【2008年 第5回 続〃「食」を考える】地域コラム 甲信越・北陸
田中 美紀子(タナカ ミキコ)
体に良い食べ物や体質改善に一定の効果のある食べ物の話題、例えば、血液をサラサラにするとか、脂肪を燃焼させる食べ物などの情報は、テレビ番組・インターネット・雑誌などいたるところにあふれています。そして私達は、この食べ物は体に良いのだと頭で考えて食べたりしているのですが、その効果を実感するところまでは中々いかないのではないでしょうか。
ただ味覚でおいしいと思って食べるのではなく、自分の体がそのおいしさを実感するという不思議な体験をしたことがあります。
大阪市内にあるマクロビオティックレストラン「マザーアース」で昼食をいただいた時のことです。「マクロビオティック」というのは、牛乳・卵も含めて動物性の食材を一切使わず、日本古来の玄米と無農薬・有機野菜を中心とする食の考え方です。もともと日本人が提唱し、日本ではなく欧米で流行、6・7年前に日本に逆輸入されたものです。マドンナやトム・クルーズも実践しているそうです。
植物性の食材だけなのでメニューが限られるのでは?という心配は杞憂に終わりました。調理方法が工夫され、とてもバラエティに富んだメニューが並んでいました。その日いただいたのは、十穀米のご飯に、車麩の揚げ物、小松菜と油揚げの煮物、レンコンのキンピラなど週替りのマク
ロビセットです。どの素材も太陽と水と大地の恵みが凝縮されたような味わい深いものばかり。そのおいしさに加えて、揚げ物があったにも関らず、何だか自分の胃腸が喜んでいるような不思議な感覚を覚えたのです。
「胃腸が喜ぶ?」
まさかそんなことがあるはずはないのに・・・。
しかし、その感覚は間違っていなかったのです。1996年にアメリカの神経生理学者マイケル・ガーション博士が、腸は「第二の脳」であるという
研究成果を発表しています。腸は、脳や脊髄から独立して機能する「腸神経系」を持ち、食道から胃、小腸、大腸に至るまでの全ての消化に関っているのだそうです。こういった神経系をもっている臓器は腸以外にはないとのことです。
腸には脳と同じように「喜怒哀楽」があったのです。
有害な食べ物が入ってくれば怒って押し戻すし、体に良い食べ物が入ってくれば、喜んで活発に吸収しようとしてくれるのです。それは、脳とは関りなく行われ、あらゆる動物が生き延びる上での根源の働きと言えるでしょう。
マクロビオティックレストランでの食事の際、私の腸は、よくぞ体に良い食べ物を運んできてくれたと小躍りして喜んでいたに違いありません。
暴飲暴食や偏った食生活などをしている時だけでなく、過度のストレスを抱えている時なども、やはり腸の働きがおかしくなるものです。腸は心の健康とも深く関っているようです。たかが胃腸、されど胃腸。
腸に喜怒哀楽があるのならば、腸が喜ぶような食生活とストレスをためない生活をして、人生をより快適に生きたいものです。
日本の気候風土の中で生まれ育った私達には、日本古来の伝統食・和食が一番合っているのかもしれない、腸も喜ぶかもしれないという思いを新たにしています。
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