【2008年 第11回 今日もIt’s書⑪ ~資産運用に向けて―-シンプル・イズ・ベスト!~】地域コラム 九州・沖縄
平川 すみこ(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール
今回紹介している本は、2001年10月に刊行された『お金がふえるシンプルな考え方<マネーのルール24>』(山崎元著、ダイヤモンド社)の改訂版ですが、私が元本を読んだのは2002年か2003年頃。
CFPを取得した後のFPに成りたての頃のことでした。
やさしくてすぐに読めそうなタイトルで、これなら私でもすぐにお金のふやしかたが身に着いちゃうかもね~という単純な動機から読み始めたのですが・・・、いわゆる目からウロコとはこのことかと思わずにはいられないほどの衝撃を受けました。(本当にウロコが落ちました!)
でも、時の流れとともに、落ちたウロコのことも記憶の彼方に。
今回、コラムで本を紹介するにあたり、この本がいいのではないかと再びページをめくって、ショックを受けました!
そう、以前落ちたはずのウロコのいくつかが、年月とともに、またいつのまにか戻っていたということに気がついて。(でも、そう気がつけて良かった!)
ウロコとは、一般的に資産運用の常識とされていること。
例えば、「長期投資によってリスクが小さくできる」という常識。
長期投資をすることで、ブレ幅が収斂されるので、リスクを小さくする効果があります。
これは統計的にもいえるのですが、単純に考えると、将来が不確実な金融の世界では、長期であればあるほど、不確実性が大きくなるので、必ずしもリスクが小さくなるということは期待できないはずなのです。
長期で保有するということは、スイッチングに伴う費用が少なくてすむ分、短期で売買を繰り返すよりは確実に有利といえるだけ。
言われてみると、「あ、そうか」って感じでしょう?
また、初心者向けの運用商品として紹介されるバランス型ファンドなどがありますが、同じ投資対象を同時期に保有する場合、ビギナーだろうがプロだろうが収益率は同じはず。
そもそも「初心者向けの運用商品」という考え方自体が売り手の演出ではないのか。
内容がシンプルではっきりしていて、自分が理解できるものに投資することが大事なのに、リスクが抑えられていて、分散内容の比率も自動調整されるから、初心者向けというバランス型は、実はどういう比率で運用されているのかわかりづらいものです。
(運用報告書にしっかり目を通せればいいんですけどね)
自分で、例えば、株式型に50%、債券型に50%と分けて運用したほうが、よっぽど内容が理解できて、費用も少なくてすむかもしれません。
これもまた、「ナルホド、そうだよね」。
他にも、これが運用の常識、と思っていたことが、実はそう思わされていたのだと気づくものが多々あります。
金融の世界は、機関投資家等の運用のプロが凌ぎを削っている世界。
金融工学の発展と共に、いろんな仕組みの金融商品も多種多様に登場してきています。
それらの新しい仕組みの中に、従来からある株式や債券なども組み込まれているため、様々な要因が交錯して複雑な動きになっているのが現代の金融商品。
投資や資産運用をするということは、同じ土俵でプロとアマチュアが取引という試合するようなものだといわれています。
知識や経験、資金量や時間量からもアマチュアである個人がプロに勝つのは困難だとも。
だからこそ、プロである金融商品取引業者の話にうまく乗せられてしまうことがあるのです。
また、マネー雑誌の「初心者向け」の記事に載っていることや、「初心者でもわかる」と銘打った資産運用のテキストに書かれていることをそっくり鵜呑みにしてしまったり、と。
大事なことは、実はすっごくシンプルなのです。
何のために資産運用をするのか。
運用をするのは、他でもない自分。
自分が分からない金融商品には手をださない。
投資には初心者向けもないし、必勝法もない!
そして、常識といわれるものに惑わされない!etc.
本書は刊行時は24のルールでしたが、改訂版では大幅加筆され、30のルールに増えています。時代の変化と共に新常識もあれこれ登場するようですが、シンプルな基本の部分は普遍ではないでしょうか。
ムズカシイと思いがちな資産運用だからこそ、シンプルで正しい本当の常識を、本書でぜひ再確認しましょう!
『お金をふやす本当の常識<シンプルで正しい30のルール>』(山崎元著、日経ビジネス人文庫)
本の紹介URL:http://www.bk1.jp/product/02594384
この記事へのコメントはありません。