池田龍也 の ちょっと気になるニュースから 【第10回】 ~観光よもやま話~

マイアドバイザー® 池田龍也 (イケダ タツヤ)さん による月1回の連載コラムです。

【第10回】 池田龍也 の ちょっと気になるニュースから ~観光よもやま話~

池田龍也プロフィール

▼ 外国人観光客が増えてきた実感

街を歩いていると、外国人の姿を見ない日はないですね。私がよくいく渋谷の街などは、駅前交番の前、スクランブル交差点、センター街などでは、日本人より外国人の方が多いのではないかと思う時があります。カメラやスマートフォンを構えて交差点で立ち止まっている人もたくさんいます。京都や浅草など、人気の観光地になるともっともっと混雑ぶりが加速するようですね。

かつて観光立国を目指した日本、その魅力が世界中の人から理解され、円安の流れも手伝ってようやく、現実のものになってきた感があります。

▼ 日本を訪れる外国人が過去最高に

直近のニュースから
2024 年の年間訪日外国人客数は 36,869,900 人で、前年比では 47.1%増、コロナ前の過去最高だった 2019 年の 31,882,049 人を約 500 万人上回り、過去最高を更新した」

観光庁ホームページより

https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shutsunyukokushasu.html

グラフの水色が訪日外国人客の推移です。このグラフの一番左2003年が521万人だったのと比較すると隔世の感があります。7倍に増えている計算になります。当時は日本人の海外旅行の方が圧倒的に多く、なぜ日本は観光産業が弱いのだろうという議論が盛んにおこなわれていました。

次の円グラフを見てみてください。訪日外国人客の内訳です。国地域別でみると、韓国、中国(香港含む)、台湾、タイなどが目立ち、アジアからの観光客が4分の3以上と圧倒的に多いのがみてとれます。アジアの人々が豊かになってきた証拠です。

2024 各国・地域別の内訳

日本政府観光局ホームページより
https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph–breakdown–by–country

 

▼ インバウンド消費も過去最高

観光消費のニュースより
2024年インバウンド消費8兆円突破で過去最高。1人当たり旅行支出22.7万円
観光庁が1月15日に発表した2024年訪日外国人消費動向調査によると、外国人旅行消費額総額は前年より53.4%増の8兆1395億円と過去最高を更新。2019年との比較でも69.1%増となり、訪日客1人当たりの旅行支出は22万7000円に達した」

去年の発表数字を見ると、「5兆2923億円となって過去最高」と騒いでいましたが、さらにインバウンド消費が急増した形です。

円安の恩恵 ~観光客の経済効果~

1月百貨店売上高、大手3社ともに前年上回る 春節で訪日客の消費好調
大手百貨店3社が2月3日に発表した1月の既存店売上高は全社が前年同月を上回った。1月下旬に中国の春節(旧正月)休暇が始まり、インバウンド消費が好調だった。免税品売上高、前年同月比の伸び率は、大丸松坂屋は87.5%増、三越伊勢丹が57.1%増、高島屋が45.7%増となった。宝飾品や化粧品などが引き続き好調」

▼ 観光収入は国際収支にも貢献

これを書いている時点では、去年1年の統計はまだでていませんが、財務省がまとめた2024年11月の国際収支統計で、訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支は4869億円の黒字でした。27カ月連続の黒字となり、前年同月と比べて31.2%増。コロナ前の19年11月の約2倍でした
また、去年前半24年1~6月期の旅行収支は訪日客の増加で2兆5939億円と、過去最大の黒字。

ということで、観光産業がいまや日本経済の中でも稼ぎ頭のひとつになったことは間違いありません。

▼ ビジットジャパン構想

そもそも、この観光産業の活況はいつから動き始めたのかを振り返ってみますと、まず手始めは、小泉首相が、2003年1月31日の施政方針演説で方針を示したことから始まります。
「日本経済は、世界的規模での社会経済変動の中、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による停滞に直面しています。(中略)大胆な構造改革を進め、(中略)
観光の振興に政府を挙げて取り組みます。現在日本からの海外旅行者が年間約1600万人を超えているのに対し、日本を訪れる外国人旅行者は約500万人にとどまっています。2010年にこれを倍増させることを目標とします」

この小泉演説を皮切りに、日本の観光立国への戦略が次々と打ち出されていきます。
・2007年6月
観光立国推進基本計画 閣議決定
5つの基本的な目標を設定
1.訪日外国人旅行者数を1,000万人に。
2.日本人の海外旅行者数を2,000万人にする。
3.国内における観光旅行消費額を30兆円にする。
4.日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数を年間 4 泊にする。
5.我が国における国際会議の開催件数を 5 割以上増やす。

・2009年9月
鳩山内閣前原国土交通大臣のイニシアティブで訪日外国人旅行者数に関する目標を前倒し・上乗せ(=訪日外国人3000万人プログラム)
プログラムにおける外客誘致目標
〔第1期〕2013年までに1500万人
〔第2期〕2016年までに2000万人
〔第3期〕2019年までに2500万人
〔将来目標〕 3000万人
中国をはじめとする東アジア(中国・韓国・台湾・香港)を当面の最重点市場と位置づけ、大規模かつ効果的な海外プロモーションを展開する。

ビジット・ジャパン・キャンペーン「YOKOSO JAPAN」のロゴ

▼ オーバーツーリズム

訪日外国人3000万人という目標は達成されました。

一方で、オーバーツーリズム、外国観光客が多く来すぎてしまったために、困ったという話も出てきました。
去年話題になったのが、富士山の撮影ポイントでした。富士山が重なって見えるコンビニの前に人が集まりすぎて、混乱している、あるいは危ない、あるいは迷惑だから、ということで大きなシートを張って富士山を見えなくした、というニュースがありました。
最近では北海道の美瑛町で、観光客に人気だった「シラカバ並木」を伐採したという話もありました。シラカバの並木が撮影スポットとして人気でしたが、観光客の路上駐車や農地への立ち入りなど迷惑行為があとを絶たず、また並木が大きく成長し農地に陰ができ農作物の生育にも影響が出ていたこともあり、伐採に踏み切ったということでした。

日本側から、来てください来てくださいと盛んにお願いしておいて、外国人観光客がたくさん来てしまったら、今度は困ります、っていうのはあまりにその場しのぎの対応に思えてなりません。困ることが起きているのはわかりますが、問題になりそうなら、ひとつひとつ丁寧に折り合いをつけていくことはできないものかと思いますが如何でしょうか。問題が起きたら「シートで隠す」「美しい並木を切り倒して排除する」という対応を見ると、観光立国といいながら、まだまだ国際化というには程遠いような気がしてなりません。

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