今月の数字4:4ヶ月以内にやる申告とは?【2013年 第4回】

【2013年 第4回 今月の数字4:4ヶ月以内にやる申告とは?】
相続に関する数字エトセトラ

平川 すみこ ⇒プロフィール

このコラムでは、相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
4月の数字は「4」。相続が開始したら、4ヶ月以内に相続人が申告をしなければならないことがあるのですが、それはどんな申告で、どのような場合に行わなければならないのでしょうか?

 

 

 

 

準確定申告

死亡した人(被相続人)が所得税の確定申告をしなければならないのに、確定申告書を提出しないで死亡した場合、相続開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人が確定申告を行います。これを「準確定申告」といいます。準確定申告書は、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出します。

 

■所得税は申告納税方式

平川さん4月分イメージ画像所得税は、個人が毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して申告をする「申告納税方式」です。翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をします。

1年ごとに申告・納税するので、年の途中で死亡したような場合は、申告していない分がどうしても生じてしまうことになりますね。

また、1月1日から3月15日までの間に死亡したような場合だと、前年分の所得についても確定申告をしていないこともあるので、相続人が被相続人に代わって準確定申告をしなくてはならないのです。

 

つまり、税額を算出するというのも相続人がやらなければいけません。個人で事業をされていた方が亡くなった場合などは、収入や支出の把握をしたりというのはとっても大変だろうなと思ってしまいます。

 

準確定申告の詳細を2011年のコラム「相続・贈与のエトセトラ⑨亡くなった人の所得税の申告は?」にも記述していますので、こちらもご参照ください。

 

■準確定申告は4ヶ月以内に!

準確定申告書は、相続開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に提出します。例えば死亡日が6月20日だとすると、10月20日が提出期限であり、納付すべき所得税がある場合は納付期限となります。

 

通常の確定申告書の提出は翌年3月15日までなので、準確定申告書はそれよりもちょっとだけ長くしてあげるよ、ということでしょうか。それにしても、いろんな相続手続きもしながら準確定申告のために収入や経費を把握して計算となると、あっという間の期間だといえるでしょう。

 

でも、4ヶ月という期間はさておき、準確定申告は10ヶ月より早くやっておくべき理由があると考えられます。

 

■誰が所得税を納付するの?

準確定申告をして納めるべき所得税があれば相続人が納税します。

相続人が複数いる場合は、法定相続分または遺言による指定分割分の割合で算出した税額が各人の納付額です。被相続人の未払いの所得税は「債務」にあたるので、相続人が相続する割合に応じて引継がなければならないということですね。

(ちなみに、所得税以外の固定資産税や自動車税等でも未払いのものがあれば「債務」です。)

 

では逆に、準確定申告をして還付される所得税があればどうなるでしょう?

それは被相続人の「本来の相続財産」とされ、相続人が相続する割合に応じて還付を受けることができます。

 

被相続人の相続財産ということは、相続税の課税対象になりますので、還付される所得税は相続財産に加えて相続税の計算をします。

一方、納めるべき所得税は「債務」ですから、相続財産から差引いて相続税の計算をすることができます。

 

このように、被相続人の所得税も相続財産として相続税を計算するので、相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)より前に準確定申告をしておく必要があるといえるでしょう。

 

■所得税と相続放棄のビミョーな関係?

準確定申告をして還付される所得税がある・・・これは、相続できる財産が増えるようでちょっと嬉しいですね。それで、うーんと相続税が増えることになると嫌ですが、還付される分から納付できなくはないでしょう。

 

逆に、納付しなければならない所得税、その他の税金がある・・・これは、少額であればいいのですが、納付が困難なくらい高額だと頭を抱えてしまいますね。相続財産から納付できればよいですが、もし相続財産のプラスの財産がゼロだとしても、被相続人の「債務」である以上、相続人が負担しなければならないのです。

 

では、相続放棄をしたらどうなるのでしょうか?

 

前回のコラムでも取り上げましたが、相続放棄をすると最初から相続人ではなかったということになり、被相続人の債務の返済義務は生じないので、所得税の納付義務もありません。逆に還付される所得税があっても受け取れませんけどね。

 

つまり、負担が困難なくらい納税額があるのであれば、相続放棄を選択するという方法もあります。相続放棄をした人は準確定申告をしなくてよいので、準確定申告の期限は熟慮期間の3ヶ月よりも長い4ヶ月になっているのかもしれません。

 

でも、相続放棄をするかどうか選択するためには、3ヶ月以内におよそでもいいので納税額を把握しておいたほうがいいということになりますね。

 

自営業者や不動産所得者等で所得税の確定申告が必要な方は、もしもの場合に相続人が準確定申告できるように、事前に税額がどれくらいかわかるように、という配慮をしておきたいものです。

 

■相続人の所得税はどうなるの?

準確定申告は「相続人の所得税の確定申告」と勘違いされる方がいらっしゃいます。

1年間の勤労等による収入以外に、相続財産を取得したことによる収入には別途所得税が課税されるという勘違いです。

 

相続・遺贈で取得した相続財産は相続税の課税対象であり、所得税の課税対象にはなりませんので、ご安心を。ただし、相続・遺贈で取得した財産(不動産や有価証券等)を売却した場合の収入は、その者の所得として所得税(住民税)の課税対象となります。その場合の確定申告書の提出は、翌年の2月16日から3月15日までの間です。

 

確定申告や準確定申告の申告書作成にあたっては、最寄の税務署や税理士にご確認・ご相談ください。

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