日田の家「7,000円」の現在価値は? 【2016年 第6回】

【2016年 第6回 日田の家「7,000円」の現在価値は?】「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話 PartⅡ

三次 理加(ミツギ リカ)⇒ プロフィール

 

映画「海賊とよばれた男」、封切られましたね。皆さんは、もうご覧になりましたか?
私は、早速、観てきましたよ。小説と異なる箇所もありましたが、映画の世界を堪能できました。

 

 

さて、最終回となる本稿は、ファイナンシャル・プランナーらしく、原油ではなくお金のお話をしてみましょう。
小説をご覧になった皆さんは、次に出てくるようなお金の話、
「現在価値にすると、いくらくらいなのだろう?」
と思いませんでしたか?

過去の貨幣価値を現在価値に換算する方法は、当時と現在とでは様々な環境が異なるため難しいといわれています。
一般的には、あるモノの、過去と現在における値段とを比較することによって、貨幣価値を推計する方法が取られるようです。
上記枠内の「7,000円」は、小説によれば大正3(1914)年頃の発言のようですね。

 

1)企業物価指数で推計

まず、企業物価指数を使って推計してみましょう。
企業物価指数とは、企業間で取引される商品の値段を指数化したものです。
戦前から現在まで連続性をもたせた「企業物価指数」は、日本銀行が発表している「企業物価戦前基準指数」で確認することができます。

 

「企業物価戦前基準指数」の数値は、大正3(1914)年が0.618、平成27(2015)年が710.5です。

710.5÷0.618=1,149.676…

つまり、大正3(1914)年から平成27(2015)年までの間に、物価はおよそ1,149.7倍になったということです。

7,000円×1,149.7倍=8,047,900円

従って、小説の中の「7,000円」は、現在価値に換算するとおよそ800万円であるということがわかります。

 

2)米価で推計

ところが、別の数値を利用して計算すると、現在価値は全く違う数値になります。
たとえば、江戸時代より日本の物価の物差しであった米価で考えてみましょう。

大正3(1914)年の大阪堂島米穀取引所における米価は、1石あたり15.83円でした。(注1)1石は、2.5俵。ちなみに、1俵はおよそ60Kgです。

15.83÷2.5=6.332円

従って、大正3(1914)年当時の米価は、1俵(60Kg)あたり6.332円だったことがわかります。

一方、平成28(2016)年12月16日の大阪堂島商品取引所における終値は、1俵(60Kg)あたり13,320円でした。(注2)

13,320円÷6.332円=2,103.600…

つまり、米価で比較すると、大正3(1914)年から平成28(2016)年までの間に、物価はおよそ2,103.6倍になったということです。

7,000円×2,103.6倍=14,725,200円

従って、米価で換算した場合、小説の中の「7,000円」は、現在価値に換算するとおよそ1,500万円ということになります。

 

3)主人公の給料から推計

ただし、小説には次のようなくだりもありました。

平成28年の大卒初任給(男性)は、205,900円(注3)です。主人公が20円の給料をもらっていたのは、おそらく入社2年目のことだろうと思われますが、

205,900円÷20円=10,295

大正3(1914)年から平成28(2016)年までの間に、なんと、大卒給料は10,295倍になっていますね。

7,000円×10,295倍=72,065,000円

給料から推計すると、小説の「7,000円」はおよそ7,200万円となります。

以上のように、過去の貨幣価値を現在に換算する場合、何で比較するかによって、数値は大きく異なってきます。
800万円と7,200万円とでは、随分と差がありますが、小説を読む際には、「当時の7,000円は、現在の貨幣価値に換算するとおよそ800万円から1,500万円だけど、今の金銭感覚だと7,200万円位」と思っていただくといいかもしれませんね。

ところで、この「7,000円」。映画では、全く違う金額になっていましたね!?
映画をご覧になった方、お気づきになりましたか?

「えぇ~?いくらって言っていたかしら?」という方も、まだ観ていない方も、是非、映画館で確認してみてくださいね!

本稿は、本日が最終回。『「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話』、『「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話 PartⅡ』と2年間にわたり、ご覧いただき、ありがとうございました!

注1:数値は、「米穀市場の展開と米価、賃金 ―戦前北海道についての一考察― 」湯沢誠/北海道大学農經論叢, 27: 190-224 より
注2:2017年6月限終値
注3:数値は「平成28年賃金構造基本統計調査」厚生労働省より

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