自分で選びます。
「iDeCo取扱い金融機関」で検索したら、インターネットですぐ見つかります。

iDeCoで運用できる商品は金融機関によって異なり、元本が確保されている定期預金や年金保険、価格の変動がある投資信託などがあります。
ラインナップの数も金融機関で差があり、どの商品にいくら投資するかも自分で決め、運用次第で将来の受け取れる年金額も異なります。

積立額は働き方等の属性によって限度があります。
例えば、自営業者などの公的年金における第1号被保険者は月額6.8万円、新たに加入できるようになる専業主婦は月額2.3万円、公務員は月額1.2万円の範囲内で積み立てができます。
積立額の変更は年度に一回だけ行うことができ、積み立てが難しい場合には積み立てをせずに運用だけをすることもできます。

給付金は加入期間が10年以上になれば原則60歳以降で受け取ることができ、遅くとも70歳になるまでに受け取り始めます。
反対に、60歳までは取り崩しができないので注意しなければなりません。
このような一定の年齢になったら受け取れる給付(老齢給付)以外に、障害や死亡等の一定の状態になった場合にも受け取ることができます。

 

普通に運用するのと比べてどこがオトク?

iDeCoは積み立て・運用・給付の各段階で税金の優遇を受けられる点がオトクです。

まず、積み立ての段階では、積立額の全額が所得控除の対象になり、積立額相当の金額にかかってくる税金を減らすことができます。
一般の口座で運用した場合、基本的にそのような優遇はなく、控除のしくみがある個人年金保険でも最大年間4万円の所得に対する税金までしか減らすことはできません。
iDeCoであれば、例えば自営業者であれば最大81.6万円(6.8万円×12カ月)分の所得に対して税金がかからないですむので、4万円と比べてもその効果は大きいです。

 

次に、運用の段階では、収益に対する税金が非課税になっています。
通常、一般の口座で運用した場合には収益に対して約20%の税金がかかります。
iDeCoであれば運用で得た収益が税金で目減りしないため、効率的に運用をすることができ、より資産を殖やしやすくなります。

 

そして、給付段階では、障害による給付は非課税、死亡による給付は一定の受け取り金額(非課税限度額:500万円×法定相続人の数)までは課税されません。
また、60歳以降の老齢給付で受け取る場合も一定の控除(公的年金等控除や退職所得控除)によって受け取った金額の一部は課税されませんが、控除額を超える部分には税金がかかる点は注意が必要です。
一般の口座で運用した場合には増えた分に対してのみ収入として課税されますが、iDeCoの老齢給付は受け取った金額すべてが収入と見なされて税金の計算をされてしまいます。

 

手数料を意識して慎重に金融機関・金融商品を選ぼう

iDeCoは税金の優遇が目立ちますが、手数料があらゆる場面でかかります。
iDeCoの加入審査や積立額の管理等を行う「国民年金基金連合会」に対して、加入時に2,777円、毎月103円の手数料を払います。
更に申し込みをする金融機関に対しても加入時や毎月の手数料を各々が定めた金額支払います。
また商品によって運用の手数料(投資信託の信託報酬など)もかかり、給付時には支払いごとに432円かかります。

 

iDeCoは金融機関の変更をすることはできますが手続きに数か月かかり、変更先の金融機関によっては加入時の手数料が再度必要になることもあります。
金融機関や商品によって、かかってくる費用が異なりますので、トータルの費用を比較検討して慎重に選びましょう。

 

後編では、転勤族家庭も含めた複数のケースでiDeCoの制度におけるメリットや注意点を見ていきましょう。

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