【2011年 第5回】 株式投資のしくみ② ~金融商品の仕組み~
鈴木 暁子(スズキアキコ)⇒ プロフィール
株式投資の楽しみは買った株が値上がり収益を得られること。
でも売買するだけが株式投資ではありません。
今回は株式売買以外の楽しみに触れてみましょう。
キャピタルゲインとインカムゲイン
株式投資の基本は「安く買って高く売る」。このように売買によって上げる収益を投資の世界では「キャピタルゲイン」と言います。しかし株式投資ではキャピタルゲイン以外にも収益を得るしくみがあります。
そもそも企業が株式を発行する目的は何でしょう?企業は営業活動や製品開発などにより利益を上げようと努力しますが、そのためにはやはり資金が必要です。 とはいうものの、必要な資金をすべて企業の資産から支出しては、資金繰りが悪化してしまいます。そのため投資家に株式を購入してもらって資金調達をするの です。同時に株式を購入した投資家は株主となります。
株主から資金調達して企業活動を行った結果、利益を上げることができれば、株主に対して感謝の気持ちを還元するのですが、これが「配当」で、「キャピタル ゲイン」に対し「インカムゲイン」とも言います。つまり配当は、売買をしなくても株式を保有しているだけで得られる収益というわけです。
したがって配当を多く出す株式は、低金利時の預貯金や国債に預けておくよりも投資額に対しての利回りが良いということから人気があり、キャピタルゲインよ りも配当を目的として株式を購入するのが、いわゆる「配当狙い」という投資スタイルです。頻繁に売買せず、保有を続けて配当をもらうことを目的としてまた 高配当であるということが、銘柄選択基準のひとつにもなるくらいです。
株主優待
さて、もうひとつ株主であることの楽しみがありますが、それが「株主優待」。配当が現金であるのに対してこちらは自社製品や割引券などの現物支給です。
このような優待が人気の銘柄を購入するのは、プレゼント感覚のせいでしょうか、女性が多いようです。6月が近づくとマネー雑誌などでも優待銘柄を特集して いますが、レストランの食事券や食料品詰め合わせ、化粧品詰め合わせなど、各社バラエティに富んでおり、まるでお中元カタログを見ているようです。
配当狙い・優待狙いのリスク
さきほどの「配当狙い」と同様、こちらも「優待狙い」という投資スタイルがあります。
このように、保有しているだけでもらえるプチなプレゼントですので、株式投資の本来的な姿である売買は怖いからあまりしたくないとか、何もしなくていいからという気持ちで購入する方が多いのですが、やはりリスクはあるのです。
「企業が上げた利益を還元する」のが配当ですから、そもそも企業が利益を上げることが前提です。つまり配当は預貯金や国債の利息と違い約束されたものでは ないので、今年は多くても来年減る可能性(減配)もありますし、リーマンショックや今回の震災のように、極端に利益が減ったあるいは赤字になったような場 合は配当が出ない可能性(無配)もあります。優待についても同様で、リーマンショック後に株主優待を廃止した企業は少なくありません。
そもそも配当や優待は義務ではありませんので、利益が上がっていても配当を出さない企業もあります。
また、利益が上がらないということは、減配や無配、優待の廃止以前にすでに株価が下がってきているはず。特に優待狙いの投資家は、「プレゼントが嬉しい」 という気持ちが強いので、「株主優待でもらうより、自分で買った方が安く済む」などと合理的な話で済ませるのはいかがなものかと思いますが、たとえば 100円をもらうために1,000円を支払っているようなものなのです。
逆に企業側も、配当を期待している株主が離れるのを恐れ、それほど配当を出せるほど利益が上がっていないにもかかわらず、配当を出しているところもあります。「幸福の王子」ではないのですから、これでは本末転倒です。
目先の人気取りよりも業績が好調で株価が上がることのほうが、長い目で見て企業のあるべき姿であり、それはまた株主への還元にもつながります。配当狙いや優待狙いであれば、業績や財政状況を確認するなど資産運用の視点を持った上で銘柄選定をしましょう。
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