【2008年 第5回 「管理組合の正しい資産管理」】マンション管理コラム
佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール
不透明な時代を迎え、自分自身の資産(財産)を管理する大切さを切々と感じられていると思います。
マンション管理組合の「資産(財産)」というと・・・一般の会社と同じように「人」「モノ」「お金」に分けられるでしょう。
1つずつ見ていきましょう。
まず、「人」について考えていくと・・・「人材」ではなく「人財」という観点が大切です。
最新の設備を備えたマンションでも、住民のみなさんの管理意識が低ければ良好な住環境は得にくいはずです。
自らが管理の主体であることを認識し、率先して組合運営をリードできる“人財”の育成が求められます。
「役員のなり手がいない・・・」という悩みも専門家などの助けを借りて対応すれば、過去のこととなるはずです。
次に「モノ」についてですが・・・共用部分や附属施設、ライフラインや消火・昇降機設備などが当てはまります。
この場合の管理とは「維持保全」とも言い換えられるかもしれません。
具体的には、各部位ごとの修繕周期に基づいた中長期(20~30年前後)の修繕計画を策定しましょう。
計画に基づいて積立金等予算を準備することで、定期的にやって来る補修だけでなく、偶発的な補修にも対応できるようになり、良好な住環境を維持、促進することができます。
建物や設備の劣化は日常生活に直接影響するだけに、日々の点検が重要な意味をもつのです。
最後に「お金」についてですが、昨年、一昨年のペイオフ騒動以降、特に関心が寄せられている分野です。
大規模マンションでは何百世帯にもなるだけに積立金残高が億単位となることも珍しくなく、管理組合会計の観点からみても「ペイオフ対策」は重要な資産管理といえます。
しかし残念ながら現在も、全ての管理組合に共通する具体的な解決策で最良なものは見当たらず、多くの課題も残したままです。
次にみなさんに注意頂きたいのが「預金口座名義」です。
とあるマンションでは管理費等の預金口座名義が「マンション管理組合代行○管理会社」となっていたために、○管理会社が倒産した際に同預金が○管理会社の財産と見なされ、銀行への担保となってしまった事件がありました。
管理組合は訴訟を起こしましたが「預金の処分権限は○管理会社にあり、マンション側には同権限がなかったので預金は○管理会社のもので、銀行への担保差し入れはまったく問題ない」という判決が出ています。
最終的には取り戻すことが出来ましたが、組合と管理会社の財産を明確に「分別管理」することの必要性を教訓とする事例といえます。
同時に預金通帳と印鑑の保管をどちらが行なっているかも確認してみましょう。
このコラムは、熊本日日新聞(2003年9月22日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。
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