JRに感謝しましょう【2011年 第9回】

【2011年 第9回 】JRに感謝しましょう ~ウチの家計簿、武士の家計簿~

西谷 由美子(ニシタニユミコ)⇒ プロフィール

え、御主人が単身赴任ですか?昔は引越し楽々パック、ありません。荷物持参で全部自分の足で歩いていくんですよね。大変そう・・

 

 

 

 

 

転勤はいろいろ大変

夏のお盆を避けて、妹一家が帰省してきました。しかし時代を感じます。本来は福岡に自宅があるのですが転勤を命じられ、そこは賃貸に出して首都圏へ転居。まもなく次の転勤、今度は鹿児島。子供が小さい時は一家全員で民族大移動してましたが、さすがに大学生と高校生を抱えると大変です。そこで単身赴任を泣く泣く選択。
ですから、今回は妹と長男、単身赴任の妹の旦那さん、就職活動中の長女、と三か所からの集合場所が我が家になった次第。

「単身赴任は、生活も帰省も大変よね。」
「でも月に一回の帰省のための旅費は支給されるんです。LCC使えってウルさいですけどね。」
なるほど、最近の福利厚生って、単身赴任の費用も考慮しなければならないのね。あ、転勤は昔もありましたよね。でも、今に比べると交通手段は主に「自分の足」で。その辺どうなんでしょう。

律令時代の「防人」

以前歴史の授業をやってた頃の知識ですが、律令時代の「防人」、逃亡・職務怠慢を防ぐ意味で九州の海岸線の国境防衛は関東、東北の農民があてられたそうです、ってそんな!

20歳以上の成人男子4人に1人の割合で徴兵され、たまたま防人にあてられたご家庭は「家が絶える」と言われたそう。何しろ都や地方の役所を守る兵役は1年ですが、防人の場合は3年。しかも手弁当で勤務地まで旅する。その間残されたご家族は農作業の手が減りますが、だからといって分与された口分田からのお年貢の徴収は手加減なし・・・

ねえ、引越し楽々パックも、新幹線も、労災はおろか生保・損保もない時代ですよ。旅費やら生活用品やら背中に背負って出発して、2~3日目で強盗に襲われて命を落とす・・・ことだってありえますよね。お国のためっていっても、これ、リスクあり過ぎ、遺族年金もありませんし。

参勤交代事情

次に、江戸時代の授業でよくある笑い話。参勤交代はご存知ですよね。諸大名は一年を領地、次の一年は江戸詰め、つまり江戸にある大名屋敷で過ごす。奥方はず~っと江戸に住まわされる。(あら、これって「逆単身赴任」?)これが、経済的に大名を苦しめたため、「八代将軍吉宗の時代に半年に短縮された。」江戸での生活は色々と費用がかかるものですから・・・

で、これを江戸半年、地元半年、と勘違いする人がいる、それじゃ大名「イジメ」じゃないですか!お金がかかるから江戸にいる期間だけを短縮したんですよ、つまり江戸半年、国許一年半が正解。物価も高く、ご近所づきあいも色々と気を使わないといけない江戸での生活を短縮して、楽になって貰おうという配慮ですね、もちろんその裏には「上米(あげまい)の制」という臨時上納金を徴収したという事情もありますが。

また江戸での生活以外に、あの大名行列もばかにならないんですよね。元々の出発点が「軍役の義務」であったため、兵を大勢連れての行列であることが必要。小藩でも数百人、大藩は2千人を超える大所帯での移動、家の格式が問われるため、手抜きすることも許されなかったそうです。道中は他の大名の領地を横切ることになりますので、ごあいさつの付け届けをするしきたりが。通られる方は通られる方で粗相のないように街道、宿場、渡し場の清掃、整備をしていたそう。波及の経済効果は高いでしょう。
う~ん、幕末、商人は栄え、武士は困窮した、、、こんなことも一因でしょうか。

猪山家が仕える加賀百万石前田家の大名行列、総勢3千人での半月はかかる行程、一説には一回4~5億円必要という説も。何しろ二十万石以上の大名は騎馬20騎、足軽130人、中間・人足300人で、との規定があったそう。加賀藩は家臣でも石高5万、なんて家来がざらに。従って馬に乗る上位の家臣がそれぞれ2百人近い家来を引き連れて参加、そりゃ3千人になりますよね。そして総勢3千人の大群が一つの宿場町に着いた夜、宿からはじき出された旅人・・・だけでなく、身分の低い大名行列参加者まで野宿の憂き目を見そう。

以上を考えると「社長のご出張、秘書を連れて新幹線のグリーン席で」、なんて人手、費用、期間さえも簡単に済んでしまう現代は楽ですね。九州新幹線開通で、今なら篤姫様も簡単に上京できるでしょう。JRに感謝、ですね。
あ、誰ですか、「ウチの社長、徒歩で東京出張してくれたらいいのに」なんて言ってる人は?

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