今月の数字11:110万円までならOK?【2013年 第11回】

【2013年 第11回 今月の数字11:110万円までならOK?】
相続に関する数字エトセトラ

平川 すみこ ⇒プロフィール

このコラムでは、相続に関して知っておきたい話題を毎月の数字に絡めてお伝えしていきます。
11月の数字は「11」。といっても0を加えて110の話題です。贈与で財産をあげる、もらうという場合、110万円までならいいんですよね?という質問をよく受けますが、回答はYESとは限りません。110万円までの贈与の留意点についてみていきましょう。

 

 

 

 

贈与とは財産をあげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)が、あげます&もらいますの意思表示をすることによって成立する契約行為です。…と法律ではそうなのですが、ここでは堅苦しく考えずに、財産をタダ(無償)であげる&もらうと贈与になるということで進めていきましょう。
Aさんが財産をあげる人(贈与者)、Bさんが財産をもらう人(受贈者)で二人の間で贈与が行われるとします。

■110万円までなら贈与税非課税はOK!?

さて、Aさんが死亡したことによりAさんの財産を誰かが取得すると、相続税の課税対象となります。一方、贈与はAさんが生きているとき(生前中)にAさんの財産を誰かにあげちゃうので、相続税の課税対象からははずれちゃいますね。そこで、贈与は相続の前倒しと考え、相続税の補完として贈与税が課税されるようになっています。贈与税は財産をもらう受贈者に課税されます。

ただし、贈与税には無条件で適用できる基礎控除110万円あり、年間110万円以下しかもらってないなら贈与税はかからず非課税です。
それで、「110万円までなら贈与してもいいですよね?」という質問を頻繁に受けるのですが、贈与できる金額自体には上限はなく、いくら贈与でもらってもいいんです。ただし、年間110万円を超えると贈与税がかかってきますよ、ということです。
年間というのは暦年で1月1日~12月31日の1年間です。とすると、BさんがAさんから、平成25年12月31日に110万円、平成26年1月1日に110万円の贈与をうけても、それぞれの年で110万円以下なので贈与税はかからないし、申告も不要です。
なお、この年間110万円は、1年の間にBさんがAさんから贈与を受ける分だけではなく他の人から贈与を受けた分も合計して金額から控除できる額です。そのため、Bさんから「Aさんから110万円までなら贈与してもらっても非課税ですよね?」と質問されたら、「同じ年にAさん以外の人から贈与してもらわなければ」という条件付きでYESとなります。

 

■110万円までなら相続税対策になる!?

Aさんは自分が死んだら多額の相続税がかかりそうなので、相続税の軽減対策として贈与をすることを考えました。「生きてるうちに贈与をしておけば、相続時には財産が減っているから相続税も少なくなるぞ。でも、贈与税がたくさんかかっては意味がないからBに毎年110万円以内で贈与をしていこう」。
このように、贈与は相続税軽減対策のひとつとして活用されます。年間110万円でも10年なら1,100万円、毎年3人に対して110万円ずつなら10年で3,300万円を非課税で贈与でき、相続財産から減らすことができます。
ただし、贈与者であるAさんが死亡すると、基本的に死亡時の3年以内前に贈与を受けた分を相続財産に加算して相続税を算出しなければいけません。それは年間110万円以内の贈与で贈与税がかかっているかどうかを問いません。よって、相続の直前に贈与をした分については相続税を減らす効果はないということになります。
なお、Aさんの死亡前3年以内にAさんから贈与で財産をもらっていても相続財産に加算しなくてもいい受贈者もいます。それは、Aさんの相続において財産を相続も遺贈もしていない人です。
例えば、BさんがAさんの相続人ではなく、Aさんが死亡しても何も財産をもらわない場合、Bさんはそもそも相続税の納税義務者にならないので、Aさんの生前中に贈与でもらった財産を相続税の対象にする必要がないからです。
よって、「年間110万円以内なら相続税対策になる」かどうかは、いつ贈与をするか、誰に贈与をするかによって条件付でYESになります。

■110万円までならこんな贈与もOK?

年間110万円までの贈与でも次のような点に注意が必要です。

  (1) 受贈者Bさん名義の預金口座に入金し、その通帳と印鑑は贈与者であるAさんが保管して
         管理している場合⇒「Bさんの名前を借りたAさんの預金」とみなされ、Aさんが死亡すると
         相続財産として相続税の対象になります。
  (2) 配偶者の特例を適用する場合 ⇒受贈者Bさんが20年以上連れ添った配偶者の場合、
         居住用不動産(もしくはそれを取得するための資金)の贈与であれば2,000万円までの
         配偶者控除が適用できます。配偶者控除をして110万円以下であれば贈与税は
         かかりませんが、申告は必要なのでご注意を。
  (3) 特定の相続人だけに贈与する場合 ⇒相続税の計算において課税対象に加算される
         のは死亡時の3年以内前までの贈与分に限られます(相続時精算課税贈与を除く)。
         一方、相続人で遺産を分割する際に、Aさんの生前中に贈与を受けていた分も考慮する
         ことがありますが、その場合、年数は関係ありません。何年分でも遡って相続財産に
         持ち戻されることもあるのです。Aさんは、自分の死後に思わぬ争いを生じさせないよう、
         他の相続人とのバランスも考慮して贈与をするようにしましょう。
その他にも、贈与にあたっての留意点や必要な手続き、贈与税の特例、相続税との関係や財産を取得した受贈者が負担する税金などがありますので、贈与をされる際には弁護士、税理士等にご確認・ご相談ください。
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