在宅介護・施設介護【2013年 第7回】

【2013年 第7回 在宅介護・施設介護】高齢期の介護とすまい

岡本 典子 ⇒プロフィール

介護を受けるようになったら、在宅か施設か。それぞれの人の環境や考え方により異なりますが、今回は両者のメリット・デメリットなど基本となるところを探っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

どこで介護を受けたい?≪内閣府世論調査≫

平成24年度内閣府による『高齢者の健康に関する意識調査』介護の意識に関するアンケート結果から、「もし介護が必要になれば、どこで受けたいか」という項目を拾い出し、60歳以上のシニア層が介護に関してどのように考えているかを見ていきます。。

 

 

 

介護をしてほしい場所で最も多いのは「自宅」の34.9%、次いで「病院などの医療機関」20.0%、「介護老人福祉施設(特養)」19.2%、「介護老人保健施設(老健)」11.8%の順になっています。
性別にみると、「自宅」は女性の29.1%に対し、男性は42.0%と高い数字が出ています。一方、「病院などの医療機関」では男性の16.4%に対し、女性は23.0%。女性は病院に入院して介護を受けたい人が多いことがわかります。

在宅介護のメリット・デメリット

介護が必要になっても家族に介護され、それまでと変わらない環境でくらしたいという思いが上の図表から伝わってきます。自分らしい生活を続けていくには自宅が一番というのは想像に難くありません。
また、本人の性格や気持ちを一番理解している家族側にしても、安心して暮らしてもらうためには自宅で、できる限り希望を叶えられるような介護をしてあげたいというのが人情です。あまり無理を重ねずに続けられるのなら・・・それがベストをいえるでしょう。
そこで「介護保険サービスを利用すれば何とかなる~!」と考えがちですが、実は限界があるのです。
そもそも介護保険は「自立サポート」が趣旨です。本人ができないところを補い本人の生活を支援するものです。
例えば老老夫婦でおばあちゃんが要介護認定を受けていて、訪問介護のヘルパーさんが来てくれるケースで考えてみましょう。食事作りや洗濯、掃除といった生活支援において、おばあちゃんの分しかやってもらえないのが原則です。ヘルパーさんは一人分の食事だけを作り、食べさせてくれます。洗濯もおばあちゃんの分だけ。掃除もおばあちゃんの部屋だけ。同じく高齢のおじいちゃんの食事や洗濯、掃除はしてもらえない制度なのです。

では、仕事を抱え介護する家族の場合を考えてみましょう。軽介護のうちは仕事に出かける昼間はヘルパーさんにお願いして夜間や土日の介護で乗り切ることができますが、要介護度が高くなるとなかなか大変です。
夜間の介護が続くようになると家族の負担が重くなり、疲れがたまってくるのが現実です。充分な介護をしてあげようと頑張る人ほど仕事にも支障をきたすようになり、悩んだ末、介護のために仕事を辞めていく人が年間14~15万人もいるのが現状です。

施設介護のメリット・デメリット

そこで、考えられるのが施設の利用です。
多くの場合、図表にありましたように公的な介護保険施設である特養(※1)や老健(※2)を思い浮かべるでしょう。理由はやはり民間の有料老人ホームなどに比べ費用が安い点が挙げられます。特養や老健は要介護1以上の人が入居可能です。
特養は所得により軽減措置があり「終のすみか」となることから人気があり、申し込んだからといってすぐに入れるとは限りません。要介護度が高い、介護する人がいない人が優先されます。
老健は病院を退院して自宅へ戻って生活できるようリハビリを行う中間施設です。在宅復帰が老健の使命のため、入所できる期間は3~6か月程度です。公的な介護保険施設は思うようなタイミングで入所できるとは限らないため、民間の介護付き有料老人ホーム(介護型)も選択肢になります。

施設介護のメリットは24時間365日いつでも介護が受けられる点です。そして、そこでかかる介護費用は要介護度別に定額なので計算しやすいのが特徴です。これは公的施設、民間施設共に言えることです。

デメリットは在宅介護と異なり1:1の介護ではなく、複数:1の介護となる点です。民間の有料老人ホームでは、上乗せ介護費(※3)というプラスの費用を支払うことにより、1.5:1、2:1のような手厚い介護を受けられる施設もありますが、基本は公的施設同様3:1です。
今後は在宅介護が主流になっていきます。家族が主体となり、訪問介護やデイサービス、ショートステイをじょうずに使いながら、増え続ける要介護者それぞれのライフプランの実現を支え合うような社会作りが望まれます。

≪注≫
※1 特養→特別養護老人ホームの略。介護保険法上では介護老人福祉施設という。
※2 老健→老人保健施設の略。
※3 上乗せ介護費→手厚い介護を受けるために、主に介護スタッフの人件費分を入居時、もしくは毎
月の月額費用に上乗せされている費用のこと。

 

 

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