岡本英夫のFPウオッチャーだより 第34回 ~高齢者のための新NISA活用講座 ②~

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本英夫のFPウオッチャーだより、
今回は高齢者のための新NISA活用講座②です。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

2回目は昨年12月22日

地元公民館での「高齢者のための新NISA活用講座」の第2回目は、「NISAの銘柄選定と継続管理」と題しておこなった。冒頭で年内の取引約定日等について紹介した。受講者のなかにはNISA投資をはじめていない人、投資枠に余裕のある人もいる。できればつみたて投資枠、成長投資枠を2024中に埋めてほしいからである。

投資信託の最終注文日は銘柄により異なるが、人気のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は12月23日、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は24日、日本株は12月26日が年内受け渡しの最終注文日であり、保有限度額の1,800万円に早く近づくためにも2024年枠を使っていただけたらというわけだ。

日銀短観の見方と業種選定方法

次に、前週の12月13日に発表された日銀短観による業種別業況判断の見方について紹介した。短観(概要)の1ページ目には大企業、中堅企業、中小企業の業種ごとの業況判断が載っている。これを業種別ではあるが個別銘柄選定の参考にするのである。また、業種別に投資する投資信託やETF投資につなげることもできる。

全国企業の業況判断の製造業の最上段は「繊維」だが、前回9月踏査では、最近23%ポイント、先行きは15と8%ポイントのマイナスであった。ところが12月調査では23%ポイントと引き続き好調を維持している。先行き(次の調査は2025年3月)についても23ポイントで、先行き判断には慎重な経営者が現状維持と予測している。

同様に製造業の業種を見ていくと、石油・石炭製品、自動車、加工業種、素材業種が最近、先行きとも横ばいかプラスである。非製造業では通信、対個人サービスなどの見通しが明るい。また、不動産、情報サービスは最近の業況判断が50%ポイントを超えており、先行きはマイナスではあるものの、業種的には「買い」でもおかしくない。

日銀短観公表後の12月18日、日本経済新聞が「日産自動車とホンダが経営協議に向けて協議中」というスクープを報じた。これについての質問が出たが、今後の報道で一喜一憂することになるので、デイ・トレーダーはともかく長期投資が基本のNISA取引には向かないのではないかと回答した。

短観にみる金融業界―銀行の業況判断見通しが明るい

短観の1ページにある調査対象企業に金融機関は含まれていないが、8ページ目に「Ⅱ 金融機関、持ち株会社等」として金融機関の業況判断が掲載されている。講座では、この内容を取り上げながら、銀行や証券会社、保険業、ノンバンクなどが今後業績向上が期待できるとして紹介した(下表)。

銀行業、金融商品取引業、保険業、貸金業ともに最近の数値が9月調査からアップしており 特に銀行業は先行きについても変化幅がプラスである。メガバンク、地銀、ネットバンクが、金利上昇が予想される中、強気の見通しを持っているのである。

ここにある協同組織金融業は信用金庫、信用組合、JA等だが、株式会社ではないので投資の対象外である。金融商品取引業は証券会社、投信会社等、貸金業等は消費者金融・クレジット会社などである。どの業種のどの個別銘柄に投資するかは個別の判断となる。

GPIFの資産運用比率の考え方とリバランス

最後にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオを過去のものも含めて紹介し、リバランスについて説明した。現在は国内債券、外国債券、国内株式、外国株式に25%ずつとなっているが、各資産には乖離許容幅があり、これを超えたり下回ったりすると、投資額を調整する。

それがリバランスだが、2024年の状況からは国内株式、外国株式の比率が高まっていると考えられる。この両資産を売って、価格下落基調の国内債券、外国債券を購入する動きがあれば。GPIFの運用資産は2024年9月末で248兆円を超えており、数%のリバランスでも株式市場にマイナスの影響を与える。

個人の運用でも基本ポートフォリオの考え方は重要だ。余裕資産の30%程度を投資に回すのであれば、その部分の基本ポートフォリオを自分自身で構築してほしい。一定期間ごとにリバランスをおこなうには、年単位で新たな投資枠が設定されるNISAでは年末・年始がその時期である。

また、特定口座や一般口座などでも投資している場合は、資産全体でのリバランスを考えるべきである。 

第3回目の1月25日の内容については次回で紹介する。  

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