平野厚雄です。 私は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(CFP®)として、中小企業の人事労務問題を中心に活動しています。
仕事柄・・・中小企業の経営者のみなさんとお話しする機会があります。
そこで、これから1年掛けて、『経営者を悩ませるよくある人事労務問題』を中心にお伝えしていきます。
平野厚雄⇒プロフィール
■パワハラの現状
厚生労働省の調査によると、令和5年度のパワハラの是正指導件数が前年度に比べて約1.5倍に増加し、3,746件に達したことが報告されています。また、パワハラ関連の相談件数は過去3年間で5万件に倍増していることも明らかになっています
今回はパワハラをしやすい人の特徴を紹介しますので、当てはまる社員がいたら早急に気にかけるようにし、対策を練るようにしましょう!
■4つの特徴
特徴①:自分が正しいと思っている。
常に部下が間違っていて「自分はまったく非が無い」と思っていることが多いです。自分の意見や判断が正しいと思いこんでいます。このケースでは、自分のやってきたことに自信がある方に多い傾向があります。
特徴②:責任感が強い
「私の部署」「私の部下」という表現が多く、責任感が強い人。この責任感の強さゆえに部下に厳しくあたってしまう傾向があります。この場合も本人にまったく悪気が無いケースが多いのが特徴です。
特徴③:価値観の変化に合わせようとしない
本人の意志に関係なく、部下の指導方法や仕事の進め方は時代の変化に合わせる必要があります。しかし「そんなことくだらない」「そんな甘やかしていたら部下は育たない」と一蹴してしまい新しい価値観を受け入れない傾向が強いのが特徴です。
特徴④:自分に対する自信が低い
自分に対する自信が低いがゆえに、部下に強くあたり部下を言い聞かせることにより自分の存在を示す傾向があります。
基本的に人は「自分がやられたことをやる」という性質を持っています。つまり、パワハラをしてしまう方のほとんどは過去にされてきたことをやっているだけ、という場合がほとんどです。
そこで、パワハラにならない指導方法をきちんと教えていくということが重要になります。人はなかなか変わりませんが、「研修を通じた教育」を地道に継続していくことが、社内を大きく変えることができます。その中で効果的なコミュニケーションスキルとしては、「アサーティブ・コミュニケーション」が有名です(アサーティブ・コミュニケーションは、自分の意見や感情を正直かつ尊重的に伝える技術です。これにより、相手に対して攻撃的にならずに自己主張ができ、誤解や対立を防ぐことができます。アサーティブなコミュニケーションは、相手の意見も尊重しながら自分の考えを伝えるため、職場での信頼関係を築くのに有効です)。
■会社が取り組むパワハラ対策
会社がやらなくてはならないことは、大きくわけると5つになります。
①パワハラ撲滅宣言
②ルールの明確化
③社内教育の実施
④相談窓口の確立
⑤不利益取り扱いの禁止
まずは、社長が社内と社外に対して「ハラスメント撲滅宣言」をすることが求められています。具体的にはパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し公表することになります。例えば、東京都内の企業に限りますが、厚生労働省・東京労働局は、「ハラスメント撲滅宣言ロゴマーク」を提供しており、宣言や企業名等を書き込み、そのまま掲示したり、事業場内に掲示するポスター、ネームプレートや感染防止用のアクリル板などに貼付するなどしてご活用できます。
厚生労働省:ハラスメント撲滅宣言ロゴマーク 活用のご案内
そして、パワハラ行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定しルールを明文化し、社員に周知・啓発することになります。ここであわせて、研修等を活用したパワハラに対する社員教育をしていくことが重要になります。
そして、今回の措置で疎かになりがちなのですが、相談窓口の確立です。相談窓口は社内でも社外(第三者機関)でも大丈夫です。ただ、いずれにしても相談窓口で最も大事なことは「適切に対応できる人物」を配置することです。パワハラの知識がない、パワハラ予防の重要性を理解していない、相談したらその相談した事実が社内に広まっている等、相談窓口が実質的に機能していない、ということが多々あります。したがって、社員が安心して相談できる適任者を選ぶことがとても重要になります。そして、最後はパワハラ相談をした社員に対して、それを理由に評価を下げたり、昇給させなかったりと、その社員に対して不利益な扱いをしないことが重要になります。
■まとめ
パワハラ対策は、会社と労働者が協力して行うことが最も効果的です。会社は明確な方針を策定し、適切な教育と相談窓口の設置を行うことで、パワハラの予防に努めます。一方、労働者も主体的に方針を理解し、研修に参加し、オープンなコミュニケーションを図ることで、健全な職場環境を築くことができます。このような協力体制を通じて、パワハラのない職場を実現することができます。
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