【2008年 第7回 「賢い大規模修繕工事の進め方」】マンション管理コラム
佐藤 益弘(サトウ ヨシヒロ)⇒ プロフィール
住宅の平均寿命を国際比較してみると英国が75年、米国が44年なのに対して日本はわずか26年だそうです(平成8年度建設白書)。
男性・・・78.64歳、女性・・・85.59歳、これは日本人の平均寿命(平成16年簡易生命表)ですが、あまりに短すぎますね。
メンテナンスを行ないながら長く住み続けるのではなく、古くなったら壊して新しく建て替えることを繰り返してきたために、日本では住宅の寿命がわずか4分の1世紀しかありません。
こうした「スクラップ&ビルド」は限りある資源の枯渇や廃棄物の増加など、様々な弊害をもたらし、またマンションでは居住者の合意形成や費用の負担割合などの障害も多く、建て替えは「究極の選択」といえます。
そこで建物を長持ちさせるに計画的に建物の主要な部分を修繕することが不可欠となると同時に、良好な住環境を維持するためにも大規模修繕工事をおろそかにはできません。
マンションの資産価値をも左右する工事ですが、ではどのように進めればいいでしょうか?
基本は長期修繕計画です。
外壁、屋上、手すり、配管など各部位の耐用年数はある程度決まっているので修繕部位と修繕時期、それにかかるコストを一覧にして計画を立てることが成功への第一歩となります。
そして、大規模工事予定時期の2年程度前から本格的に活動開始となります。
管理組合の日常業務との兼務は負担が多くなるので、専門委員会を立ち上げ別組織を結成しましょう。
劣化診断で建物の健康診断をし、修繕場所や修繕レベル(機能の向上)、コスト見積りなどを行ないます。
管理組合が悩む問題点として施行業者の選定があげられますが、管理業者主導ではなく外部専門家(コンサルタント)を導入し設計監理を任せることで、競争原理が働きコストダウンすることも期待できます。
資金計画では積立金残高で工事費をまかなえない場合、組合員から一時徴収するか?借り入れを行なうことになりますが、一時金は居住者への負荷が大きいだけに時間的なゆとりを持たせないとうまく運営できないことが多いです。
また、バルコニーや駐車場の利用制限・騒音・断水など日常生活への影響について工事説明を十分行ない、トラブルが発生しないよう工事中のケアも忘れてはいけません。
最後に、施工後の工事保証はとても重要です。通常は元請業者が保証を行ないますが、下請業者と連名にする、メーカーにも保証させる、などの工夫をすると安心感にも差が出ます。
次回の工事のために修繕履歴を作成することもお忘れなく!
このコラムは、熊本日日新聞(2003年11月17日)に掲載された「快適マンション考」を加筆修正したモノです。
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