【2011年 第14回】 エンディングじゃないノートだからこそ、今を大切に⑥~自分の「財産」を整理する “終わり”ではない「エンディングノート」
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール
「あなたの財産はどれだけありますか?」と尋ねられたら即答できる人は少ないと思います。ノートにその答えを書く必要はありません。
“財産の全体像”をつかむための糸口となっていればノートの役割は果たせます。
自分の財産の情報
自分に関する情報の中で、もっとも大切なものの一つが「お金」に関することではないでしょうか。
それなのに…でしょうか、もしくはだからこそ…でしょうか。何かのきっかけでもなければ、その大切な自分の財産に関する情報を整理するという機会を持たずに過ごしてしまっていませんか?
親兄弟や親友など身近な人の死や、それにまつわる相続などのもめごとであったり、あるいは自分自身がケガや病気を体験したりといったことを機に、「やっぱりきちんとしておかなくちゃいけないなぁ」としみじみ感じる方は多いようです。
そこですぐに行動に移した方は拍手もの!
「思っている」と「行動する」との間には、大きなハードルがあるものですよね。
生まれてから死ぬまで、お金との関わりは途切れることなく続きます。
ということは、「あなたの財産はどれだけありますか?」の答えは、刻々と変化しています。
だから、そんなにいちいち細かく管理なんてしていられないわ~と、自分に言い訳をしつつ先延ばししてしまうのです。
先延ばしにする理由
その理由の一つは“面倒”だからではないでしょうか。
「自分の財産がいくらあるのか?」の答えを正確に知ろうとすれば、とても面倒なことになることはまちがいありません。が、100%の正確な答えを知ろうとすることがイヤだから、手をつけないでゼロの状態を続けているよりも、その答えを知ろうと思えばそれほど手間をかけなくてもいいように、その糸口がつかめ る20%程度の状態にするだけなら、すぐにでも始めることはできるはずです。
「エンディングノート」を、そんな財産情報の整理ツールとして有効に活用してはいかがでしょうか。
このコラムは昨年(2010年)から書き始めたのですが、その後「エンディングノート」が自分の情報を整理するためのツールとして注目される機会が増えてきました。
私がNPO法人の仲間とともに、エンディングではないエンディングノートの編集・発行をした2009年から比べると、爆発的にいろいろな種類のエンディングノートが出版されています。
それぞれに工夫された構成となっていますが、財産という大変プライベートな情報を記載するページについては、各自で“何”を“どこ”まで具体的に記載するのがよいか検討する必要があるでしょう。
たとえば、預貯金や有価証券の預け先の金融機関。口座番号の記載や、印鑑の押印は必要でしょうか。貸金庫の預け先についても、鍵の保管場所まで書いてしまうというのはどうでしょうか。
ノートという他人の目に触れやすいものに、こういった情報を載せてしまうことは、防犯上からも問題があります。
ノートに書く項目
私たちのNPO法人では、日頃、相続に関する登記などの実務を行っている司法書士の会員にもノート編集委員に加わってもらい、ノートに書く項目を検討しました。
必要最低限の項目例を以下に挙げてみます。
○土地や建物…名義人と所在地(地番または家屋番号)
○預貯金…金融機関名と支店名と預貯金の種類
○貸金庫…契約先の金融機関名と支店名、および鍵の保管者あるいは代理人の名前
○生命保険・損害保険…契約会社名と証券番号
こういった情報さえあれば、必要が生じた際に、本人あるいは万一の際に遺族が調べることが可能です。
「調べれば答えがわかる」という状態にしてあれば、ノートの役割は果たせているといえます。
そして、この程度の情報を記載するだけなら、「行動する」ハードルはかなり低くなるのではないでしょうか。
財産の全体像がつかみやすいよう、糸口となるインデックスの項目だけはノートに記載しておく。
いざという時になってあわてないように、自分の財産情報の整理に手をつけておきたいものですね。
今年も充実した毎日を送るために、古くからのおつきあいも大切にしながら、新しいおつきあいも広げていきたいものです。
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