【2008年 第5回 少子高齢化に対応した選挙方式となるのかな?電子投票システム】地域コラム 九州・沖縄
西谷 由美子(ニシタニ ユミコ)⇒ プロフィール
先日、仕事で模擬試験の解説を作っていました。5者択一の問題で1つだけ正しい選択肢があるタイプ。従って、4つの文章はどこかがデッチ上げの嘘。その中にこんな文章が。
「平成14年(2002年)にわが国初の電子投票が岡山県新見市の市長・市議会議員選挙で実施された。市内の全投票所を結ぶオンラインシステムを使用したため、電子投票の開票はわずか25分で終わった。電子投票には、秘密の保持や不正アクセス防止など多くの課題が残されているが、総務省は、地方選挙での電子投票制の導入を促進するため、電子投票機器のレンタル事業を開始した。」
他に正しい文章があったため、これは誤り。さて、皆さん、どこが誤りだと思います?
私の記憶では最初の電子投票は岡山県の選挙、場所は正しいみたい。それなら、開票がたったの25分というのは早すぎでは?選挙速報って接戦だと日付が変わって発表されたりしますよね。
ということで、色々調べてみると、なんと、時間の部分は正しかったのです。
2002年に施行された電子投票特例法では、「不正アクセス防止の観点から、投票に用いる電磁的記録式投票機は電気通信回線に接続してはならない」、つまりオンライン化は禁止。この部分が誤りでした。投票は機械毎にコンパクト・フラッシュに保存して開票所に運ばれた後、パソコンを使ったデータ読み込みによって一斉に集計作業が行われるそうです。運搬の時間を除けば、なるほど、25分で終了しそうですね。不正アクセスによる妨害や不正投票を防ぐための非オンラインであっても、この程度なら許されるかも。
実際には総務省の指導の下、民間企業20社で創設した電子投票普及協業組合というところがタッチパネル式の電子投票機器のレンタルを行っており、今年の2月にはこの組合で11回目となる電子投票が京都市長選挙で実施されていました。この法律では、現在電子投票を行えるのは地方選挙だけなのですが、主要先進国の国政選挙で自書式を続けているのは日本だけなんですって。
電子投票がもたらすメリットとして、選挙作業に従事する地方公務員の人件費削減があります。組合の試算によれば国政選挙の場合、衆・参両議院選挙では35万人近い人手が必要で、残業代等約200億円程かかるとか。システムを導入すれば初期コストは必要ですが、選挙の度にこの費用の大部分が削減されます。
また意外なところでは、電子投票化によって政治に無関心な若い世代が選挙に参加する現象も見られるそうです。実際に2004年の四日市市長選挙で10.7ポイント、六戸町町長選挙で14.8ポイント投票率の上昇があったとか。
確かに、ものめずらしさも手伝って、投票所に行ってみたくなりますよね。銀行のATMみたいに候補者の名前をポンと押すだけ。若者だけでなく、お年寄りの方にも自書式より優しい方式となるかも。90年代に投票率の低下、無党派層の増大が問題化しましたが、解決策のひとつに挙げられる、といったら大げさでしょうか?
また、税金の無駄遣いが問題化している昨今です。増税の前に無駄を削る・・・という時、この電子投票システム導入による人件費削減は、長い目で見れば効果があるかも。もちろん、システムの安定性が確保されていなければなりません。2003年の岐阜県可児市の市議会議員選挙ではシステムの不具合で1時間以上投票が中断したこともありますから。
というわけで、米国以外にも英国、カナダ、フィリピンなどではすでに行われているという電子投票。皆さんはどう思われますか?
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