【2006年 第4回 】「葬儀費用」大地へ、海へ、空へ~自然に還るために~ 相続
平川 すみ子(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール
葬儀費の平均は約350万円(東京都文化生活局2002年3月調査)。
これはデータとしてよく使われる金額です。生命保険の見直しなどにあたって、必要保障額を算出する際にも、死後整理金、いわゆる葬儀費用には300~500万円くらい必要になるので、これを終身保険で準備しておくのがいいでしょうねと、私自身もよく相談者にアドバイスをすることがあります。
でも、はたして一概にそういっていいものかどうか。最期にどんな葬儀がしたいのかなんてよくよく考えないまま、葬儀費用ってものはこのくらいだからということだけで決めてしまうのは早計なのかもしれません。
最近では、低料金が売りの葬儀社の広告もよく見かけます。葬儀費用が比較できるインターネットのサイトもあります。お金をかけないのなら、かけないなりにやることもできるようになってきました。反面、風習やしきたりでこれくらいの葬儀をしなければいけないというところもまだ多いのかもしれませんが、自分もしくは家族の葬儀はこうしたいという選択の幅は確実に広がってきていると思います。
自然葬
その代表として注目されている「自然葬」。
「自然葬」といっても、葬儀式の形ではなく、あくまで遺骨(粉末状にしたもの)を大地や海などに散骨する「埋葬」のひとつの形態のことなのですが、従来のようにお墓の中に骨壷に入って並べられるのと違って、「遺骨を自然に還すことによって自分も自然に還る」という想いから、この「自然葬」を本人や家族で希望する方が増えてきているようです。
散骨されるのは、骨のすべてではなく少量の場合がほとんどで、ちゃんとお墓にも遺骨を残すようですが、一部でも自然にすぐに還りたいという想いが強いのでしょうね。
では、この「自然葬」を希望する場合、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
大地編・樹木葬
散骨とは違って、大地に直接遺骨を埋めますが、墓石などの人工物は一切建てらず、樹木が墓標となります。雑木林が大きな墓地と指定されている場所で行われます。遺骨は大地に還り、直接樹木の栄養となっていくという点で、自然や緑が大好きな方に多く希望されているようです。費用はおよそ50万円から、といったところが多いようです。樹木もバラや桜など選べることもあるようですので、自分の好きな樹木を扱っているところを探してみられるのもいいかもしれません。
海洋編・海洋葬
海に散骨する方法ですが、船からの散骨とヘリコプター等からの散骨があります。最近は海洋葬を実施する葬儀社や業者も全国的に増えてきていますので、希望の地域を選んで散骨することも可能ですね。日本だけでなくハワイなど海外の海での散骨も実施されています。散骨を委託する方法から、船やヘリコプター等をチャーターして遺族で散骨する方法や、他の遺族も一緒に、と形もさまざまです。
船からの散骨の場合の費用は、委託が52,500円から。チャーターの場合15万円~30万円位が多いようです。ヘリコプターやセスナ機で空から散骨する場合は、委託が10万円から、チャーターする場合は、50万円位かかるようです。
費用に含まれるサービス内容などは各社さまざまのようですので、比較検討して納得のいくところにお願いするのがいいでしょう。
宇宙編・宇宙葬
ロケットで宇宙に打ち上げられる人工衛星にカプセルに入れた遺骨を載せるという方法です。地球軌道上を回る人工衛星ですので、まさに星のようになって空から遺された家族を見守るという壮大でロマンティックな納骨の形です。ただし、ロケットに乗せられる遺骨は7グラムですが。
費用は105万円から。アメリカでの打ち上げになりますので、家族の方が現地に行かれる場合は別途費用が必要となります。
1997年から始まったメモリアルサービスですが、近年、日本だけでなくヨーロッパでも利用者は増えているそうで、残念ながら現在は生前予約を受け付けていないところもあります。
高齢化が進むこれからは、個人個人の希望をさまざまな形でかなえるようなサービスがでてくると思われます。「こうでなくてはならない」ではなく、「こうしたい」という希望がさらに選択できるようになるでしょう。そして、その希望を遺された家族が実現してあげることが哀しみの癒しにつながるのかもしれません。そのためにも、自分自身で費用についてはしっかり準備しておきたいものですね!
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